「不動産投資における赤字ってどんな状態?」
「減価償却や損益通算をうまく利用して、効果的に不動産投資の節税をしたい」
「不動産所得が赤字の場合でも損益通算できないケースがあるって本当?」
とお悩みではありませんか。
不動産投資における赤字とは、「(家賃収入ー経費)がマイナスになっている状態」のことです。
今回の記事では「減価償却や損益通算をうまく利用した節税の仕組み」、「不動産投資で赤字決算をするデメリット」について詳しく解説します。
さらに「不動産投資でプラスの効果をもたらす赤字」や「キャッシュフローを減らす悪い赤字」の違いについてもわかりやすく紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
不動産投資における赤字ってどんな状態?
不動産投資における赤字とは、「(家賃収入ー経費)がマイナスになっている状態」のこと。
家賃収入には「礼金、共益費、更新料」なども含まれ、経費の代表例としては「ローン返済、管理費、保険料、固定資産税、修繕費、減価償却費」です。
実は不動産投資における赤字には種類があり、「プラスの効果をもたらす赤字」と「キャッシュフローを減らす悪い赤字」があるため、以下の通りわかりやすく解説します。
- 節税になるのは「不動産所得が赤字」の時だけ
- 不動産投資で節税のために赤字を狙うべき?
- 不動産投資でプラスの効果をもたらす赤字
- 不動産投資でキャッシュフローを減らす悪い赤字
節税になるのは「不動産所得が赤字」の時だけ
不動産投資において、「節税になるのは赤字の時のみ」であることをしっかり認識しておく必要があります。
なぜなら「不動産所得の赤字と他の所得の黒字を損益通算(※1)することによって節税が可能になる」から。
(※1)不動産所得が赤字になった場合、赤字の損失を他の所得から差し引いて総所得の計算をすること。
例えば年収600万円のサラリーマンが以下の物件を所有した場合をシミュレーションしてみましょう。
- 建物価格|800万円
- 年間家賃収入|80万円
- 建物の減価償却期間|4年
- ローン返済額|なし(自己資金)
800万円の建物を4年かけて減価償却(※2)できるため、毎年200万円を経費計上することが可能であり、会計上の計算は「(年間家賃80万円)ー(経費200万円)=120万円の赤字」になります。
(※2)建物の購入費用を耐用年数に渡って分割して経費計上する会計処理のこと。
つまり「家賃収入によるキャッシュフローとしては80万円の黒字」ですが、減価償却費は現金支出のない経費となるため、「会計上の計算は120万円の赤字」の状態です。
そして不動産所得の赤字を給与所得の黒字と損益通算すると、「(給与所得の黒字600万円)ー(不動産所得の赤字120万円)=総所得480万円」となり、総所得が下がるため節税することができます。
ただし、建物の償却期間である4年が経過してしまうと減価償却ができなくなり、「(給与所得の黒字600万円)+(不動産所得の黒字80万円)=総所得680万円」となるため、節税効果がなくなってしまうため注意しましょう。
不動産投資で節税のために赤字を狙うべき?
不動産投資で節税のために積極的に赤字を狙うのはおすすめできません。
なぜなら「不動産投資の本来の目的は長期で安定的に家賃収入を得ること」だから。
実は築年数が経過した不動産を購入すれば償却期間が短く、減価償却費を大きくすることが可能であるため、会計上の赤字を作るのは簡単です。
ただし上記で解説した通り、減価償却期間が経過してしまえば不動産所得が黒字転換するため、所得税と住民税が増加します。
そのため不動産投資を始めるなら、「長期で安定的に家賃収入を得られること」を第一に考えるのがおすすめです。
不動産投資でプラスの効果をもたらす赤字
不動産投資でプラスの効果をもたらす赤字とは、「キャッシュフローは黒字で回っており、建物の減価償却によって会計上の赤字になっているケース」です。
なぜなら上記で解説した通り、「建物の減価償却は現金の支出を伴うことなく、会計上の赤字を作ることが可能」だから。
「家賃収入によるキャッシュフローは黒字」であっても、「減価償却による会計上の赤字」を作り出すことができます。
この損益通算による節税は「給与所得が高い方」に向いており、「築年数が経過した木造の建物」など、減価償却費が多く取れる物件を所有して会計上の赤字をより大きくすることが必要です。
不動産投資でキャッシュフローを減らす悪い赤字
不動産投資でキャッシュフローを減らす悪い赤字とは、「(ローン返済額)>(家賃収入ー経費)」になっている状態のことです。
なぜなら「(ローン返済額)>(家賃収入ー経費)となってしまうと、手元にキャッシュが残らず、他の所得によってローン返済を補う必要がある」から。
例えば「(ローン返済額)>(家賃収入ー経費)」の状態になってしまうのは以下のような原因が考えられます。
- 空室が多くてキャッシュフローが悪い
- 金利の上昇によるローン返済額の増加
- 突発的な修繕の発生
上記でも解説した通り、節税目的として積極的に赤字を狙うのはリスクが大きいため、「長期で案的的に家賃収入を得ること」を第一に考えるのがおすすめです。
不動産投資の損益通算について徹底解説
不動産投資の「損益通算」について、目的や注意点など、以下の通り詳しく解説します。
- 損益通算とは?
- 損益通算の目的は節税
- 減価償却費による赤字を損益通算する際の注意点とは?
- 損益通算できないケース
損益通算とは?
不動産投資の損益通算とは、「不動産所得が赤字になった場合、赤字の損失を他の黒字所得から差し引いて総所得の計算をする」ことです。
例えば本業の所得が2,000万円、不動産所得が500万円の赤字の場合、「2,000万円-5000万円=1,500万円」となり、総所得を1,500万円まで圧縮することが可能となります。
損益通算の目的は節税
不動産投資において損益通算をする目的は「節税のため」です。
「不動産所得の赤字」と「他の所得の黒字」を損益通算して総所得を減らすことによって、払い過ぎた税金が還付される仕組みになっています。
税金の計算は基本的に「所得×税率」によって算出されるため、「所得を減らすこと」ができれば節税をすることが可能です。
そのため損益通算による節税は、「給与所得が高い方」に向いており、減価償却費が多く取れる物件を所有して会計上の赤字を大きくすることが必要。
会計上の赤字の状態であっても、家賃収入によるキャッシュフローが黒字であれば、手元に残る現金は増えていきます。
減価償却費による赤字を損益通算する際の注意点とは?
「減価償却費による赤字を損益通算する際の注意点」として、以下の2つに注意しましょう。
- 減価償却費の耐用年数経過後まで考える
- 不動産売却時の譲渡所得
減価償却費の耐用年数経過後まで考える
損益通算による赤字を狙って収益不動産を購入する際は、「減価償却費の耐用年数経過後」のことまで考慮する必要があります。
なぜなら「建物の法廷耐用年数が経過した後は減価償却費を計上できなくなり、その分だけ所得と税金が増えてしまう」から。
そのため、「築年数の経過した木造の建物」を購入する際は、減価償却期間が短い可能性が高いため十分注意しましょう。
特に所得税は超過累進税率を採用しており、所得が増えるほどに税率が大きくなるため注意が必要です。
不動産売却時の譲渡所得
損益通算をする際は、「売却時の譲渡所得」に関して考慮しておく必要があります。
なぜなら「減価償却による不動産所得の減少と、物件売却による譲渡所得の増加は逆の関係にある」から。
【物件売却時の譲渡所得の計算】
譲渡所得=売却価格ー(取得費+売却費用)
【上記の取得費の計算】
取得費=購入価格+購入時の費用ー減価償却費
つまり「建物の減価償却費が大きくなるほど取得費が小さくなるため、物件売却時の譲渡所得が大きくなる」ということです。
減価償却費による赤字を損益通算する際は、「売却時の譲渡所得税がどれくらいになるか?」について、よく考えて行いましょう。
損益通算できないケース
実は以下のようなケースに当てはまると、不動産所得の赤字を損益通算することができないため注意しましょう。
- 土地取得にかかる金融機関への返済利子
- 別荘の貸付けによる不動産所得の赤字
- 国外中古不動産の赤字
土地の取得にかかる金融機関への返済利子
「土地の取得にかかる金融機関への返済利子」は損益通算ができないため注意が必要です。
なぜなら「土地を取得するために支払った利子は不動産経費に含まれないルール」だから。
一般的に不動産投資で物件を購入する際は金融機関から融資を受けることが多く、ローンは「元金+利子」を返済する必要があります。
この際、「建物の取得に支払った利子」は経費計上可能ですが、「元金と土地の取得に支払った利子」は経費として計上できないため、注意が必要です。
別荘の貸付けによる不動産所得の赤字
「別荘の貸付けによる赤字」は損益通算ができないため、注意が必要です。
なぜなら「別荘やリゾート物件など、生活に必要でない物件の貸付けによる赤字は損益通算が認められていない」から。
不動産所得の赤字が「主として保養の目的で所有している別荘の貸付けから生じた場合」は他の所得と損益通算が認められていないため、よく覚えておきましょう。
国外中古不動産の赤字
「国外で中古不動産を所有して赤字が発生した場合」は国内の所得と損益通算ができません。
なぜなら「2020年の税制改革によって、海外不動産の所得と国内所得の損益通算を国税庁が禁止した」から。
実は国外の中古不動産は建物価格が大きいため減価償却費も大きくなる傾向があり、以前は富裕層の間で節税スキームとしてよく利用されていました。
ただし、「国内の不動産所得の損益通算」は認められているため、節税をするなら国内不動産の購入がおすすめです。
不動産投資で赤字決算をするデメリット
不動産投資で赤字決算をすると、以下のようなデメリットがあるため、よく注意しましょう。
- 物件の資産価値が減少
- 金融機関の評価が下がる
物件の資産価値が減少
不動産投資で赤字決算をすると、「物件の資産価値が減少してしまうデメリット」があるため注意しましょう。
なぜなら「赤字が続くと、家賃収入を得ることができない不良物件と評価されてしまう」から。
第三者から悪い評価を受けてしまうと、特に出口戦略として物件を売却する際に非常に苦労します。
例えば売却時に買主から大きく値引き交渉されやすくなり、買主もなかなか見つからないなどの影響が予想されるため、赤字決算をする際はデメリットをよく把握しておく必要があります。
不動産投資で赤字決算をすると、金融機関の評価が下がってしまうということをよく覚えておきましょう。
なぜなら「不動産投資で赤字計上してしまうと、黒字経営をすることができない事業家として評価されてしまう」から。
そのため、節税目的のために減価償却費を大きくして赤字決算をするのはおすすめしません。
特にこれから収益不動産をどんどん買い増しして不動産事業を大きくしていきたい場合、赤字経営だと金融機関から次の融資が受けにくくなるため、注意が必要です。
不動産投資で赤字になった場合、確定申告はどうする?
確定申告とは「毎年1/1〜12/31までの所得と税金の計算をして税務署へ申告し、税金の過不足を精算する手続き」のことです。
実は不動産投資において、「給与所得以外の合計所得が20万円以下の場合」は確定申告をする必要がありません。
ただし、「損益通算する場合」や、「青色申告(※3)によって不動案所得の赤字を翌年以降に繰越ししたい場合」は確定申告をする必要があるため注意しましょう。
(※3)確定申告の一種であり、所定の条件を満たすと税制上の控除を受けられるなどのメリットがある。
不動産投資で重要なのは赤字による節税ではなくキャッシュフロー
不動産投資において重要なのは、赤字による節税ではなく、家賃収入によるキャッシュフローです。
なぜなら「不動産投資の本来の目的は長期で安定的に家賃収入を得ること」だから。
ただし、「建物の減価償却費は現金支出のない経費として認められている」ため、少しでも多くの利益を残すために、一通りの知識を身につけておく必要があります。
また不動産投資において減価償却の対象となるのは「建物」のみであり、劣化や消費をすることのない「土地」は対象外であることはよく覚えておきましょう。
例えば同じ1億円の物件でも、「建物2,000万円、土地8,000万円」と「建物8,000万円、土地2,000万円」であれば、後者の方が建物の減価償却費が大きくなるため、節税効果が大きくなります。
そのため実際に物件を購入する際は、購入価格に対する土地と建物の按分割合についてうまく交渉して、「少しでも建物の割合を大きくする」ことができれば、節税することが可能です。
まとめ
今回の記事では「減価償却や損益通算をうまく利用した節税の仕組み」や「不動産投資で赤字決算をするデメリット」について詳しく解説しました。
一口に赤字と言っても、「家賃収入によるキャッシュフローは黒字で回っており、減価償却による会計上の赤字の状態」であれば手元にしっかり現金を残しつつ、大きく節税することが可能です。
ただし不動産投資の本来の目的は節税することではなく、「長期で安定的に家賃収入を得ること」であるため、忘れないように注意しましょう。
また不動産投資において赤字決算をする際は、「金融機関からの評価が下がって次の融資が受けにくくなる」ということも忘れてはいけません。
これから不動産投資を始めようと検討しているのであれば、「家賃収入によるキャッシュフローがしっかりプラスになる物件を探す」ことから始めてみてはいかがでしょうか。
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