近年の日本では少子高齢化、人口減少といった問題が深刻化しており、将来の年金不足による老後の経済破綻リスクが問題となっています。
そのため政府では、自ら主体的に老後資金を用意することを目的に、「貯蓄から投資」に資産をシフトすることを推奨しています。
しかしこれまで元本が保証される貯蓄に慣れてきた人の中には、投資についての知識が不足しており、なかなか資産運用を始められない人が多くいます。
そんな投資初心者でも最初に始めやすい投資商品が「投資信託」です。
初心者の間で人気の理由は、様々な金融商品に分散投資しているため、個別企業の株より値動きが安定していて、低リスクと考えられているためです。
ですが一定の値動きをする性質は変わらないため、投資信託にも相応のリスクは存在します。
この記事では投資信託が持つリスクについて、一つずつ詳しく解説していきます。
是非、最後までお読みください。
もくじ
投資信託が持つリスクの一覧
それではまず、投資信託のリスクについて一つずつ解説していきます。
元本保証がない
投資に慣れていない初心者がまず注意したいのは、投資信託は元本保証されていないことです。
銀行に預けるより高い金利がもらえるというイメージだけで始めると、開始後に価格が値下がりして元本割れすると驚くかもしれません。
投資信託とはそもそも株式や不動産、債券などの、価格が変動する資産の中からファンドマネージャーが選んだ商品に投資しています。
そのためタイミングによっては、商品の価格が下落してマイナス評価となる可能性があります。
ただし長期的には銀行預金より高い利率で増えていくように考えられているので、投資信託の性質を理解しておく必要があります。
為替変動リスク
投資信託には外国の株式や不動産に投資しているタイプがあります。
そういった投資信託を購入するときには、円建てと外貨建てのどちらかを選択することができます。
外貨建てを選択すると商品の価格変動以外にも、為替変動のリスクが発生します。
例えば米国株式に投資する投資信託を、米ドルで購入した場合は、購入後に為替相場が円高に変動すると評価損になってしまいます。
反対に現在のように米ドルに対して円安に推移している場合は、米ドル資産は評価額が高くなるメリットがあります。
信用リスク
投資信託が組み入れている債券などには信用リスクがあります。
実際に各債券にはデフォルトになる可能性の高い順に、格付け会社がランク付けしています。
万が一、発行者の財政状態が悪化して倒産すると、購入した投資信託の基準価格が下落する可能性があります。
最悪の場合、投資元本が戻ってこないリスクもあります。
記憶に大きく残っているのはサブプライムローン問題で、世界中の金融機関や投資家の間に拡散した、米国の格付けが低い債権のデフォルトでパニックに陥いりました。
投資信託に投資する場合は、投資先の国や企業の財務状態や経営状態にも注意する必要があります。
価格変動リスク
投資信託が投資している商品は、値動きの大きさに違いはありますが、基本的に価格が変動する商品に投資しています。
(投資信託の種類と価格変動の傾向)
- 国内、海外株式:価格変動が大きいが、高いリターンが狙える
- 国内、海外債券:価格変動は小さいが、デフォルトリスクがある
- 不動産投信(リート):価格変動が大きいが、高い分配金が狙える
- 複合資産:値動きは比較的小さいが、リターンも小さい傾向がある
これらの商品は景気の循環や、企業ごとの業績変化、政治的なイベントなど様々な要因で価格が変動します。
同じ種類の投資信託に集中的に投資すると、価格変動のリスクを受けやすくなります。
種類を分けて分散投資するなどの注意が必要です。
カントリーリスク
投資信託の中でも新興国の株式や債券に投資する商品の場合、日本やアメリカ、ヨーロッパなどの先進国と比べて高いカントリーリスクがあります。
カントリーリスクとは具体的には以下のようなものです。
- 2014年:タイで起きた軍事クーデター
- 2014年:ロシアで起きたクリミア危機
- 2018年:トルコで起きた債務問題
- 2019年:インド、カシミール地方の紛争
- 2022年:ロシアによるウクライナ進行
このようなトラブルが起きると、為替変動の他にも債券のデフォルトなどで、投資信託の購入者に大きな損害を与えます。
高いコストがかかる
投資信託は購入する時と、保有期間に応じてかかる信託報酬がかかります。
さらに売却する時には利益に対して、20%の税金がかかります。
(投資信託にかかる費用)
- 手数料:購入する金融機関ごとに設定した初期費用
- 信託報酬:運用期間中に資産額に対して数パーセントの管理料を支払う
- 監査報酬:投資信託の信託財産から間接的に支払われる
- 売買委託手数料:投資信託の信託財産から間接的に支払われる
- 信託財産留保額:投資信託を解約するときにかかる費用
これらのコストは投資信託を販売している金融機関ごとに異なるため、高いコストを設定している投資信託を購入すると、リターンが減るため要注意です。
購入する前に、投資信託の仕様書を確認して、複数の金融機関で比較をすると失敗を防げます。
投資信託のリスクを抑える方法
投資信託が持つリスクを抑える方法を5つご紹介します。
リスクを数値化して判断する
投資信託のリスクについてこれまで解説してきましたが、最近では投資信託ごとにリスクを数値でわかるように表示しています。
具体的には証券会社が提示している投資信託ごとのパフォーマンスで、「標準偏差」という数値があります。
標準偏差とは統計学で用いられる用語で、調査対象のバラツキの大きさを表しています。
投資信託で用いられる場合は、一定の期間内で運用成績がどの程度の範囲に入るかを示しています。
例えば標準偏差が1年間に10%、平均リターンが3%の投資信託の場合を考えてみます。
この投資信託は、投資を開始して1年後の運用成績は、‐7%~+13%の間に収まる確率が68.3%になります。
つまり平均リターンの±10%に大体は収まるということを示しているということです。
そのため投資信託でリスクを抑えるためには、平均リターンが高くて標準偏差が小さい商品を選択する必要があるといえます。
長期投資で取り組む
投資信託は株や不動産、債券など価格変動する金融商品に投資している商品なので、元本割れのリスクがあります。
特に短期間で投資をすると、大きな政治的なイベントなどの要因により、思わぬ値下がりが起きる場合があります。
そのため、投資信託を購入する時は短期投資よりも、長期投資で考える方が安全です。
その理由は、金融商品は短期間では価格が上昇・下降を繰り返しますが、長期間で見ると資産は右肩上がりに上昇する性質があるからです。
例えば米国株の代表的な株式指数「S&P500」では、過去度々起こった暴落にもかかわらず、長期的に大きな値上がりをしています。
そのためどの時点で投資を開始しても、20年以上長期で保有し続ければ必ず利益を得られた歴史があります。
このような理由から、近年ではS&P500などの株式指数に連動する投資信託(インデックスファンド)が、投資初心者の間で人気が集まっています。
分散投資する
投資の世界では「1つのかごにすべての卵を載せるな」という格言があります。
かごをひっくり返し時にすべての卵が割れることを、株式投資で1つの金融商品に集中投資することに例えたものです。
もともと投資信託は株であれば、複数の企業に分散投資していますが、リーマンショックのように、すべての企業の株が暴落する可能性もあります。
そういったケースの対策として、購入する投資信託の種類を分けることで、一度に大きなダメージを受ける危険を減少させることが可能です。
例えば株、不動産、債券それぞれの投資信託を購入していれば、株価が落ち込んだ時でも他の資産価格が下がらなければ、ダメージは軽減できるからです。
実際にリーマンショックのときには、株と不動産は大きく落ち込みましたが、債券価格は上昇しました。
そのため債券の投資信託を購入していた投資家は、ダメージを軽減することができました。
積立投資で取り組む
投資信託を購入するときに、一度にすべての資金を投入すると、購入後に価格が急落すると一気に資産が減少してしまいます。
そういったリスクを抑えるために、期間を分けて複数回にわたって投資信託を購入する方法があります。
それが積立投資という買い方で、「つみたてNISA」や「iDeCo」といった資産形成を目的とした制度で取り入れられています。
具体的には、毎月証券会社で自分が設定した金額で、購入可能な数の投資信託を買い付ける方法です。
この方法は「ドル・コスト平均法」と呼ばれています。
投資信託の価格が下がった時に、購入する量が増えるため、平均購入価格を下げることができるメリットがあります。
その後、投資信託の価格が上昇した時に、大きなリターンを得られます。
低いコストの投資信託を選ぶ
投資信託のリスクを抑えるためには、購入時や運用中にかかるコストが低い投資信託を選ぶ必要があります。
投資信託から得られる将来的なリターンは確約されていませんが、支払うコストは必ず決められた金額発生するからです。
特にアクティブファンドと呼ばれる、金融機関が独自に設定しているファンドは、高いリターンを狙う代わりに、コストが高い傾向があるため注意が必要です。
アクティブファンドとは、金融機関に所属するファンドマネージャーが銘柄を選定する投資信託です。
今後値上がりしそうな銘柄をプロが選定するため、成績の良い敏腕マネージャーが携わるファンドほどコストが高くなります。
ただし優れたプロであっても、必ずしも予想が当たらないのが投資の世界なので、コストばかりが高い高リスク商品にもなり得ます。
そういった高いリターンを狙う商品よりも、安定したリターンで低コストにできる「インデックスファンド」を利用するのも一つの手段です。
コストが低いネット型証券会社を利用する
投資信託自体の運用コストが低いことももちろんですが、もう一つコストで注意したいのが、どの金融機関で投資信託を購入するかです。
投資信託を扱っている金融機関には、証券会社、銀行、郵便局などがあり、それぞれで独自の商品を設定しています。
そのため金融機関ごとに、買い付け時の手数用や、保有期間中かかる信託報酬などに違いがあります。
例え同じ株式指数に連動するインデックスファンドでも、投資信託を販売している金融機関によってコストが異なるため、購入する前に確認をして選択することをおすすめします。
一般的に運用コストが低いのは証券会社で、中でも店舗を構えないネット型が安くなっています。
実際に金融庁が調査した投資信託のコスト比較では、銀行と比べてネット型証券会社は平均で約1%コストが安くなっています。
さらに年率リターンもネット型証券の方が、銀行に比べて高い結果が出ています。
必ずしもコストの高いファンドを設定している銀行の方が、運用成績が良いわけではありません。
ネット型証券会社の中でもおすすめは、SBI証券や楽天証券です。
この2つの証券会社は取扱商品が豊富なうえに、コストも業界最安値を達成しているので、投資信託を始めるなら、どちらかの証券会社で口座開設することをおすすめします。
まとめ
ここまで投資信託のリスクについて、様々なリスクの性質や、リスクを抑える方法について解説してきました。
投資信託は個別の企業株を購入するより値動きは小さいので、初心者にとっては始めやすい金融商品です。
ですが一方で、投資信託が持つ一つ一つのリスクを理解していないで投資を始めると、元本割れなど想定外の事態に陥る可能性があります。
特にここ数年間は株式や不動産は堅調に推移したため、過去のリターンから今後も順調に資産が増えると予想していると、必ずしもそうではない可能性があります。
投資信託はもともと元本保証された商品ではなく、長期的に保有すると少しずつリターンを受け取れる商品です。
つみたてNISAやiDeCoを活用して、長期的にコツコツと積立投資を続けていくと、老後の資産不足を解決する手段となります。
投資信託のリスクをよく考えたうえで、投資をご検討してみてはいかがでしょうか。
不動産投資型クラウドファンディング
不動産投資に興味があるけども、ローンを組んでまで投資をするのには【リスク】を感じる。
そんな方は、不動産投資型クラウドファンディングを試してみてください。
どちらの事業者も不動産投資を少額から始めてみる、試してみるにはピッタリな事業者だと言えます。
【リスク】を少なく不動産投資を始めてみましょう。