「不動産投資とインボイス制度ってどんな関係があるの?」
「インボイス制度で影響があるのは、どんな不動産投資家?」
「インボイス制度にどうやって対策すればいいのか詳しく知りたい」
とお困りではありませんか?今回の記事では「インボイス制度の仕組み」や、「インボイス制度が不動産投資に与える影響」について詳しく解説します。
また「インボイス制度の具体的な対策」についてもご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
インボイス制度とは?
インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、「消費税の納税制度の変更」のこと。
インボイス制度は2023年10月1日より導入が開始され、インボイス(適格請求書)を発行するには、2023年3月1日までに申請が必要です。
ちなみに不動産投資でインボイス制度の影響を主に受けるのは、「店舗や事務所を賃貸しているオーナー」の方々。
実は、「消費税の免税事業者(※1)である不動産投資家」こそ、インボイス制度の対策をする必要があります。
(※1)消費税が課税される期間において、課税売上高が1,000万円未満の事業者。
※インボイス制度の具体的な対策については後述
この章では、インボイス制度のポイントを以下の4点に絞って詳しく解説します。
- インボイス制度が導入されると何が起きる?
- 消費税の仕組み
- インボイス制度の目的
- インボイス制度の影響範囲
①インボイス制度が導入されると何が起きる?
インボイス制度導入後は、インボイス(適格請求書)を発行しないと、請求書を受け取った取引先が消費税の計算で不利になります。
なぜならインボイス(適格請求書)ではない請求書だと、仕入税額控除(※2)が受けられなくなるから。
(※2)受け取った消費税から支払った消費税を差し引くこと。
ここでポイントになるのが、「免税事業者はインボイス(適格請求書)を発行することができない」ということです。
ただし、免税事業者であっても消費税の課税事業者になって、インボイス発行事業者の登録を受ければ、インボイスを発行することができます。
②消費税の仕組み
消費税とは、「商品やサービスの消費をする際に、消費税を支払って税金を負担する制度」のことです。
実は消費税の納税は、商品やサービスを提供している各事業者が行っています。
ちなみに納税する消費税の計算方法は、以下の通りです。
【納税する消費税の計算方法】
(売り上げに関する消費税)ー(仕入に関する消費税)
全ての事業者が消費税を納めるのではなく、「基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税事業者のみ」が、消費税を納税する仕組みになっています。
③インボイス制度の目的
インボイス制度の主な目的は、「免税事業者の益税問題を解消する」ことです。
なぜなら免税事業者は消費税を受け取っても消費税を納税する必要がないため、受け取った消費税がまるまる利益になっているから。
インボイス制度の導入によって免税事業者の取引先は、消費税分の割引を求めたり、免税事業者よりも課税事業者との取引を優先する可能性が高いです。
その結果、現在の免税事業者はあえて、「課税事業者」となって、インボイス(適格請求書)を発行すると予想されています。
④インボイス制度の影響範囲
インボイス制度の影響を受けるのは、以下のように、「消費税が課税される物件を所有している不動産投資家」です。
【消費税が課税される物件】
- 店舗
- 事務所
- 倉庫
- 駐車場
- アンテナ基地局
一方で、以下のように「消費税が課税されない物件を所有しているオーナー」の方には、インボイス制度の影響は特にありません。
【消費税が課税されない物件】
- 住宅の賃貸(アパートやマンションなど)
- 借地
基本的に住宅としてアパートやマンションなど賃貸している物件は、インボイス制度の影響がありません。
その一方で、建物の1階部分が店舗であったり、屋上に太陽光パネルを設置して収入がある場合は影響があるため、注意しなければいけません。
インボイス(適格請求書)を発行しない場合、テナント(借主)に消費税の分だけ割引を求められたり、課税事業者との取引を優先する可能性があります。
インボイス制度が不動産投資に与える影響
以下の一覧表の通り、居住用物件を所有する不動産オーナーにはほとんど影響はありません。
物件の種類 | オーナーの状況 | インボイス対策 |
---|---|---|
アパート・マンションのみ | 消費税は非課税 | インボイス対策不要 |
事務所・店舗あり (テナントが免税事業者) | 免税事業者 | インボイス対策不要 |
事務所・店舗あり (テナントが課税事業者) | 免税事業者 | インボイス対策を要検討 |
事務所・店舗あり | 課税事業者 | インボイス対策をすべき |
この章ではインボイス制度の影響に関して、以下の3点を詳しく解説します。
- 影響①|(不動産オーナーが免税事業者の場合)物件の競争率が低下する
- 影響②|(不動産オーナーが免税事業者の場合)テナントの収益が落ちる懸念あり
- 影響③|事業用の物件を購入すると消費税が還付されない
影響①|(不動産オーナーが免税事業者の場合)物件の競争率が低下する
オーナーが免税事業者だと、ライバル物件よりも競争力が低下するリスクがあります。
なぜなら免税事業者はインボイス(適格請求書)を発行することができないから。
そのためインボイスを発行できない場合、テナント(借主)は家賃の消費税分を経費として控除することができないため、税金の負担が増えて利益が減ってしまいます。
そのためインボイス制度が導入されると、テナント(借主)は「インボイスを発行してくれる物件」を優先して選ぶ可能性が高いです。
影響②|(不動産オーナーが免税事業者の場合)テナントの収益が落ちる懸念あり
オーナーが免税事業者だと、テナントの収益が落ちてしまうケースがあります。
なぜならインボイス制度に対応するために課税事業者になった場合、消費税分を利益にすることができなくなるから。
仮に課税事業者にならずにインボイスを発行しないとしても、テナントから消費税分の家賃減額を要求される確率が高いでしょう。
そのためインボイス制度が導入された後は、特に店舗物件が多いエリアの賃料水準の変化に気をつける必要があります。
影響③|事業用の物件を購入すると消費税が還付されない
インボイス制度導入後は、事務所や店舗など事業用の物件を購入する場合、消費税還付(※3)が受けられなくなるため注意しなければいけません。
(※3)消費税の納付額がマイナスになる場合、その分の金額を税務署から還付してもらえる制度のこと。
なぜなら売主が免税事業者の場合は、インボイス(適格請求書)を発行することができないから。
実は不動産を購入すると、建物部分に多額の消費税が発生するため、消費税還付によってお金が戻ってくるのは、不動産オーナーにとって大きなメリットです。
現状は売主が課税事業者・免税事業者に関わらず、買主は建物の消費税分を控除することができます。
その一方でインボイス導入後は、売主が免税事業者の場合、買主は消費税還付を受けられなくなるため注意しなければいけません。
免税事業者のインボイス対策
この章では、「免税事業者の不動産投資家」の方が、どのようにインボイス制度に対応すれば良いか詳しく解説します。
- パターン①|消費税が課税される売り上げがない場合
- パターン②|テナントが免税事業者(課税売り上げあり)の場合
- パターン③|テナントが課税事業者(課税売り上げあり)の場合
パターン①|消費税が課税される売り上げがない場合
居住用のアパートやマンションなど、消費税が課税される売り上げがない場合は、インボイス対策は不要です。
なぜならインボイス制度の影響があるのは、店舗や事務所を賃貸しているオーナーのみだから。
上記で解説した通り、アパートやマンションなどの居住用の賃貸収入の場合、消費税は課税されません。
そのため居住用の賃貸物件を所有している免税事業者のオーナーは、インボイス制度の対応は不要です。
パターン②|テナントが免税事業者(課税売り上げあり)の場合
不動産オーナーもテナント(借主)も免税事業者である場合、インボイス対策は不要です。
なぜならテナント(借主)が免税事業者であれば、仕入額控除をすることができないから。
そのため、不動産オーナーもテナント(借主)も免税事業者の場合、インボイス制度の対応は不要です。
パターン③|テナントが課税事業者(課税売り上げあり)の場合
店舗や事務所を所有しており、テナント(借主)が課税事業者である場合、以下のようにインボイス制度の対策を検討する必要があります。
- パターン③ー1|インボイスを発行する
- パターン③ー2|免税事業者として賃料を減額する
パターン③ー1|インボイスを発行する
あえて課税事業者となりインボイスを発行すれば、物件の競争力を今まで通り維持できるメリットがあります。
なぜならインボイスを発行すれば、テナント(借主)が仕入額控除を利用して経費計上できるから。
特にテナント(借主)が課税事業者、かつ将来的に事業を拡大していく予定がある場合、あえて課税事業者になることを検討するのもおすすめです。
課税事業者になることで、消費税の納税義務が発生してしまいますが、店舗や事務所の競合が激しいエリアの場合は大きなメリット。
ちなみにインボイス制度が始まるまでに準備をするには、「2021年10月1日〜2023年3月31日」の期間中に登録申請をする必要があります。
パターン③ー2|免税事業者として賃料を減額する
免税事業者のまま、「家賃減額」を検討するのも一つの方法です。
なぜなら免税事業者の場合はインボイスを発行できませんが、消費税分だけ家賃を減額すればテナント(借主)は損をしないから。
インボイス制度導入後に今まで通り消費税を加えて家賃請求してしまうと、テナント(借主)は消費税分の仕入額控除をすることができません。
つまりインボイスを発行できるライバル物件との競合に勝つためにも、家賃の減額に応じる必要があるでしょう。
ただしインボイス制度は経過措置が用意されており段階的に導入されるため、消費税の全額を値引きする必要はありません。
課税事業者のインボイス制度対策
すでに課税事業者である場合、インボイス制度に対応するためにどんな対策が必用なのかを詳しく解説します。
- 対策①|インボイス(適格請求書)を発行できるように手続きを行う
- 対策②|インボイス登録の流れ
対策①|インボイス(適格請求書)を発行できるように手続きを行う
あなたが課税事業者である場合、インボイス制度の開始に間に合わせるには、早めに登録手続きをしなければいけません。
なぜなら課税事業者がインボイス登録したとしても、経済的なデメリットがないから。
ちなみにインボイス制度が始まる、「2023年10月1日」からインボイスを発行するには、「2021年10月1日〜2023年3月31日」の期間中に以下の申請をする必要があるため注意しましょう。
対策②|インボイス登録の流れ
インボイス(適格請求書)の発行事業者になるには、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出する必要があります。
ちなみに郵送で申請書を送る場合、税務署ではなく、「各地域のインボイス登録センター」にしなくてはいけません。
(参考)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_yuso.htm
また、パソコンやスマホによるWeb申請も可能です。
(参考)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_shinei.htm
登録完了後、適格請求書発行事業者になると、ネット上で名称や登録年月日が公表される仕組みになっています。
(参考)
https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/
まとめ
今回の記事では「インボイス制度の仕組み」や、「インボイス制度が不動産投資に与える影響」について詳しく解説しました。
アパートやマンションなど、「居住用の建物のみ」を所有している場合、インボイス制度の対応は不要です。
その一方で免税事業者の方は、インボイス制度の対策をするかどうかをよく検討する必要があります。
具体的には、「課税事業者になってインボイス(適格請求書)を発行する」もしくは、「消費税分だけ家賃を減額する」のどちらかの対応が必要でしょう。
ただしインボイス制度は経過措置が設けられているため、課税事業者にならずに段階的に対策をしていくやり方も検討してみてはいかがでしょうか。
不動産投資型クラウドファンディング
不動産投資に興味があるけども、ローンを組んでまで投資をするのには【リスク】を感じる。
そんな方は、不動産投資型クラウドファンディングを試してみてください。
どちらの事業者も不動産投資を少額から始めてみる、試してみるにはピッタリな事業者だと言えます。
【リスク】を少なく不動産投資を始めてみましょう。
また、当サイトで人気の記事はこちらです。