不動産投資においては高品質の投資用物件が欠かせません。ただし、新築物件よりも中古物件の方が利回りが高く購入しやすいのも事実です。そのため、物件購入の際には中古物件を重点的にチェックしなければなりません。
しかし、その一方で建物がどれだけ使えるかの計算も非常に重要です。その時に知っておかなければならないのが「建物の耐用年数」です。
では、建物の耐用年数はどの様に決められるのでしょうか。
ここでは、不動産投資において耐用年数のチェックがなぜ必要かから始めて、設備の耐用年数、そして耐用年数を考える上でのポイントなどについて解説します。
もくじ
なぜ耐用年数を確認しなければならないか
まず、耐用年数について確認する必要性を挙げてみます。
耐用年数は「建物の使用できる期間」であるため、入居可能な期間の算定のためだけと思われがちです。しかし、耐用年数が確認されなければならない理由は他にもあります。
銀行融資の条件のチェックのため
不動産投資の銀行融資の条件をネットなどで調べてみると、35年の様な非常に長い期間で設定していることに気が付きます。それを見るならばコストを抑えた中古物件であっても無理なく返済出来そうに見えます。
しかし、銀行融資はこの期間をフルに使えるとは限りません。物件の状態によっても変わって来るのです。その1つのカギとなるのが法定耐用年数です。これは簿価であるため実力値とは異なりますが、それでも参考にされます。
そして、法定耐用年数を超える様な融資は受けてもらえないこともあります。ですから、銀行融資の条件を考えるならば、やはり耐用年数の確認が必用なのです。
リフォーム時期の検討のため
不動産投資は入居者の家賃収入があってのビジネスです。そのため、家賃の維持のためには入居者が納得する物件の状態を保たなければなりません。仮に老朽化を放置していたら入居者の不満は積もってしまい、家賃減額リスクや空室リスクも出て来てしまいます。そのためには、定期的なメンテナンスと老朽化し過ぎる前のリフォームが必用となります。
さて、物件のリフォームは「老朽化したら」が一応の条件とはなりますが、築年数や設備の耐用年数から決めることも大切。そのためには設備単位での耐用年数の確認が必用なのです。
不動産の耐用年数の違いについて
次に不動産の耐用年数について取り上げます。
基本的には物品の耐用年数は「壊れるまで」と言うことが出来ます。ただ、家電製品の様にメーカーの保証期間を耐用年数と取る考えもあります。
では、不動産はと言うと2つの考え方があると言えるでしょう。
法定耐用年数
建築物は法規上の耐用年数が設定されています。これを法定耐用年数と呼び、建物の構造の種類によって分けています。主な物は次の通りです。
- 木造:22年
- 軽量鉄骨:鉄骨の厚みが3mm以下の物が19年、厚みが3mmを超える物で27年
- 重量鉄骨:34年
- 鉄筋コンクリート造:47年
尚、この耐用年数と築年数によって資産価値が計られ、固定資産税が決まります。
実力値
実力値は実際の建物の使用可能な期間です。
これは物件の仕様と立地条件、そしてメンテナンスによっても変わりますが、法定耐用年数よりも長いのが一般です。
また、今の建築物は建材レベルでの研究・開発が進んでいて、昔の建物よりも長寿命化に成功している背景もあります。
さて、建物の実力値ですが現存している建築物を参考にするのが良いかと思われます。そうすると、鉄筋コンクリート系の建築物が50年超、木造でも30年超が期待出来ます。
ただし、適切なメンテナンスは絶対に必要です。手入れをせずに放置すると、耐用年数もグッと短くなってしまうのです。
建物各部のそれぞれの耐用年数を把握しておこう
不動産投資は建物の品質をキープするだけでなく、入居者の生活環境を維持しなければなりません。そのためにはリフォームが必須です。
しかし、リフォームを考える上では建物の各部の耐用年数を知っておく必要があります。
そこで、ここでは建物の各部の耐用年数を挙げてみましょう。
外壁・屋根
建物の屋外環境は非常に厳しいと言えます。夏場の日射で外壁や屋根は高い温度にまで熱せられますし、冬場に寒波が来ると氷点下にまでなります。また、最近では酸性雨の問題も出ています。
しかし、今の塗装は非常に良くなっています。特にシリコン系などは価格が安くなっていますし、最近ではラジカル系と呼ばれる物も出て来ました。
さて、これらの耐用年数は条件にもよりますが、一応の目安が15年程度です。この期間を過ぎると場所によっては白い粉を吹くようにもなり、塗膜の劣化が目立つ様になります。
水まわり設備
キッチン・トイレ・浴室などの水まわり設備は比較的寿命が短いと言われます。と言うのも、水は金属部品を腐食させて樹脂部品やゴムを劣化させるからです。
さて、これらの製品の寿命は10年が目安です。しかし、実際に使ってみると15年くらいは持つことも多く、修繕をしながらであれば更に長い使用も可能です。
ただ、製品の故障確率と製造物責任法の観点から考えるならば、やはり10年を目安にするのが無難です。
尚、水まわり設備のリフォームですが、タイミングは引っ越しのタイミングに合わせるのが良いでしょう。特にキッチンやユニットバスを丸ごと交換する場合には大掛かりな工事になるので、入居者の入っていないタイミングがおすすめです。
内装材
内装材は仕様によって異なりますが、基本的には10年程度を目安にすると良いでしょう。
ただし、内装のリフォームのタイミングは入居者の引っ越し、原状回復のタイミングに合わせるのが良いと思われます。
と言うのも、内装工事は壁紙にしても床材にしても家財の無い状態で工事をするので、入居者が居る場合には工事そのものが難しいからです。
耐用年数を縮めてしまう悪条件について事前に知っておこう
ここでは耐用年数を縮める悪条件について挙げてみます。
これらの多くは自然環境や物件周囲の状況になりますが、何等かの対応をしている場合としていない場合では、物件の耐用年数が変わります。
日射
日射は熱の放射だけではありません。紫外線を含んでいるので、樹脂をはじめ様々な物を劣化させてしまうのです。
日射で劣化するのは、建物の場合は外壁塗装や屋根、そしてシーリング部分などが挙げられます。これらは基本的には有機化合物で水や紫外線に弱く、ボロボロになってしまいます。
建物の日射対策としては、やはり定期的な外装リフォームとなるでしょう。外壁の再塗装は外壁の耐久性を上げますし、シーリング部分の補修は水の侵入を遮断するからです。
尚、日射は建物外観の色褪せにも関係します。外観が色褪せてしまうと古ぼけてしまい、収益性にまで影響することもあり得ます。定期的なリフォームが大切です。
雨水
雨水は木造・鉄骨を問わずにダメージを与えます。
ところで、通常の場合には雨水はそれほど建物にダメージを与えません。確かに木部材や金属部品などが露出している部分には影響はあるかも知れませんが、建物は基本的には塗装やシーリングで守られているので、侵入そのものが防がれるのです。
しかし、外装や屋根の老朽化を放置すると、傷んだ部分から水が壁や天井の中に入り込み、中の部材を侵食。木の場合は腐るリスクが出て来ますし、鉄骨系の物であればサビてしまう危険性も発生するのです。
また、断熱材の中には水に弱い物もあるので、雨水は建物の断熱性を下げてしまうこともあります。
尚、雨水対策としては、建物外装部分のメンテナンスが手段として挙げられます。外壁塗装やシーリングをしっかりしていれば、雨水が入り込む隙を与えずに、住宅の長寿命化に繋がるのです。
塩害
沿岸地域は塩害を受ける場合が多いです。
さて、建物には様々な金属部品が使われています。ガルバリウム鋼板をベースとした屋根材や外壁材などが良い例と言えるでしょう。このガルバリウム鋼板という素材ですが、従来の亜鉛メッキ鋼板を更に腐食に強くした材料。耐用年数の延長が可能です。
しかし、塩の害はやはり受けてしまいます。建物の位置にもよりますがメッキ部分が剥がれてしまい、鉄素地部分を腐食させてしまうのです。
ちなみに、腐食に強い金属にはステンレスがあり、建築物にも多用されています。しかし、ステンレスの様な金属であっても塩に弱く、表面にダメージを受けてしまうのです。
尚、塩害の対策になるのが定期的な掃除です。塩分を拭き取っていれば塩の害を小さく抑えることが大切です。
排気ガス
排気ガスは様々な化学物質が含まれています。例えば窒素酸化物、これは塗装面にダメージを与えることもあるのです。そのため、排気ガスがダイレクトに掛かる部分には表面が腐食していることもあります。
粉塵
粉塵には金属の粉末が含まれていることがあります。そして、この粉末が建物の金属部分に付着するとサビが入ることも。そうすると外観が悪くなってしまいます。
ちなみに、金属粉の影響は腐食に強いとされるステンレスの表面を腐食させることもあり得るのです。
カビ
カビは建物の部材や内装材、そして浴室などの水まわり部分に発生します。
さて、建物の寿命にはカビは直接的に関係しないかも知れませんが、住環境には深刻なダメージを与えます。
例えば、カビが生えた居室の場合、カビが胞子をまき散らすことがあります。当然ながら、その部屋の空気環境は悪化してしまい、場合によっては健康被害をも引き起こすのです。
シロアリ
シロアリは木造建築物の天敵とも呼べる害虫。土台部分から柱などまで食い荒らし、建物の部材強度を落してしまいます。部材強度が落ちてしまった建物は耐震性などにも問題が出ることもあるので非常に危険です。
尚、シロアリ被害は鉄骨系の住宅は関係無い様にも思えますが、鉄骨系の住宅であっても木部材は意外に多用されています。鉄骨系であったとしても、シロアリは軽視してはいけないのです。
自分が持っている投資用不動産の耐用年数は延ばせるか
建物の耐用年数を短くしてしまう要因が分かったと思います。
では、建物の耐用年数を延ばすことは可能なのでしょうか。
条件によって耐用年数は変わる
まず挙げられるのが「耐用年数は条件によって変わる」という点です。
例えば、日射を考えると南向きの場合が悪条件となってしまいます。また、内装を考える場合には日当たりの良過ぎる土地は条件が不利になってしまいます。
また、海岸地域では塩害を受ける確率が高くなりますし、高速道路などの近い場所では排気ガスの問題が発生します。これらの悪条件の中では、建物の劣化はどうしても進むのです。
その一方で、この様な悪条件から離れた地域では、建物の劣化は遅くなると考えられます。
環境条件を考えるならば、やはり建物の劣化は左右されます。条件によって耐用年数が変わるのです。
メンテナンスで耐用年数は延びる
建物の耐用年数はメンテナンスの状況により、ずいぶんと違って来ます。
例えば、外壁や屋根は定期的に塗装を続ければ長持ちしますが、メンテナンスをせずに放置するならば、痛みが進んで使えなくなってしまいます。これは外壁などに限ったことでは無く、不動産全体に言えることです。
不動産投資は物件を長持ちさせなければなりません。ですから適切なメンテナンスを心がけることが大切です。
空室で耐用年数が短くなることもある
不動産投資にとって空室は危険な状況と言えますが、それはキャッシュ・フローの問題だけでなく、物件の状態悪化にも繋がり得ます。
と言うのも、設備によっては使わずに放置すると状態が悪化する物があるからです。
良い例となるのが畳です。空室になってカーテンが撤去されると日光がダイレクトに畳に当たって劣化してしまい、その分だけ耐用年数が減ってしまいます。
それが仮に入居しているのであれば、換気もするでしょうし掃除もします。部屋の環境もむしろ良くなるのです。
まとめ
投資用物件の耐用年数について取り上げました。各部の耐用年数の他にも、耐用年数を伸ばすことが可能であることが分かったことと思います。
不動産投資を問題無く進めるためには物件の状態維持が非常に大切です。日頃のメンテナンスに気をつけて、より長く物件を利用しましょう。
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