近年の米国株の値上がりで、米国や先進国株への投資が投資初心者の中でも広まってきています。
新興国株式への投資はイメージが難しかったり、投資情報が乏しいといった理由で敬遠している投資家が多いかもしれません。
ですが先進国だけに資産を集中させると、リターンがばらついて思うような結果が得られない可能性があります。
また堅調な米国株ですが、景気の循環によって今後は株価の長期低迷が続く可能性があります。
そういったケースを考慮すると、新興国株式にも投資する選択を増やすとリターンを補うことができます。
この記事では新興国株式に投資する方法や、メリット・デメリットを解説いたします。
是非最後までお読みください。
もくじ
新興国株式の投資とは
それでは最初に新興国株式投資の基本的な知識について解説いたします。
新興国株式で投資できる国
>新興国というとどのような国を指すか、具体的にイメージは沸くでしょうか?
中国やインドなどが特にメジャーな新興国として認知されていると思います。
これらの国はすでに世界経済の中でも重要なポジションを占めるまで、経済的に発展してきています。
その他の国も含めて、代表的な新興国について紹介いたします。
ブラジル
ブラジルは南米最大の経済規模の国です。
人口は2億人を超えていて、平均年齢は30代前半と非常に若くエネルギーにあふれた国といえます。
BRICSの一員として高い成長を期待されていながら、過去のブラジルの成長率は低迷してきました。
ですがブラジル株は2022年に入ってから高パフォーマンスを発揮しています。
その理由はブラジルの輸出産業が好調で、海外投資家からの資金が流入しているためです。
ブラジルの主要な輸出品は大豆と鉄鉱石・精鉱ですが、昨今の商品価格の上昇により貿易収支が大きく改善しています。
またあまり広く知られていませんでしたが、最近では原油輸出国としても存在感を表してきています。
ウクライナ情勢の緊迫化を受けて、さらなる原油価格の上昇や輸出増により貿易収支の改善が期待されます。
中国
中国は世界最大の人口を抱える世界第二位の経済大国ですが、現在も高い成長を続ける新興国の1つとして数えられています。
経済成長率が近年鈍化していますが、日本を含む先進国と比較すれば依然として高い成長を続けています。
近年ではIT産業や最先端の科学分野でも、中国企業の進出は目覚ましく、安価な人件費を供給する世界の工場というイメージは変わりつつあります。
今後も内需の拡大や輸出産業の発展により、長期的に成長を続けると考えられています。
一方で、中国企業への投資リスクは社会主義国家特有の政策リスクがあります。
例えば中国大手IT企業に対する規制強化や、教育関連企業では強制的に非営利化させるなど、資本主義国家では考えられない政策を実施することがあります。
またアメリカを中心とした西側諸国との対立構造が深刻化する懸念もあり、政治的なリスクが高まっています。
インド
インドは2027年には中国を抜いて、世界第一位の人口大国になることが予想されています。
人口増加は直接的にGDPの成長へと繋がるため、将来的な株価上昇の要因となることが予想されます。
それ以外にもIT産業の発達が目覚ましく、国全体でIT化推進に取り組んでいることが特徴です。
世界有数IT企業である、Google、Microsoft、IBM、AdobeのCEOにインド人が採用されていることが象徴的な出来事といえます。
一方で近年の経済成長率は鈍化を続けており、その原因は急激なインフレが進んだことです。
インド・ルピーの価値が対ドルに対して10年間で約半分に落ち込んでおり、インドの購買能力を引き下げインフレが悪化しました。
今後も原油高が続くと、原油を輸入に頼るインドの財政収支が悪化して、インド・ルピーの値下がりが続く可能性があります。
インドネシア
インドネシアは世界第4位の人口を有する、東南アジア最大の経済規模を持つ国です。
近年、日本企業の最大の投資先にもなっており、身近な投資先として注目されてきています。
インドネシアは安価な労働力を豊富に所有しており、多くの労働者を必要とする自動車産業や電機産業などを中心に製造業が発展をしています。
その他にはGDPの約6割を占める民間消費の安定した成長が、海外からも注目をされています。
1人当たりGDPは依然低く、同じASEANのマレーシアの3分の1ほどで、成長の余地を大きく残しています。
今後も製造業の発展と、個人消費の伸びによる経済成長が期待できるのが特筆すべき点でしょう。
新興国の現状と今後
新興国全体でみてコロナウィルスの感染拡大による成長の減速は見られますが、依然として先進国と比較して高い成長を続けています。
今後の世界的な人口増加の大きな割合を占めるのも新興国で、長期的な視点でも高い成長を実現することが予想されています。
経済成長率が高ければ株価にも当然好影響を与えます。
実際に過去10年間の投資リターンは、インドや中国では年率10%を超えています。
一方で新興国の中には予想ほどの経済成長がみられず、株価が低調している国もあります。
例えばブラジルやトルコなどは高い成長率が期待されていながら、高いインフレや商品価格の低迷などによって、年率でマイナス成長の年が発生しています。
これらの背景によって、新興国全体でみると投資リターンは先進国と比較して、過去10年では低い結果となっています。
こういった実績から個人で新興国に投資する必要はあるのか、疑問に感じる投資家も多いと思います。
次の章で詳しく、新興国投資のメリット・デメリットを解説いたします。
新興国株式に投資するメリット
それでは新興国株式投資のメリットについて解説いたします。
経済成長が期待できる
新興国の経済成長率は2000年以降、継続して先進国の成長率を上回っています。
また世界経済に占める新興国のシェアは年々増加を続けているのが特徴
2000年の時点ではわずかに20%程度に過ぎなかったシェアが、2017年には約40%まで増加しています。
今後の経済成長率の予想においても、新興国が先進国を上回ることが予想されているため、この傾向が継続していくでしょう。
その背景には新興国で起きている人口増加があります。
2030までに増加する世界人口の、約95%が新興国で起きると予想されているためです。
人口の増加はその国の内需拡大を引き起こすため、株式市場にプラスの影響を与えます。
先進国株より割安
近年の先進国での株高により、先進国は過去の水準からみても非常に割高な株価に上昇しています。
一方で新興国株式はそこまでの割高感がありません。
具体的に株価の割安性を示す株価収益率(PER)で比較をしてみます。
世界各国の株価収益率(2017年3月末時点)
- 米国株式:18倍
- 豪州株式:15.7倍
- 欧州株式:15.1倍
- 日本株式:14.2倍
- 新興国株式:12.1倍
(※出所:トムソン・ロイター・データストリーム)
一国に集中投資する危険を回避できる
投資の格言に「1つのかごに卵を盛るな」という言葉があります。
これは間違ってかごをひっくり返した時に、すべての卵が割れてしまう話から、集中投資のリスクについて解説をしたものです。
例えば株価が堅調だからといって、米国株式だけに集中的に投資していると、米国で起きたトラブルで予期せぬダメージを受ける可能性があります。
テロや大規模自然災害による突然の暴落や、景気の低迷で株価が長期にわたり低迷することも考えられます。
たとえインデックスファンドで多くの企業に分散投資していても、米国企業だけに投資するファンドであれば、国全体で起きるトラブルは回避できません。
そういったリスクを回避するためには、投資する国や地方を分けることが必要です。
ヨーロッパや日本、オーストラリアなど先進国だけではなく、新興国も対象に加えることで、より分散性が高い投資が可能になります。
新興国株式に投資するデメリット
それでは新興国株式投資のデメリットについて解説いたします。
信託報酬が高い
新興国株式は先進国株式より、保有している期間中に管理費としてかかる信託報酬が高い傾向があります。
具体的なインデックスファンドで信託報酬を比較してみます。
先進国-新興国ファンドの信託報酬)
- eMAXIS Slim(先進国株式):0.0997%
- eMAXIS Slim(新興国株式):0.176%
このように同じ運営会社であっても、先進国と新興国のインデックスファンドでは約2倍の開きがあります。
長期投資の場合、信託報酬の高さはリターンに大きく影響があるため、新興国投資をする場合は注意してファンドを選ぶ必要があります。
値動きが大きい
新興国株式は、先進国より株式市場の値動きが大きいリスクがあります。
その理由には市場自体がまだ規模が小さいことや、たびたび海外投資家が資金の引き上げを実施するなどの理由があります。
値動きが大きいと、特に新興国株式に集中投資していた場合にメンタルが追い込まれてしまう可能性があります。
例えば損失が膨らんだ場合に、メンタルが不安定だと株価の底値で売却してしまうような、間違った判断をしやすくなります。
そのため先進国株式や、株以外の資産とも分散の取れたポートフォリオを組む必要があります。
政情不安による株安・通貨安リスクがある
新興国株に投資する場合は、政情不安とそれによる通貨安に注意が必要です。
先進国と比較すると、依然としてカントリーリスクが起きる可能性が高いといえます。
債務問題でデフォルトを起こしたり、紛争などによる政権運営の問題が先進国と比べて、実績を見ても明らかだからです。
具体例を示すと、過去にこのような事例が新興国では発生しました。
(2000年以降に起きたカントリーリスク)
- 2001年:アルゼンチンの債務問題でデフォルト
- 2014年:タイで起きた軍事クーデター
- 2014年:ロシアで起きたクリミア危機
- 2018年:トルコで起きた債務問題
- 2019年:インド、カシミール地方の紛争
- 2022年:ロシアによるウクライナ進行
このようなケースでは、常に多くの個人投資家にも大きな被害を与えてきました。
メリット・デメリットを十分に理解したうえで、投資の判断を行う必要があります。
新興国株式に投資する手順
最後に新興国株式に投資するときに、低コストで始める方法をご紹介します。
おすすめの投資方法
新興国株式に投資する場合、つみたてNISAやiDeCoを利用して投資する方法がおすすめです。
理由は長期投資で毎月コツコツと一定額を投資できるので、値動きが大きい新興国株式でも割と安定したリターンが期待できるからです。
また株の売買益に対する税金がかからないため、通常に株を売買するよりメリットが大きい制度です。
つみたてNISAやiDeCoに対応した証券会社で口座を開設して、必要な資金を預けて、毎月の購入額を設定します。
おすすめの証券会社
つみたてNISAやiDeCoに対応している証券会社はいくつもありますが、取扱銘柄の多さや手数料の低さを考えると以下の2つの証券会社がおすすめです。
- SBI証券
- 楽天証券
新興国株式のインデックスファンドを独自に設定していて、低水準の信託報酬で投資が可能です。
またクレジットカードで支払い設定をして、毎月ポイントを貯めることもできます。
おすすめのインデックスファンド
インデックスファンドはファンドごとのリターンは大きく変わらないため、よりコストの安いファンドを選ぶことをおすすめします。
信託報酬の安さと資産規模からみて、以下のインデックスファンドがおすすめです。
- SBI・新興国株式インデックス・ファンド:0.176%(純資産143億円)
- eMAXIS SLim 新興国株式インデックス:0.1868%(純資産832億円)
これらのファンドはつみたてNISAで購入が可能です。
まとめ
ここまで新興国株式に投資する基本情報や、メリット・デメリット、投資方法について解説してきました。
新興国は先進国と比較して高い成長率を続けている一方、株価は先進国に比べて割安です。
そのため先進国のみに分散投資する方法しているよりも、今後新興国を含めた幅広い国に投資すると平均した投資リターンは高まる可能性があります。
一方で、ロシアによるウクライナ侵攻が象徴するように、先進国と比べて政治的なリスクは高く、新興国に集中投資をするリスクは注意する必要があります。
値動きの大きい新興国に投資する場合は、やはり集中投資ではなく、インデックスファンドを購入することが懸命です。
つみたてNISAやiDeCoで毎月の設定額の中の一部を新興国のインデックスファンドに加える方法からまずは検討してみてはいかがでしょうか?
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