2019年に金融庁の金融審議会で、「老後資金に2千万円の準備が必要」という試算が報告されて何かと話題となりました。
実際に政府は預貯金に偏る日本の金融資産を、貯金から投資へシフトして資産形成に努めることを推奨する政策を打ち出してきました。
しかし投資の手段とされる株式、不動産、債券などはいずれも、貯金と比べると元本割れのリスクがあります。
投資の経験がない初心者がいきなり値動きの大きい個別株の投資を始めても、思わぬトラブルで大きな損失をかかえてしまう可能性があります。
そのため投資初心者が株式投資を始める場合は、インデックスファンドと呼ばれる投資信託を利用して、多くの企業に広く分散投資することをおすすめします。
この記事では、インデックスファンドの中でも株価の値動きが比較的小さい、先進国株式について詳しく解説していきます。
もくじ
先進国株式とは
まず先進国インデックス投資の基本的な内容について解説していきます。
先進国の定義とは
「先進国」とはG8(ジーエイト)を代表とする、アメリカやイギリス、日本など経済的に成熟した国を指す総称です。
先進国の明確な定義ははっきりしていませんが、対照となる言葉「新興国」と対に考えると理解しやすいと思います。
- 先進国:政治的・経済的に発展している国(アメリカ、イギリスなど)
- 新興国:政治や経済がまだ発展途上にある国(中国、インドなど)
新興国の方が、成長性が高く投資に向いているように思われがちですが、過去の投資リターンを見ると必ずしもそうではありません。
特にリーマンショック以降の投資成績を比べると、明らかに先進国投資のリターンが新興国を上回っています。
実際に投資信託の契約ランキングを見ると、近年上位に入るのは米国株や米国株を含む先進国のファンドが多く含まれています。
先進国株式インデックス指数とは
「先進国株式インデックス投資」とは、先進国の株式指数に連動するファンドに投資する方法です。
具体的には「MSCIコクサイ・インデックス」と呼ばれる株式指数です。
MSCIコクサイ・インデックスは、1986年3月に導入が開始されて、35年以上の実績がある指数です。
日本を除いた先進国22か国の株式、約1,300社を採用しています。
時価総額でいうと全世界の株式市場の約85%をカバーしており、MSCIコクサイ・インデックスの国別の内訳は以下の通りです。
- アメリカ:約70%
- イギリス:約5%
- フランス:約3.7%
- スイス:約3.5%
- カナダ:約3.4%
アメリカ一国の比重が高く、アップル・マイクロソフト・アマゾンなどアメリカを代表する企業株の比率が高く、3社を合計すると10%を超える配分になっています。
それ以外の国を見ると欧州の先進国や、カナダやオーストラリア、シンガポールなどの国で約30%が配分されています。
先進国株式インデックス投資の対象地域とは
続いてMSCIコクサイ・インデックスが投資対象としている、代表的な国の投資情報をご説明いたします。
アメリカ
アメリカは世界最大の経済大国で、株式市場の規模も世界最大です。
日本の投資家にとって、もっとも身近な外国株として人気があります。
アメリカの株式市場は2つあり、1つはニューヨーク証券取引所(NYSE)で、もう1つはナスダック市場(NASDAQ)です。
ニューヨーク証券取引所は金融街として有名な「ウォール街」にある、古い歴史を持った証券所で幅広い産業に属する企業が上場しています。
一方のナスダックは比較的歴史が浅く、ハイテク株など新興企業の銘柄が多く上場されています。
米国株の中でも成長が顕著なGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)も全てナスダックの上場銘柄です。
欧州(イギリス、フランス、スイスなど)
アメリカに次いでMSCIコクサイが投資対象としているのが、イギリスやフランス、スイスなど欧州の先進国です。
2020年にはコロナウイルスの感染拡大で、ロックダウンが長期化して経済活動が停滞しましたが、現在はワクチン接種が進み景気回復が進んできています。
とくにイギリスは先進国の中でも2021年は+5.34%の高い成長率を達成しており、2022年も引き続き+5%を超える成長が予想されています。
イギリスの株式市場はロイヤル・ダッチ・シェルといった石油関連企業や、金融セクターの比率が高い特徴があります。
またスイス企業というと日本で馴染みがあるのは、ネスレ(食料関連)やノバルティス、ロシュ・ホールディングといった医薬品関連企業です。
カナダ
カナダは世界2位の国土面積を持ちながら、人口は約3,600万人という人口密度の低い国です。
経済規模では世界トップ10に入り、GDP成長率は2~4%の間で安定します。
経済成長率は平均して高くはありませんが、失業率が2%未満で推移するなど安定した経済が特徴です。
カナダは世界有数の資源国であり、農業、鉱業、石油産業がカナダ経済の主要産業となっています。
中でも亜鉛、ウラン、ニッケル、アルミ、鉄鋼、石炭、鉛など鉱物の輸出で世界をリードしており、製造業全般で欠かせない資源となっています。
近年の資源価格高騰によって、恩恵を受けることが予想されます。
代表的な株式インデックス投資との違い
先進国株式インデックス以外にも、インデックス投資にはいくつか種類があります。
それぞれの特徴をご紹介します。
(主なインデックス投資方法)
- 日本株インデックス投資:TOPIXや日経平均株価など私たちに最も身近でよく知っている企業に投資できるインデックファンド
- 米国株インデックス投資:S&P500やナスダック100などアップルやグーグルなど近年高成長した企業を多く含むインデックファンド
- 新興国インデックス投資:MSCIエマージング・マーケット人口増や経済発展でこれからの成長が期待できるインデックファンド
- 全世界インデックス投資:MSCIオールカントリー・ワールドインデックス分散性が高く、安定した値動きが期待できるインデックファンド
2022年3月に発表された大手ネット証券3社によると、契約数では米国株、全世界株式、先進国株式の順にランクインしました。
これまで米国株が堅調だったこともあって、ランキングでは劣っていますが、先進国株式には特有の特徴があり、今後は米国株を上回るリターンを得られる可能性があります。
次の章で詳しく先進国株式インデックファンドのメリット・デメリットを解説していきます。
先進国株式インデックス投資のメリット
それでは先進国株式のインデックス投資のメリットを一つずつ解説します。
堅実な成長で安定した値動きが期待できる
先進国は新興国のような急激な経済成長は見込めない一方で、政治・金融システムが整備されていて突発的なトラブルが起きにくい特徴があります。
また先進国の企業には、自国経済の成長が見込めなくても、グローバルな経営に取り組んでいる企業が多くあります。
新興国や発展途上国の経済成長を取り込んで、時価総額で上位を占める有名企業が多くラインナップされています。
カントリーリスクが低い
新興国の中にはいまだに多くの地域で、紛争や通貨危機などのトラブルを起こしている国が少なくありません。
いかに高い経済成長が望める地域と言っても、1度重大なカントリーリスクが起きると、資産に大きなダメージを受けてしまいます。
例えば新興国に投資する場合にも、先進国のインデックファンドに同時に投資をすれば、急激な資産減少を防ぐことが可能です。
アメリカ一国集中より分散性が高い
現在インデックスファンドで人気がある米国株インデックファンドに比べて、先進国インデックファンドは欧州やカナダ、オーストラリアなどより多くの地域に分散投資をしています。
現在はアメリカの景気が良いため、米国株インデックスファンドに投資した方がリターンが大きいため、米国株のみに投資していれば十分だと考える投資家も多いですが、今後はアメリカが不景気になる可能性があります。
その場合は、先進国全般に分散投資できるインデックファンドのリターンが上回る可能性が十分にあります。
先進国株式インデックス投資のデメリット
それでは先進国株式のインデックス投資のデメリットを一つずつ解説します。
株価が割高になっている
近年、米国を中心に先進国の株式市場は値上がりを続きてきました。
その結果、過去の株価と比較するとかなり割高な水準にまで上昇してきています。
いくつかの先進国と新興国の株価収益率を比較した結果は以下の通りです。
世界各国の株価収益率(2017年3月末時点)
- 米国株式:18倍
- 豪州株式:15.7倍
- 欧州株式:15.1倍
- 日本株式:14.2倍
- 新興国株式:12.1倍
(出所:トムソン・ロイター・データストリーム)
株価収益率が高くなると、将来的なリターンが下がる可能性があります。
そのためこれからも継続して先進国株式のリターンが、新興国株式を上回るかは不明です。
成長率が低い
先進国の経済成長率は、新興国と比較すると低い傾向が見られます。
IMFによる2022年の経済成長率予想では、新興国全体でプラス5%ですが、先進国全体ではプラス3.6%です。
同じくIMFの公表値で比較すると、2022年以前の過去5年(2015~2019年)の経済成長率では約2%、過去10年(2010~2019年)では約3%の差があります。
経済成長率は長い視野で見ると、株価にプラスの影響を与えます。
現在は先進国株式の利回りが新興国株式を上回っていますが、今後は逆転する時期が訪れる可能性も十分に考えられます。
先進国株式インデックス投資、おすすめの投資方法
先進国株式インデックス投資を始める場合、おすすめの手順やファンドを紹介します。
つみたてNISAやiDeCoがおすすめ
株式市場の長期的に値上がりする傾向があるため、投資スタイルは短期より長期がおすすめです。
長期投資をする場合、特におすすめの方法は「つみたてNISA」「iDeCo」です。
株式譲渡益が非課税になるお得な制度で、利益を最大限にできるため通常に取引するよりおすすめです。
証券会社に申し込みをして、毎月の購入額を決めておけば自動で積立投資ができるので、手間もかかりません。
おすすめの証券会社は
つみたてNISAやiDeCoを開始するときに、おすすめの証券会社は以下の2つです。
- SBI証券
- 楽天証券
取引手数料が業界最安値で、投資信託のラインナップも豊富に用意されています。
先進国株式に関するインデックファンドもいくつか設定されているので、自分の希望条件に合うファンドを選ぶことが可能です。
またどちらの証券会社でも、指定のクレジットカードを設定すれば、毎月の購入額の0.5~1%ポイントがもらえます。
楽天ユーザーであれば、楽天ポイントがもらえる楽天証券がおすすめです。
おすすめのインデックスファンド
インデックファンドを選ぶ時に注意したい項目は、コスト(手数料・管理料)と資産規模です。
金融庁がつみたてNISAに選定しているインデックファンドの多くは、どちらも条件を満たしている商品が多いので、基本的に問題はないのですが中でもおすすめの商品をご紹介します。
①eMAXIS Slim先進国株式インデックス
信託報酬:0.1023%
受託機関:三菱UFJ信託銀行
設定年月日:2017/02/27
純資産額:3229億400万円(2022/5/3時点)
②たわらノーロード先進国株式
信託報酬:0.10989%
受託機関:みずほ信託銀行
設定年月日:2015/12/18
純資産額:1882億5700万円(2022/5/3時点)
③SBI・先進国株式インデックス・ファンド
信託報酬:0.0682%
受託機関:りそな銀行
設定年月日:2018/01/12
純資産額:101億円(2022/5/3時点)
まとめ
ここまで先進国株式のインデックス投資について、基本的な情報や特徴、メリット・デメリットや投資の始め方を紹介してきました。
現在は外国株というと米国株が主流で、米国株インデックス投資が投資初心者の間で人気になっていますが、長い株式市場の歴史を見ると投資リターンの高い地域は入れ替わりがあります。
そのため米国以外の先進国株式にも目を向けて、安定したリターンを目指す方法も一つの手といえます。
先進国の株価は現在、新興国に比べて割高になってはいますが、長期投資で毎月定額を設定して投資を続けていくと、将来的に経済成長に伴った株価上昇の恩恵を受けられる可能性があります。
先進国株式インデックス投資を開始する場合は、つみたてNISAやiDeCoを証券会社で開設して利用すると、株式売却益にかかる税金が非課税になります。
その際は手数料・管理費などコストが低く、純資産額の比較的大きなインデックファンドを選択することをおすすめします。
是非一度、先進国株式インデックス投資を検討してみてはいかがでしょうか?
不動産投資型クラウドファンディング
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どちらの事業者も不動産投資を少額から始めてみる、試してみるにはピッタリな事業者だと言えます。
【リスク】を少なく不動産投資を始めてみましょう。