清水みち代
関東在住の30代女性。 生保代理店で窓口営業に従事していましたが、コロナの影響で休業中。 自宅にいる時間に資格取得に目覚め、通関士、宅地建物取引主任者、FP2級、総合旅行業務取扱管理者の各資格を取得。 将来の目標は、北海道での「田舎暮らし」。
FPに聞いてみた
事業は健全で無くてはなりません。経営が健全であるからこそ銀行などのビジネスパートナーも協力してくれるのです。そして、ビジネスの健全性には法令の遵守もあります。
さて、不動産投資家が法令を破っていたらどの様になるのでしょうか。…これは非常にマズい事態と言わざるを得ません。方々に敵を作ってしまうことも有り得るのです。ですから、間違っても違法行為はしてはいけません。
しかし、無知のために破ることも有り得ます。違法行為についても知っておくべきです。
ここでは不動産投資に関係する違法行為について取り上げます。事業の健全化のためにも必要な知識となるでしょう。
もくじ
冒頭にも挙げました通り、違法行為は不動産投資においても危険です。
では、どの様な危険性が存在するのでしょうか。違法行為の結果について具体例を挙げてみましょう。
まず覚えるべきなのが、不動産投資が多くのビジネスパートナーの協力の元に行われるビジネスだと言うことです。
では、その様な中で違法行為に手を染めてしまって、ビジネスパートナーを裏切ってしまった場合にはどうなるのでしょうか。
まず挙げられるのが「信用の失墜」と言えるでしょう。信用の失墜がビジネスに与える影響は甚大です。パートナーの協力を得られなくなるからです。
ビジネスパートナーとの信頼関係が崩れると物件の運営が困難になります。
例えば銀行との共存関係が崩れれば資金のまわり方も滞るかも知れません。不動産会社の信用を失うならば、客付けなどでも不利になることでしょう。
また、売却などにおいても困難になるかも知れません。後述しますが、違法建築は銀行も消極的になるため売却も困難になりますし、入居者も一斉に退去するかも知れません。
いずれにせよ、多方面での状況が悪化してしまい、運営も困難になり、ビジネスの座礁もあり得るのです。
違法行為は信用の失墜だけに留まらないこともあります。損害賠償の危険性すらあるのです。特に、相手方に実害が発生した場合には危険です。
例えば、銀行を誤魔化して融資を引き出したらどうでしょうか。それは銀行側に不当なリスクを背負わせることに繋がるでしょう。しかも、その後に不動産の経営が上手く行かず、融資の返済が滞ったならば、大きな実害を負わせることになり得ます。
そして、その結果としては借入金の一括返済を求められたり、場合によっては詐欺行為とされて損害賠償が来る事態もあり得ます。多額の損害賠償請求などが来た場合、ビジネスの座礁どころか、更に苦しい立場に立たせられます。違法行為は避けなければならないのです。
ここで、具体的な危険行為を取り上げてみましょう。
尚、これらの行為は、行為の度合いによっても危険度が異なって来ます。「魔が差したレベル」と「常習的に繰り返していた」では違うのです。
最初に取り上げる個人取引において転売を繰り返す行為は、行為の頻度で違って来る恰好の例と言えます。
では、どの様な行為なのでしょうか。
まず、押さえておきたいのは「不動産の個人取引は違法では無い」と言う点です。
個人取引にはリスクもあるのですが、仲介手数料などが発生しない経済的メリットがあります。不動産会社に支払う仲介手数料は物件の「3%+6万円」です。仮に投資用物件が1億円である場合には306万円の費用が発生しますが、この費用が抑えられるのは魅力的です。
尚、個人取引のデメリットは瑕疵の問題などが宅建業者ほどの対応が期待出来ないこと。しかし、これもインスペクションなどでカバー出来ることもあるので、状況の細かいチェックは必要ですが、経済的なメリットを狙うことは可能です。
個人での転売が可能ならば、土地取引によって利益を得ることが出来ると考える人も出て来ると思います。景気が滞って不動産の実勢価格が落ち込んだ時に購入し、上がった段階で売却する。そうすれば利ザヤが稼げるという具合です。
それでは、この様なビジネスチャンスが複数回到来し、そのたびに転売を繰り返すならば個人でも大丈夫なのでしょうか。実はこの部分に危険性が出て来ます。転売を繰り返すことが危険なのです。
不動産投資の場合は複数の物件を持っていて、出口戦略を個人取引で頻繁に続けて行う行為などが該当します。
ここで宅建業者の取引と、この様な場合の取引をする個人を比較してみましょう。
宅建業者と個人、その大きな違いは「宅建業の免許の有無」と言うことが出来ます。
さて、宅建業に関係する法律は宅地建物取引業法という法律です。その中には「不動産取引を『業』とするためには宅地建物取引業の免許が必要」であることが謳われています。
ですから、先ほどの例では「頻繁に続ける」行為がキーワード。頻繁にする場合には「業」となってしまい。宅建業法に抵触する可能性も出て来るのです。
ただし、宅建業法には「何回連続で取引をすれば『業』になる」などの回数指定はありません。しかし、違法性が出て来るのは確かなので、避ける方が無難です。
言うまでも無く違法建築物にも関与すべきではありません。
しかし、違法建築は誤って扱ってしまうケースもあります。ですから、良く注意をしなければなりません。
違法建築物は建築基準法などの法規を無視した建築物。ですから安全性などに問題がある物件が多いです。
しかし、違法建築物の中には一般の建築物よりも使い勝手の良い物も存在します。例えば、延床面積を超えた居住スペース、あるいは建ぺい率を超えて増築した物件などです。
そして、その様な物件は住み心地が良いので利回りも上がる場合も少なくありません。客付け力においても物件の利便性が功を奏する場合もあるのです。
それでは利回りが良いからと言ってそのままで良いかと言うと、必ずしもそうではありません。困る時もあるのです。
例えば売却の時です。一般に投資用不動産の売却先は別の不動産投資家であることが多いです。そのため、その投資家は建物を入念にチェックします。そして、それで違法建築だと発覚したら売却出来なくなり得ます。
また、違法建築物の購入には銀行融資の利用は困難です。そのため、物件が売れずに老朽化してしまうこともあるのです。
では、違法建築の例にはどの様な物があるのでしょうか。
代表的なのは先に挙げた延床面積と建ぺい率のごまかしです。
延床面積は土地に対して決まっている面積なのですが、建物の仕様によってはリフォームで広げることが可能です。例えば法規を超える様なロフトを後付けで作ったり、バルコニーを規定より広くした場合などが挙げられるでしょう。
また、建ぺい率の場合は違法な増築があります。増築すれば建物の利便性が良くなりますが、法規を逸脱することもあり、危険なのです。
不動産投資においては銀行融資が不可欠ですが、不動産投資のローンは住宅ローンとは違います。
では、仮に投資用物件を住宅ローンで購入しようとしたら、どの様な事態になるのでしょうか。
不動産投資ローンと住宅ローンは様々な点が違います。借入可能金額、借入期間、審査など、様々な相違点があるのです。
さて、住宅ローンは金利や税制面での制度が不動産投資ローンとは異なり、ずいぶん有利になっています。例えば金利を挙げてみるならば、住宅ローンは1%程度となるのに対し、不動産投資ローンは2%を超える物も多いです。また、住宅ローンは住宅ローン控除がありますが、投資用不動産の場合は控除の制度がありません。
ところで、ローンには目的があり、それによって借入可能額や期間などが変わります。自家用車の購入のためにはマイカーローンがありますし、子供の学費のためには学資ローンがあります。
そして、ローンは目的を無視しては使われません。「どうせカネを借りれば同じなんだろう」と言う訳には行かないのです。
不動産投資も同じで、住宅ローンは不動産投資の目的ではありません。あくまでも自宅購入用のローンであって、投資用物件の購入目的には使えないのです。
この様に、不動産投資には住宅ローンの利用は出来ないのですが、そこを隠ぺいして住宅ローンを使おうとするケースも実際にはあります。
その場合、借り手は大きな痛手を負うことになります。状況にもよりますが、借入金額の一括返済を迫られたり、損害賠償を請求されもし得るのです。
ですから、住宅ローン利用での投資用物件の購入は危険です。絶対に止めるべきでしょう。
違法行為には完全に違法となる物だけが存在するのではありません。グレーの物もありますし、グレーの様に思えて実はブラックだったと言う場合もあるのです。
ここで挙げる1法人1物件スキームは代表的な怪しく見える例。しかし、内容を良く見るならば実はブラックだったと言った例でもあります。
まずは1法人1物件スキームについて挙げてみましょう。
通常、投資家は1つの金融機関を利用して物件を購入します。1億円の物件を買う場合には1つの金融機関から8000万円借りるイメージです。この8000万円をこの投資家の限度額とします。
ところで、その投資家が他の物件を購入しようとした場合、同じ銀行からは基本的には借りれません。限度額が8000万円でいっぱいだからです。
しかし、投資家が複数の法人を立てた場合には、その法人に対して銀行は融資をするので、その複数の法人のオーナーである投資家は、複数の銀行から限度額を引き出すことが可能となります。3つの法人であれば、8000万円の3法人分、2億4000万円の融資が引き出せるのです。
これを1つの法人と物件に対して1つの銀行をあてがって借りる手法、これを1物件1法人スキームと呼びます。
この行為は一見すると「グレーではあるが違法では無い」様に見えるかも知れません。むしろ、銀行利用の裏技にも思える人もいるかも知れません。
しかし、1法人1物件スキームにはブラックな点があります。「他の銀行で借りている」ことを隠ぺいしながら借りている点です。
1法人1物件スキームは「複数の銀行から資金を調達する方法」とも言えるのですが、「他の銀行から借りている」ことは隠ぺいしながら借り入れます。この隠ぺい工作は、実は銀行側からすれば不当なリスクを背負わせられる詐欺行為とも取れるのです。
銀行もビジネスで貸してくれるので、そこには契約関係が存在します。その契約を誤魔化すのですから、詐欺行為と取られても文句は言えません。
この様に、1法人1物件スキームは銀行から見れば詐欺行為とも取れる物。ですから非常に重いペナルティを課せられます。
ペナルティの1例としては借入金の即時返済を迫られる場合がありますし、他にも損害賠償の請求もあるかも知れません。
いずれにしても銀行を敵に回すことになるので、それ以降の資金繰りは壊滅的にもなり、事業の座礁もあります。
銀行は味方に付ければ強力なビジネスパートナーなのですが、敵に回すならばこれほど怖い相手はいません。後悔しても遅く、制裁を覚悟しなければならないのです。
不動産投資における違法行為について挙げてみました。いずれの行為も非常に危険で、自分の首を絞めかねない物であることが把握出来たことと思います。
ただ、そうは言っても目先の利益は魅力的。なかなか抗うことは簡単ではありません。しかし、その様な時こそ思い出すべきです。「上手い話にはウラがある」ということを。
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