インターネットなどの投資信託の資料を見ると「決算」という言葉がしばしば現れます。決算は一般的には企業の業績を出す物で、その期間の売上や利益を計算し、バランスシートをまとめる…と言った作業がメインに思えます。
それだけに、この用語を投資信託の資料の中に見て困惑する人も少なくないのではないかと思います。
また、投資信託の決算は一般企業と異なり、頻繁に行われている様にも見えます。これは一般企業に勤めている人にとっては、少し珍しく見えることでしょう。
そこで、ここでは投資信託の分配金と決算について取り上げて解説します。
もくじ
投資信託の分配金について
投資信託の決算も非常に大切なのですが、投資家にとっては基準価額の変動や分配金の方が直接的な関係としては深いです。そして、決算は特に分配金に大きく関係します。
そこで、最初に投資信託の分配金について再確認してみたいと思います。
分配金とは
投資信託の収益は基本的には2つに分けられます。1つ目が売却益による物。これは基準価額が低いタイミングで購入した物を高くなった段階で売却し、その利ザヤを稼ぐ物です。評価額は口数と評価額によって決まるので、口数が多ければ、あるいは基準価額の利ザヤが大きくなれば増えます。
そして、もう1つの利益となる物、それが分配金です。
分配金は運用の成果によって運用会社が決める物。収益などの成果を投資家に還元する物と言えます。金額は1口に対する金額で決められ、投資家は口数に応じて収益を得るのです。
ですから、例えば基準価額が5000円で分配金が30円、投資家が50万円で100口持っていたとすると、分配金は100口に対して30円、つまり30000円の収益を得ることになるのです。ちなみに、2倍の口数を持つならば2倍に、3倍の口数を持つならば3倍の収益となります。
分配金はどこから支払われるか
分配金が支払われるのは投資信託の純資産額からです。
投資信託は投資家から資金を募るのですが、募った資金は純資産に組み入れられます。そして、その純資産を元手にしてファンドマネージャーが運用し、収益を得るのです。分配金はその運用によって増えた純資産から支払われます。
そのため、仮に運用が上手く行かずに純資産が増えない場合は分配金の原資の確保が難しくもなり、分配金も変わって来て評価額も変わります。
また、分配金は純資産から拠出された資金を口数で割って分配される物。そのため、仮にファンドの口数が多くなり過ぎた場合には分配も多くなってしまうので、1口あたりの分配金も減ってしまいます。
ですから、仮に基準価額が増えたとしても、口数が多くなっていれば分配金が減ってしまう可能性もあるのです。
分配金の支払われるタイミング
収益が確定してしまえば、後はそれを自分の口座に入れてしまえば完了と思う人は多いことでしょう。しかし、投資信託は銀行のATMの様には行きません。特に分配金を財布の感覚で使おうとする人にとってはヤキモキすることと思います。
さて、投資信託の分配金は決算からカウントして、5営業日以降に入金されることが多いです。そして、休日が挟まれば、それだけ入金が伸びることになります。
この様に、銀行預金の様な手軽さが無い点が、投資信託のデメリットの1つと言えるかも知れません。
分配金の分配方針
分配金の扱いは投資信託の運用会社によって決められる物。純資産額から出す分配金を出し、口数で割って分配するのです。
さて、運用方針や分配方針は投資信託によって異なります。ある物では分配金に重点と置く物、またある物は基準価額に重点を置く物があるのです。
ですから、分配金よりも売却益を狙う場合には、基準価額のアップを狙う投資信託を、分配金による収益を狙うのであれば、分配金を重要視する投資信託を選べば良い訳です。
ちなみに、分配金には税金が発生します。節税を狙うのであれば分配金の無い物や分配金が少なく、基準価額のアップを狙う投資信託を選ぶと良いでしょう。ただし、再投資の場合は税金が発生します。注意が必要です。
分配金の変動要因
投資信託の分配金を決める変動要因はいくつかありますが、大別すると「運用そのもの」による物と「純資産や口数など」による物に分けられます。
第1の要因に関しては、投資そのもののリスク要因が関係して来るので、投資対象の価値変動や為替、そして金利や地域独特の事情によって決まります。例えば、戦争の勃発によって原油価格が跳ね上がり、運輸関連の産業にダメージを与えると言ったシナリオです。
第2の要因は純資産や口数。これは口数に対しての純資産の変動によって異なります。例えば、純資産が多いのに口数が少なければ、それだけ1口あたりの分配金が増えます。しかし、それとは逆に口数ばかりが純資産に対して増えてしまえば、それだけ分配金は減ってしまうのです。
いずれにせよ、これらの条件は運用会社によって決まる物で、投資家からすればブラックボックスの中の物です。ですから、分配金の予測は簡単ではありません。
投資信託の決算とは
次に、決算について取り上げてみましょう。
決算とは何か
決算は企業における一定期間の売上や利益などを算出して、その会社の経営がどの様な状態かを公示する物と言えます。株主などは決算書によってその企業の状況を知り、その後も投資するかどうかを判断するのです。
さて、投資信託の決算も企業の物と似ています。決算日には資産や負債をはっきりさせ、運用の状況を公表します。
尚、決算の時に決まるのが分配金の額。運用が上手く行っているならば、それに応じて分配金が出るのです。
ただし、分配金はいつも出るとは限りません。仮にトラブルが発生して運用が上手く行かなかった場合には、分配金が落ち込んでしまうこともあるのです。
決算日はいつになるか
決算は一般的な企業の場合には年2回、あるいは4回のところが多いです。
一方、投資信託の場合は年に1回、2回、毎月行われるところがあり、ファンドによって異なります。
分配金は決算日の後に支払われるので、年1回の物では年1回の分配金、年2回の物では2回の分配金、という具合になります。
決算の回数でどう違うか
決算の後で分配金が支払われるのですが、これは純資産の取り崩しに他なりません。ですから、決算日の度には純資産が減るのです。そして、純資産が減るならば運用の原資が減ってしまうので複利効果が薄れてしまいます。
つまり、決算の回数の多い方が複利効果が薄れてしまうのです。
例えば、純資産が20億円で毎月10%の利益を得ていて、分配金を2億円拠出する場合を考えてみましょう。
この場合は毎月20億円が22億円に増えて、その中から2億円を拠出するので、純資産的には変わりません。
しかし、3ヶ月保持させるのであれば、20億円は約26.6億円になります。ですから、3ヶ月分となる6億円を拠出したとしても、6000万円程度残ることになるのです。この差が複利効果です。
そして、この残った分は基準価額に乗せられます。
決算日が選ぶ上でのポイントにもなる
この様に、決算の状況によって純資産の形成が異なります。決算によって、コンスタントに現金化するか長期間に渡って資産形成をするかが分かれるのです。
ところで、投資家にも2つのタイプがいます。「資産形成よりも分配金を収入として考えたい人」、「分配金よりも資産を大きくしたい人」です。
さて、決算の回数がファンドを選ぶポイントにもなります。つまり、分配金を収入としてコンスタントに資金を得るのであれば決算の多いタイプのファンド、資産形成を重要視するならば決算の少ないファンドがおすすめとなるのです。
投資信託の運用報告書について
投資信託の決算日には運用報告書が出されます。
ここでは運用報告書について解説しましょう。
運用報告書とは何か
投資信託は投資家から資金を預かって運用するビジネス。ですから運用の状況は細かく報告されます。それが運用報告書です。
運用報告書は運用会社によって作られ、受益者に交付されます。基本的には決算の都度作られるのですが、毎月決算型の様な短期間の物は6ヶ月に1回出されます。
記載されているデータに関しては、後述しますが、運用経過の説明から今後の運用方針、代表的な資産クラスとの騰落率の比較まで多岐に渡ります。
尚、運用報告書の閲覧は交付してもらうことも出来るのですが、今ではインターネットの活用により手元の端末でも見れる様になっています。
記載内容1 運用経過の説明
記載内容の第1は運用経過の説明です。
記載されているのは主に次の情報となります。
- 基準価額の推移
- 基準価額変動の主な要因
- 1万口当たりの費用明細
- 最近5年間の基準価額などの推移
- 当該投資信託の投資環境
- 当該投資信託のポートフォリオ
- 当該投資信託のベンチマークとの差異
- 分配金の表示について
などです。
尚、この情報は数値的なデータが多いことから、グラフや表で簡潔に分かりやすく記載しています。文字や数値の表記の場合には、なかなか内容が分かりにくいのですが、グラフや表で記載されるならば直感的で分かりやすいです。
記載内容2 今後の運用方針
特に長期的な投資を考えている投資家にとっては、決算後にどの様に進めて行くのかが気になることと思います。投資信託は複数の投資先に分散させたり、投資タイミングを変えるなど、様々な施策を打っているからです。
さて、運用報告書の第2の情報としては、今後の運用方針が出て来ます。
これは目論見書を交えての説明もされ、今後の計画が確認出来ます。
つまり、投資信託の予測するリスクなどが確認出来て、投資するにふさわしいかを確認出来るのです。
記載内容3 お知らせ
ファンドからのお知らせです。
一般的な情報から重要な情報まであるので、しっかりと目を通すことが非常に大切です。
特に約款などに関する事項は非常に大切なので、きちんと確認する様にしましょう。
ちなみに、お知らせの欄に「当社ホームページをご覧ください」と記載されているケースもあります。この場合は併せてファンドのホームページも確認しましょう。
記載内容4 当該投資信託の概要
投資信託にはファンド単位で様々な条件を挙げています。例えば、ファンドの商品分類、信託期間、運用方針、主要投資対象、運用方針、分配方針です。
それらの情報がこの欄に記載されます。
例えば、投資対象を国内とするか海外とするかでリスクやリターンの状態が異なります。ローリスクを狙うならば国内、ハイリターンを狙うならば海外になるのが一般的ですが、この欄から自分に合った物を選ぶことが可能です。
また、運用方針や分配方針などで自分に合うものなのかを判別することが可能。重要情報が記載されている欄なのです。
記載内容5 代表的な資産クラスとの騰落率の比較
投資信託は騰落率によって運用が上手く行ったかどうかを判断することが出来ます。
ところで、ファンドの実績を見るためには、自分のファンドの騰落率だけを見るのでは無く、他のファンドの騰落率との比較を見なければなりません。
その情報が記載されているのがこの欄です。
例えば、自分の保有しているファンドと日本株、先進国株、新興国株などとの比較が可能。自分のファンドが上手く行っているかどうかが分かります。
記載内容6 当該投資信託のデータ
投資信託には純資産の他にも組入資産などもあります。また、ファンドを知るためには種別構成なども記載されていなければなりません。
それらのデータがこの欄に記載されます。
まとめ
投資信託の決算と分配金について取り上げました。決算と聞くと収支報告程度にしか見えなかったかも知れませんが、意外に様々な意味が隠れていることが掴めたことと思います。
しかし、この情報は「分かった」だけでは片手落ち。自分のファンドの計画に活かすなどして、効率的な投資としましょう。
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