「風が吹けば桶屋が儲かる」と言う話があります。突風が吹くならば砂が舞い上がり、それが女性の目に入り…最終的には桶の需要が増えて桶屋が儲かるという話なのですが、これと似た話が投資信託でも考えられます。世界経済とそれによって発生する投資信託のリスクです。
投資信託は投資家自身が運用をする訳では無いので、一見すると無関係にも思えるかも知れません。しかし、投資の環境が悪くなるとファンドマネージャーにとっても悪い環境であることは変わりなく、少なからず影響してしまいます。
では、具体的にはどの様な影響が考えられるのでしょうか。
ここでは、世界経済の投資信託を「地政学」の観点から考えたいと思います。
もくじ
世界経済が投資をする上でなぜ重要か
最初に、世界経済がなぜ重要かについて再確認をしてみましょう。
国内経済への影響
世界経済は国内経済にも大きく影響します。
例えば、国内で使うエネルギーは海外から輸入する化石燃料によってまかなっていますし、工業をはじめとする産業も材料供給などで海外に依存しています。また、今では外国人労働者が国内でも多く働いています。産業にもよるでしょうが、外国人労働者の存在が無視出来ない物もあることでしょう。
それでは、これらの環境が変わった場合には、どの様な影響が出るでしょうか。
これは国内経済へのダメージにもなり得るでしょう。エネルギーや材料が世界で取り合いになれば、材料相場が上がってしまい、国内産業の停滞もあり得ます。
また、世界情勢の変動によって外国人労働者が祖国に帰れば、国内の労働市場も変わることでしょう。
この様に、世界経済は国内経済にとっても無視は出来ません。重要なのです。
投資にも影響し得る
この様に、世界経済は国内経済に大きな影響を及ぼすのですが、これは投資にも影響します。と言うのも、世界経済からの影響が企業の業績に大きく影響するからです。
例えば、アルミなどの金属は海外からの輸入に頼っていますが、輸入するためには船のエネルギーが必要です。そのため、原油価格が上がるならばアルミの価格にも影響します。これは国内のアルミを基本とした産業・自動車や住宅などのメインとなる産業にも影響し、場合によっては業績が悪化することでしょう。
その結果として株式が低迷し、投資信託にも影響し得るのです。
海外への投資への影響
当然ながら、この現象は世界各国にも影響します。
例えば、原材料を自国でまかなえない国などは工業製品の価格が上昇するでしょうし、場合によっては戦争に繋がり、更なる混乱に結び付くことでしょう。特に国情が不安定な地域への影響が多いとも思われます。
さて、投資信託には海外企業や不動産をメインに投資対象とするファンドがあるのですが、世界経済の影響は、これらの投資信託を混乱しかねません。ですから、世界情勢はニュースを見るだけでなく、投資家自身のこととして捉えなければならないのです。
世界経済と投資信託のリスク
ここでは、世界経済と投資信託の関連性について考えてみたいと思います。
代表的な物について挙げてみましょう。
債券のリスク
世界経済の変動要因によっては債券のリスクが非常に上がります。そして、場合によってはリスクが現実の物となり、大きく値を下げることもあります。
例えば、昨今のロシア情勢が最たる物と言えるでしょう。
今回のロシアの軍事侵攻によってロシア関連の債券は軒並み暴落しました。特に国債がダメージが大きく、格付けも下がり、価値も限りなく下がった訳です。当然ながら投資信託も大きく値を下げてしまいました。
また、過去にはイタリアで政治的な混乱が発生し、イタリア国債が下落しています。投資信託もこの影響を受け、値を下げてしまいました。
株式のリスク
世界経済のアクシデントによる株式相場の混乱は少なくありません。
例えば、新型コロナの問題は世界経済を襲いました。様々な産業がストップし、株価にも影響を与えた物でした。
これにより、投資信託も下落しました。
また、過去にはリーマンショックなどの影響により、投資信託が暴落した例があります。株式も世界の影響を受けやすいのです。
コモディティのリスク
コモディティの変動リスクも考えられます。食料などの価格が変われば、投資環境にも少なからず影響することでしょう。
ただし、一部のコモディティの場合は世界経済の不安や混乱時に上がる物もあります。
良い例が金で、特に戦争などが勃発すると、投資家の関心が集まり、値を上げることもあります。
これは他の投資対象が危険になるからと言うのが大きな原因の1つです。例えば、戦争によって国の信用リスクが増大して債券の価格を下げた時には、投資家は債権などの下落している物を売り、金に資金を注ぎ込むのです。
また、原油などの価格も影響を受けます。戦争などによって経済的な混乱があると、価格は大きく変わることもあるのです。
地政学と世界経済の関係性
さて、世界経済を考えるためには視野をもう少し広げるべきです。株式にしても債券にしても、変動要因が変わってしまうから。あるいは特定の地域のアクシデントによって特異的な影響を受けるからです。その時のキーワードは「地政学」です。
そこで、ここでは地政学と世界経済について考えてみたいと思います。
地政学と世界経済
地政学とは「地理条件から軍事・外交・国家戦略などを分析する学問」と言うことが出来ます。
例えば、過去の湾岸戦争を思い出すならば、地理を的には中東のイラクとクウェートは隣国です。そして、石油政策を巡って対立し、ついには戦争が勃発しました。
さて、これはイラクとクウェートが隣国であったことが原因の1つとも考えられます。と言うのも、陸路で国境を破ることが出来たからです。これが地理的に離れた国であれば、もしかしたら戦争は起こらなかったかもしれません。
そして、この戦争によって原油価格は混乱しました。つまり、地理的に考えれば中東の隣り合った国が「地理的に侵攻しやすかったから」原油価格が混乱したとも言えるのです。
地図を超えることもある
さて、地政学を考えるならば世界経済の理解もし易くなります。先にも挙げた戦争は局地的には地理条件が大きく作用した物だからです。
ところで、地政学は地理的条件ではありますが、地図を超えて発生する物も実はあります。
後述しますが、サイバーセキュリティなどは良い例でしょう。
現在のネット環境を考えるならば、仮に隣国で無くても対立する国のインフラを攻撃することが可能。経済的な混乱を引き起こすことも不可能では無いからです。
この様に、地政学と言っても「紙の地図」では無い地図も存在します。そして、世界経済を考えるならば、紙以外の地図の考察も必要。分析は簡単では無いのです。
地政学から見る投資信託のリスク要因
では、地政学的な要因は投資信託のリスク要因にどの様に影響するのでしょうか。
代表的な例を挙げて考えてみましょう。
戦争の勃発
まずは戦争を挙げてみましょう。
戦争は世界経済を混乱させますが、隣国の軍事侵攻が原因となることが多く、まさに地理的要因となります。
ですから、世界のどこかで国同士の緊張状態が長く続いた場合には、それが何等かの相場に影響する可能性は上がります。前述の様に、戦争は金相場への影響が考えられます。
そして、その場合には、その国や生産する物の相場は変動することがありますので、投資信託によっては基準価額への注意が一層必要となるでしょう。
大規模テロ事件の発生
テロも重要な要因となり得ます。例えば、イスラム過激派のテロ行為です。
イスラム過激派によって行われるテロ行為を考えるならば、やはり産油国の緊張が予測されます。そして、その行為によっては原油価格にダイレクトに影響するのです。
そして、この混乱は投資信託にも影響し得ます。テロ行為は時には戦争にも結び付き得ますので、危険と判断されて混乱するからです。
伝染病の蔓延
一般の投資では手が届かない地域の投資も投資信託では可能になる場合があります。よい例がアフリカへの投資です。アフリカは人口の伸び率が大きく、投資対象としても魅力があるのです。
しかし、アフリカにも特有の地政学的リスクがあります。…例えば伝染病の蔓延です。
過去を振り返るならば、アフリカで発生して蔓延した伝染病がありました。例えばエボラ出血熱。これは伝染力のために多くの国でも恐れられましたが、アフリカが日本と地理的に離れていることから、日本では緊張感は薄れていました。
しかし、アフリカ投資を考えるならば、伝染病蔓延のため、外国のインフラ建設支援なども滞り、経済的ダメージは顕著だったと言えるでしょう。
中東情勢の緊張化
中東情勢は特殊です。と言うのも中東は地域によって宗教や文化による対立があるからです。
当然ながら、その様な違いは戦争やテロに結び付き得ます。
中東情勢のリスクは地域的な文化・宗教的なリスクとも言えます。地域特有なので、地政学的リスクとも言えるのです。
対外債務の増加
ある国が債券を通して他国に借金をしている場合、国情によっては対外債務が増加し過ぎて、経済的なダメージを受けることもあり得ます。
そして、特に投資信託の場合には手が届かない国に投資している場合もあるので、その経済的ダメージの影響を受けることもあり得るのです。
ちなみに、ロシアへの投資は個人投資家では手が届きにくいと思われますが、投資信託の場合はロシア債券を中心に行っている物もありました。それが戦争と経済封鎖のために下落。今後の見通しも立たないままで引きずっているのです。
局地的な気候変動
地域的な気候変動が経済に影響することがあります。地域特有の物なので、地政学的とも言えるでしょう。
さて、気候変動による影響には、例えば農産物があります。海外では気候変動によって農産物の状況が異なるのです。そして、農産物が例年と異なれば、そこへの投資が変わります。少なからず影響があるのです。
サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティの問題も紙の地図は超えていますが地政学の括りに入れることが出来ます。
そして、ケースにもよりますが、何等かの集団が外国に攻撃を加えることもあり得ます。その場合には経済の低迷も考えられ、投資環境への影響もあり得るのです。
地政学的リスク回避のために
では、世界経済の投資信託への影響はどの様にして知り得るのでしょうか。
世界情勢の監視が重要
まず挙げられるのが、世界情勢の監視です。
先にも挙げた様に、世界情勢は経済に影響します。そして、戦争やテロによる経済の変動は、投資信託にも少なからず影響することがあるのです。
ですから、世界情勢の監視を怠るべきではありません。特にハイリターンを狙って海外に投資している投資家にとっては重要なのです。
なぜリスクとなるかを知っておこう
世界のアクシデントがどの様に経済に影響するかを知ることは容易ではありません。しかし、ある程度は知っておくべきです。
そのためには日頃からの勉強や、海外情勢の考察なども重要となるかも知れません。可能な限り積極的に動きたい物です。
ちなみに、海外を知るためには地理を考察するだけでなく、文化、宗教に加えて歴史の知識も必要になる場合もあります。と言うのも、戦争が昔の遺恨がベースに存在することもあるからです。幅広い知識が物を言うのかも知れません。
まとめ
世界経済からの投資信託のリスクについて考えてみました。話のテーマをグローバルに持って行くならば、実に多くの要因が影響することが把握出来たことと思います。また、そのプロセスの理解が簡単では無いことも掴めたことと思います。
世界経済の投資信託への影響は簡単ではありません。しかし、利益を確実にするためには知っておくべき条件の1つではあります。ぜひとも視野を世界に広げ、リスク要因を理解しましょう。
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