清水みち代
関東在住の30代女性。 生保代理店で窓口営業に従事していましたが、コロナの影響で休業中。 自宅にいる時間に資格取得に目覚め、通関士、宅地建物取引主任者、FP2級、総合旅行業務取扱管理者の各資格を取得。 将来の目標は、北海道での「田舎暮らし」。
FPに聞いてみた
投資用不動産の購入には多額の費用が必要です。しかも、その金額は億を超えることも珍しくはありません。
当然、その様な金額は個人で用意することは非常に困難です。しかし、銀行を利用するならば、資金の用意が可能になります。
では、不動産投資のローンとはどの様な物なのでしょうか。
もくじ
まずは不動産投資ローンの全体像について紹介します。
不動産投資ローンは居住用不動産を購入するローン…と捉えて住宅ローンが使えるだろうと考えられるかも知れません。しかし不動産投資ローンは住宅ローンとは完全に違います。住宅ローンと混同するべきでは無いのです。
と言うのも、住宅ローンは原則的にはローンを組む本人の居住用不動産を購入するためのもの。しかし、不動産投資ローンは第三者に貸して収益を得る不動産のローンです。つまり、不動産投資ローンの目的は「利益」なのであって、「居住用」では無いのです。
不動産投資ローンは原則的には事業用融資です。住宅ローンの知識とは別な知識が必要。全く違う準備や勉強が必要なのです。
不動産投資で扱う不動産は区分マンションやアパートの他に、一棟マンションの様な規模の大きな物もあります。区分マンションは別にしても、これらの不動産の価格は一般の住宅とは完全に違います。不動産投資ローンはこの様な資金繰りにも対応します。ローンの限度額は住宅ローンと違い、億を超える費用も融通してくれるのです。
ただし、不動産投資ローンにおいても審査は必要。収入だけでなく仕事の属性などまでチェックされ、間違いなく返済が可能かを見られるのです。
不動産投資ローンの借入期間は35年のものまであります。これを見ると住宅ローンと同様と思えるかも知れませんが、実は違います。と言うのも、物件の構造や状態によって変わって来るからです。
まず、構造で考えるならば法定耐用年数が1つの指標です。これは木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など、基本構造によって異なる物。木造が22年と短く、鉄筋コンクリートなどは47年と長く設定されています。そして、不動産投資ローンは、この法定耐用年数によって借入期間が決まるのです。
ちなみに中古物件は利回りが高くなるので人気がありますが、物件によっては法定耐用年数が迫っている物もあり、長いローンが組めないこともあります。
ローンを考える時には利率がどれくらいかのチェックが必要です。利率によって銀行に支払う金額が決まるからです。
不動産投資ローンの利率は2~4%が目安です。これは1%を切ることもある住宅ローンと一線を区画しているとも言えるでしょう。
ちなみにローンの返済は事業の明暗を分けることが少なくありません。特にアクシデントが発生した時などは事業を圧迫します。返済計画をしっかりと立てるためにも、ローンシミュレーションで確認しておくことが大切です。
不動産投資ローンは住宅ローンと完全に違います。税金に関する扱いも違うのです。
特に大きいのは税制優遇面。住宅ローンの場合には住宅ローン控除が付きますが、不動産投資ローンでは付きません。
ただし、不動産投資の場合は事業に必要な費用は経費として扱われます。経費に対しては税金が発生しません。
ローン対策は不動産投資を安全に進める上で非常に大切です。そのためにもローンについて知っておきたいことがあります。
ここでは不動産投資ローンを利用するに際して、ぜひとも知っておきたいことを挙げてみましょう。
不動産投資ローンの金利は基本的には固定型と変動型です。
固定型は金利が変わらず、返済額が一定となるタイプです。返済額が安定しているので計画を立てやすいメリットがあります。ただし固定金利は変動金利に対して高めに設定されています。
変動金利は市況によって金利が変動するもの。将来の返済が見えにくい点がデメリットです。しかし、金利の設定は固定金利よりも低めに設定されています。
ちなみに、今は固定型と変動型を組み合わせたミックス金利が登場しています。
ローンを利用する際に覚えておきたいのが金利の種類です。この種類によって利子の付き方が完全に変わるので注意が必要。混同すると銀行に支払う利子の額のイメージが変わるので、ぜひ覚えておきましょう。
さて、ローンには単利と複利があります。単利は元金に対する利子が付きます。その一方で、複利は元金と合わせて既に付いた利子にも更に利子が付くと言うものです。イメージとしては、単利が直線状に利子が増えて行くのに対して、複利は時間が経つに連れて上がります。
借金を例える表現に「雪だるま式」という言い方がありますが、まさに複利が雪だるま式なのです。
ちなみに、1億円を金利5%で20年借りた場合、返済総額は単利で2億円、複利で2億6000万円くらいです。単利と複利は完全に違うのです。
不動産投資ローンでも住宅ローンと同様に繰り上げ返済が可能です。繰り上げ返済は元本の部分の返済となりますので、トータルの利子を抑える効果があります。また、返済期間を短くすることも可能です。
ただし、繰り上げ返済をしてしまうと手元に残る現金が減ってしまうため、不測の事態に対応し切れないケースもあり得ます。例えば、急な修繕が必要になって現金が足りなくなる場合などが挙げられます。
不動産投資ローンの返済は利子を付けての返済。複利計算で大きく膨れ上がるのは利子の部分です。
ところで、不動産投資ローンの利子は経費とすることが可能です。そのため、利子を計算しておけば所得から差し引くことが可能となり、税金を抑えることが出来る様になります。
先にも挙げた1億円を20年借りる例ではトータルで2億6000万円、つまり1億6000万円くらいが利子の額です。この部分が所得から引かれるのは節税の面で非常に有利と言えるでしょう。
不動産投資ローンも他のローンと同様に銀行の審査があります。審査には年収や勤続年数、仕事の属性、投資物件の状況などがチェックされます。審査が年収だけで決まらないのは、将来に渡っても返済してくれるかを見極める必要があるからです。仮に年収だけで決めてしまう場合、その人の職業が不安定だと返済が滞る可能性もあり得るのです。
また、物件の状況にチェックが入るのは、物件の担保価値がどれくらい見込めるかを確認するため。仮に支払いが出来なくなった際にどれくらいに換金出来るかを見るためなのです。
よって資産価値の低い物件を購入する場合、ローン審査に落ちる場合も度々あるのです。
不動産投資ローンは住宅ローンと違って事業用の融資。そのために住宅ローンには無いチェックが入ることもあります。事業報告もその内の1つ。銀行によっては現状の状態や、今後の計画などの報告を要求して来るケースもあるのです。この報告は非常に重要で、銀行からの信用を決めるカギにもなります。
この時の報告が明確である場合とツメが甘い場合には、やはり銀行からの評価が変わって来ます。銀行サイドが見ても、分かりやすい様に準備しておくことがオススメです。
不動産投資ローンは基本的には購入物件が担保となり、抵当権で第1位が設定されます。
つまり、仮に何らかの不都合が生じてローンの返済が困難になった場合、銀行が不動産を差し押さえることが可能となるのです。
担保価値は取引事例や物件の収益性などから判断されます。
担保となる不動産の収益性は、これから生み出す利益と現在の価値を総合して判断されます。立地条件や築年数などと言った不動産の価値だけが評価対象になる訳では無く、これからの入居率や家賃の状況の予測によっても決められるのです。
税金に関する知識も不動産投資ローンの利用にあたっては必要です。
特に覚えておきたい点は、ローンの利子は経費として計上することが可能な点。この部分に関しては税金が発生しません。
不動産投資は家賃収入に対して経費を引いてから税金を計算しますが、ローン利子は経費として数えられるのです。
ローンの計算は非常に複雑です。自己資金や借入期間、金利のタイプなどで変わるからです。
そこで便利なのがローンのシミュレーション。様々な条件設定が可能で、しかも計算は瞬時に終わります。
不動産投資のローン計画を立てる際には、入念にシミュレーションで計算をすることが大切です。金利のタイプなど、条件設定を変えながら、いくつかのパターンを計算してみると良いでしょう。
不動産投資は情報収集が非常に大切。これはローンに関しても違いはありません。
ローンは様々な銀行が展開していて、メリットとデメリットがそれぞれにあります。しかも、銀行によって融資条件が変わって来るので、比較して決めることが必要です。ネットなどで銀行の融資条件を調べることが可能なので、ぜひとも積極的に集めましょう。
不動産投資ローンを理解しないで利用すると、ケースによっては後で大変なことになります。銀行とのトラブル回避のためにも次に挙げる注意点を忘れないでおきたいものです。
まず大切なのは「融資の目的を忘れない」点です。ローンは目的が非常に大切なのです。
不動産投資ローンと比較されがちなのが住宅ローン。同じ居住用の不動産を借りる目的なので混同されがちです。
この目的を無視してローンを利用すると大変なことにもなり得ます。例えば、投資用物件を住宅ローンを利用して建てた場合、それが発覚すると銀行から一括返済の請求が来ることもあります。目的を混同しての利用は危険なのです。
不動産投資ローンにおいても自己資金は持っておくべきです。物件の15~30%の金額を用意すると良いでしょう。
確かに条件によっては自己資金が少なくともローンを組める場合はあるでしょう。しかし、仮に手元に資金が少ない場合、不測の事態への対応が遅れる場合も出て来ます。発生するアクシデントによってはスピーディーな対応が求められることもありますので、資金の有無が明暗を分けることもあり得るのです。
先にも挙げた通り、不動産投資ローンは物件の耐用年数によっても借入期間が決まります。
これを逆から考えるならば、ローン対策のためには建築物の耐用年数も知っておくことが大切だ、と言えるのです。
不動産投資は建物の状態を見ることも非常に大切。そのためにも建築の知識は必要です。建物管理を不動産管理会社に丸投げすることはせず、自分でも勉強をしておくことがローン対策にも繋がります。
ローンの返済中に会社を辞めた場合においては、その点を銀行に届けていて、かつ返済が滞っていなければ、あまり問題にはならないと思われます。
しかし、退職後に新規のローンを組もうとするならば話は別です。退職してしまうと収入の安定性が疑問視されてしまうからです。特に、退職して独立する場合には、銀行からリスクが高いと見られる可能性も上がります。
ローン対策は銀行との関係が大切です。特に不動産投資ローンは事業向けのため、特に良好な関係が必要です。仮に関係が悪化してしまうと、元に戻すことは難しいです。銀行対策は信用が最重要と心得ましょう。 また、銀行をごまかそうとすることは絶対にやめるべきです。銀行はお金を見るプロでもありますが、信用度を見るプロであることも覚えておきましょう。
不動産投資ローンについて紹介しました。住宅ローンとは全く違った性質であることが分かったと思います。
かと言って、不動産投資ローンは超えられないハードルではありません。銀行との関係性を保ちながら、物件の運営をきちんと出来れば怖くは無いのです。ただし、その部分は不動産管理会社などとの協調も必要。ビジネスパートナーを大切にしながら進めましょう。
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