不動産投資には様々なアクシデントがあります。空室の発生や家賃の滞納、あるいは自然災害なども数えられるでしょう。
しかし、アクシデントはこの様な物だけではありません。「まさか」と思える様な物もあるのです。
ここで取り上げる「入居者の夜逃げ」もその内の1つではないでしょうか。
夜逃げの発生は大家の立場からすれば検討がつかないことも少なくありません。仕事上でのトラブル、人間関係のもつれなど、不動産経営とは関係の無い理由でも発生し得るからです。
それでは、物件から入居者に逃げられた場合にはどうすれば良いのでしょうか。
ここでは夜逃げが発覚した際の対処方法などについて解説します。
もくじ
夜逃げの被害にはどの様な物があるか
ここでは夜逃げの被害について代表的な物を紹介します。
尚、夜逃げは逃げられてからすぐに発覚するとは限りません。相当の時間が経過した段階で分かることもあるのです。実際、旅行一般を考えても数週間に及ぶ長期の旅もあり得ます。「長い旅行だな」と思っていたら、実は逃げられていたと言う事態もあり得るのです。
物件を汚される
まず挙げられるのが「物件を汚される可能性」です。
夜逃げの場合には室内を整頓した状態で居なくなるとは限りません。室内が雑多のままで逃げられる場合もあるのです。その場合には物件の内部が汚される場合もあります。
例えばキッチンに生ゴミが放置された状態で逃げられると、そこに害虫も発生します。また、悪臭もひどくなるかも知れません。場合によっては近隣の住民からもクレームが来ることもあり、経営上マイナスだらけになってしまうのです。
ひどい場合にはゴミ屋敷化もあり得る
物件を汚される場合も考えられるのですが、更に考えるならばゴミ屋敷化した状態で逃げられることもあり得ます。
ひどい場合には床面に食べ物のガラや飲み物をこぼした跡などもあるかも知れませんし、飼っていたペットが死骸になってあったという事態もあり得るのです。
尚、ペットはハムスター程度の小動物であれば、物件に対するダメージも少ないかも知れません。しかし、ペットを飼育する人の中には、オーナーに内緒で飼う場合も見られます。例えば猫の死骸が部屋に転がっていたら、それだけで汚されます。多大なるダメージとも言えるのです。
逃げられた部屋の原状回復が大変
当然ながら、この状態からの原状回復は簡単ではありません。「汚れた部分を交換する」レベルでは足りず、内装一式のリフォームが必要になる場合もあるのです。
ちなみに、原状回復の費用は過失による物であれば入居者負担です。そのため、ゴミだらけにするならば入居者がとなるのでしょうが、残念ながら入居者は逃げているので居ません。オーナーが負担せざるを得ないのです。
滞納された家賃の回収が困難に
先にも挙げましたが、夜逃げは逃げられてから時間が経って発覚する場合があり得ます。その場合には入居者本人との連絡も付きにくくなることでしょう。
さて、その場合には家賃の回収が困難になることもあり得ます。この事態はキャッシュフローを悪化させるので、ダメージとしては大きいです。
尚、家賃滞納による契約解除は3ヶ月溜めた程度でなければ出来ない場合が多いです。家賃3ヶ月の損失…キャッシュ・フローの上で痛烈なダメージです。
夜逃げされた場合の対処について
では、夜逃げされた場合にはどの様に対処すれば良いのでしょうか。
夜逃げをした入居者本人への連絡
夜逃げが疑われた時に最初にすべきことは本人への連絡です。今では短い時間の間に非常に遠くまで行くことは可能なのですが、それでも早い内であれば連絡の付く可能性は高いです。可能な限りの手段を使って連絡してみましょう。
それでも連絡が付かない場合には職場や連帯保証人にも連絡を取ってみましょう。仮に連帯保証人が好意的であれば本人との連絡も付きやすくなります。
尚、法的には連帯保証人への家賃請求も可能なのですが、話がこじれる可能性もあるため、最後の手段とするのが賢明でしょう。
契約の解除
次に必要なのは契約の解除です。
ただし、オーナー側からの契約の解除は借地借家法がバックにあるので簡単ではありません。契約解除には正当な理由が必要だからです。
そして、家賃滞納を理由にする場合には借主との信頼関係が壊されたと主張出来る期間が必要です。
ちなみに、家賃の滞納での信頼関係の破壊を主張するならば、3ヶ月程度の未払いが無くてはいけません。夜逃げの可能性が極めて高いと思われ、その状態で家賃の滞納が2ヶ月続く様ならば、その段階で準備に掛かるべきでしょう。
部屋の残留物の処分
夜逃げされた部屋には多くの残留物が残っていることが少なくありません。夜逃げはゴミ屋敷からの脱走とは限らず、きれいな調度品の揃った部屋からのケースもあるのです。ですから、強制的に撤収したら、相当な額の損失と言うこともあり得ます。
さて、部屋の中の残留物の所有権は入居者にあります。夜逃げが疑われたからと言って、仮に勝手に捨てたとなると損害賠償請求の可能性もあり得るのです。
そのため、残留物の処分に関しても法的な手続きを踏んだ上で行わなくてはなりません。
夜逃げ対処時の注意点
不動産はオーナーの所有物です。しかし、契約が継続しているならば、大家であっても勝手なことは出来ません。勝手に進めるのであれば、返って立場が悪くなることもあるのです。
それでは、夜逃げに対処する際の注意点には、どの様な点があるのでしょうか。
室内には勝手に入ってはいけない
物件はオーナーの物なのですが、賃貸契約が有効である以上、借主の部屋となっています。ですから、仮に強制的に入ろうとするならば、家宅侵入となりかねません。
また、契約が解除されない状況で「夜逃げが疑わしい」と言った状況にあったとしても、あくまでも契約は有効な状態。法規上は部屋の中には勝手に入ってはいけないのです。
ケースにもよりますが、夜逃げと思われていた不在が長期の出張や旅行などによる物かも知れません。オーナーだからと言って勝手に入る行為は、やはり危険なのです。
明渡しには裁判所の判決が必要
賃貸不動産の契約は借地借家法が適用となるので、オーナー側からの契約解除は正当な理由が無い限り出来ません。これは入居者が夜逃げしたケースでも同じで、勝手に契約が切れたと判断してはならないのです。
しかし、明け渡してもらうことが完全に出来ない訳ではありません。裁判所に訴訟を起こし、明け渡しを命じる判決を出してもらえば可能となるのです。
強制執行について
裁判を起こし、明け渡しを可能とする判決が出て、その判決が確定するならば、その判決に基づいて強制執行に踏み切れる様になります。
さて、強制執行で可能となることは物件の明け渡しだけではありません。物件内に残された残留物の処分も可能となるのです。
尚、残留物の中に価値のある物があった場合には、換金されて執行費用に当てられます。また、価値の無い物についても一定期間の保管後に破棄されます。
公示送達について
ところで、裁判のためには被告に訴状を送る必要があります。しかし、夜逃げの場合には入居者がどこに居るかが分からない場合も多く、実際的に送れないことも少なくありません。
しかし、法律上は公示送達という手続きをすることによって、訴状を送達したとみなされます。
夜逃げの対応は発覚した後で時間が経ってからの対応となります。入居者の追跡は簡単では無いため、公示送達を使うケースが多くなることでしょう。
夜逃げ対策はどうするか
この様に、夜逃げは不動産オーナーとしても厄介な事件であり、避けるに越したことはありません。では、どの様な対策があるのでしょうか。
家賃保証会社の利用
直接的な夜逃げ対策とはならないのですが、家賃滞納によるダメージを防ぐ方法として、家賃保証会社の利用が挙げられます。
家賃保証会社は入居者が滞納した家賃を肩代わりしてくれる会社です。仮に入居者が夜逃げをしたとしても家賃は入って来るので、経営上の対策にはなります。
連帯保証人への連絡
連帯保証人への連絡も大切です。
と言うのは、連帯保証人の法的立場を考えるならば、入居者に代わって家賃を支払う義務を負っているからです。
夜逃げの場合には入居者が居なくなって、対応に至るまで長期戦になりがちです。逃げられている期間は、オーナーと言えど勝手に中に入ることも出来ないからです。
しかし、オーナーの立場としては家賃収入が無いと困ります。その点、連帯保証人であれば家賃の請求が可能。経営上の対策となるのです。
尚、連帯保証人は契約の最初の時点でチェックすることになります。この時に入居者本人との関係をしっかりチェックし、何かあってもコジれることが無い様にすべきです。
入居者とのコミュニケーションも重要
入居者とのコミュニケーションによって夜逃げを察知出来る場合もあります。話した感じが普段と違ったり、思い詰めた状態が続くならば危険信号かも知れません。
また、夜逃げは早期に発見することが、物件を荒れさせない意味で大切です。その点、普段から物件を見るならば電気メーターなどによって、居るかどうかを判別することも可能。夜逃げ対策にもなるのです。
家賃保証会社がやってくれること
前述の様に、夜逃げそのものの防止策にはなりませんが、不動産の経営上のリスク回避手段として家賃保証会社の利用があります。
さて、今の賃貸不動産は連帯保証人に併せて家賃保証会社を利用するケースが増えています。そのため、オーナーとしても家賃保証会社のしてくれる仕事を知っておくことが大切です。
そこで、ここでは家賃保証会社の仕事を確認してみましょう。
家賃の弁済
まず挙げられるのが、家賃を滞納した場合の補填です。
入居者は契約の際の審査の際、収入や勤続年数などの状況もチェックされ、間違いなく家賃を支払うかを見られます。
しかし、将来を考えるならば、その収入チェックが完全に有効であるとは限りません。勤務先には倒産リスクがありますし、入居者の健康状態も将来に渡って完璧とは言えないからです。
そのため、家賃を払えなくなる危険性は誰でも持っていると言え、滞納リスクはどこまで行っても消えないのです。
しかし、家賃保証会社と契約していれば、仮に滞納があったとしても補填があります。経営の上で強い味方なのです。
物件明け渡しの手続き
前述の様に、賃貸不動産の借主は借地借家法によって守られています。そのため、オーナーからの契約解除や明け渡しを迫ることは非常に困難です。
しかし、家賃保証会社は物件の明け渡しも代行してくれます。
明け渡しには裁判も発生するので、プロセスが煩雑で労力も掛かります。その点、家賃保証会社が代わってくれれば、オーナーとしても非常に助かるのです。
入居者の審査
入居者の審査は簡単ではありません。
あまりにも狭き門にしてしまうと家賃収入そのものが入らなくもなり得ます。しかし、その一方でいい加減な人を通してしまうと物件を乱暴に扱われ、家賃の支払いも危ないこともあり得ます。
さて、家賃保証会社は入居者審査まで請け負ってくれます。オーナーとしては非常に助かるサービスとなるでしょう。
ただし、これらのサービスは家賃保証会社との契約によって異なります。契約書をよく確認することが大切です。
まとめ
不動産投資における夜逃げの発生について取り上げてみました。
夜逃げの対策が簡単では無いことが把握出来たことと思います。
夜逃げの原因はオーナー側からは分からないケースが少なくありません。人間関係や仕事での問題など、様々な原因があると思われます。
ただ、誰かのコミュニケーションによって回避される可能性も無い訳ではありません。入居者管理の業務をオーナーとしても取り組んでみてはいかがでしょうか。きっと変わる点があるはずです。
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