不動産投資には様々なリスクがありますが、空室発生のリスクは最も深刻な物と言えます。
空室になると家賃収入が無くなるからです。…しかし、空室発生のダメージはそれだけではありません。放置すると大変な副次的被害も起こるのです。
そこで、ここでは不動産投資の空室の発生を、フィナンシャルプランナーの視点で解説したいと思います。
もくじ
不動産投資の収入が絶たれる【空室】
空室発生と聞くと収入が絶たれるのは分かります。しかし、その部分を詳細に見て行くと、その裏には様々な弊害が隠れていることも見えて来ます。
では、空室発生によって起こるダメージにはどの様な物があるのでしょうか。
家賃収入が無くなる
まず最も大きなダメージ…「家賃収入が無くなる」ことは不動産投資において非常に深刻な事態です。
家賃収入は投資ビジネスの上で最重要のもの。これが絶たれるとビジネスそのものが座礁してしまいます。
ちなみに家賃収入が無くなる他の原因としては、入居者の家賃滞納が挙げられます。ただ、家賃滞納であれば、入居者に督促することにより回収が可能かも知れません。そして、この督促の仕事は不動産管理会社の範囲です。
また、入居者がいれば、家賃保証会社や連帯保証人への請求も可能。困難かも知れませんが回収は可能です。
しかし空室の場合は督促先そのものがありません。完全に収入は絶たれるのです。
それでもローンの返済は残る
不動産投資家の多くは銀行融資を受けています。
この融資の返済は住宅ローンの様な性格の物ではありません。自宅の取得用では無く、あくまでも事業用の融資なのです。ですから利率も高く、住宅ローンよりも厳しいです。
さて、このローンは空室だからと言っても支払いを止めることは出来ません。支払いは毎月しなければならないのです。
ちなみに、銀行は担保を持っています。最終的には取られてしまう危険性も出て来るので、ローンの返済を軽視してはならないのです。
ランニングコストは依然として発生
不動産はランニングコストが必要です。アパートなどの様な共同住宅であれが廊下などの掃除が必要ですし、照明の電気料金も発生します。また、不動産管理会社を使うならば、やはり費用が発生してしまいます。
しかも、一棟のアパートなどの場合、外壁や屋根のメンテナンス工事に多額の費用が発生してしまいます。不動産経営には様々な経費が掛かるのです。
ちなみに、外壁や屋根のメンテナンスは安い費用では済みません。物件にもよりますが、数百万円レベルの出費も覚悟しなくてはなりません。
家賃減額の可能性が出る
家賃は基本的に新築の状態が一番高く、築年数が経つほど減って行きます。確かにリフォームをすればレベルアップも可能でしょうが、新築のレベルまでは上がらないのが普通です。
さて、空室発生は家賃の減額にも繋がり得ます。
例えば、新築の時に入居して、4年後に退去した場合、次の入居者は築4年相当の家賃設定になってしまいます。しかし、元々入居していた人は新築時の家賃を支払い続けます。
つまり、新築時に入居していた人が退去しなければ、新築時の家賃を支払い続けた可能性があるのに、退去されてしまうと築4年相当にまで減額されてしまうのです。
更には、物件の状態が悪くなってしまっていると、次の入居者から家賃の減額交渉を切り出される可能性も出て来ます。いずれにしろオーナーにとっては厳しい状況には違いありません。
固定資産税のダメージ
固定資産税は物件に掛かる税金で、物件を持っているだけでも発生します。税額は資産価値に応じて変動しますが、基本的には価値が認められる物が高くなると考えて良いでしょう。
さて、固定資産税は空室の状態でも発生します。つまり、キャッシュフローを考えるならば完全にマイナスとなってしまうのです。
尚、このダメージは空室率が上がるにつれて大きくなります。仮に20室ある物件の場合、1部屋の空きと5部屋の空きでは5倍違う計算になります。ですから、区分マンション投資などの場合には、物件の収入がゼロになる一方で固定資産税は100%残ることに。非常に大きな打撃とも言えるのです。
次の入居者がいつ来るか分からない
賃貸不動産の広告宣伝は確かに可能です。しかし、広告宣伝がいくら有効であったとしても、それが入居者獲得に繋がるとは限りません。広告宣伝を積極的にしたと言っても、入居者が来ない可能性も十分にあり得るのです。
しかも、入居者がいつ現れるかは全く分かりません。確かに入学や転勤のシーズンには引っ越しの件数そのものは増えるでしょうが、それが入居者獲得の保証にはなりません。やはり、空室発生そのものを避けるべきなのです。
空室が続くと物件の状態が悪くなる
次に、物件の状態の観点から考えてみましょう。
多くの場合、住宅は人が住まなければ、その状態は悪くなって行くものです。空室の発生は、その悪条件を投資用物件に持って来ようとするもの。実は非常に危険なのです。
設備の劣化は続く
物件の老朽化は入居者の有無に関係なく進みます。トイレや浴室などの水まわり設備の部品は劣化しますし、畳やフロア材は日光の影響で色褪せてしまいます。当然ながら、この様な状況だと物件の魅力が無くなってしまい、入居者を呼び込みにくくなってしまいます。
空室となった期間の長さによっては余計な修繕費用も発生するかも知れません。
いずれにしても、経営から考えるとマイナス要因にしかなりません。
カビなどの発生リスク
密閉された空間に適当な湿度があり、しかも温度環境が良いとカビが繁殖します。これは空室になった部屋でも同じです。特に、今の住宅は気密性が高く、カビの発生リスクも高いです。
カビの発生は室内の様々な場所で見られます。特に浴室などは密閉された湿度の高くなりやすい部分なので被害が大きくなりがちです。
ちなみに、この様な部屋でも入居者がいるならば、定期的に掃除や換気をするので、カビの発生確率は減ります。空室はカビの害にも繋がるのです。
部材の腐食
木造のアパートなどは部材が木のため、条件が悪いと部材の腐朽のリスクが高まります。特にキッチンや浴室などに注意が必要です。
さて、このリスクは入居者がいるならば大きな事故には繋がりにくいと言えます。入居者がいれば窓を開けて換気をするでしょうし、水が床にこぼれるならば拭き取るからです。仮に不具合が発生したとしても、発見は早いです。
しかし、入居者が誰もいない場合には、こぼれた水を拭き取る人もいないため、状況によっては部材を濡らしてしまいます。そうすると部材の腐朽リスクが発生します。
しかも、この状況は次の入居者が入るまで続き、被害が静かに進行することも。決して軽視出来ないリスクなのです。
害虫が発生したらどうなるか
空室になると湿気がこもったり温度が上がったりして、害虫が発生しやすい状況にもなり得ます。しかも入居者がいないので発見が遅れてしまい、気が付いた時には大量発生していることも。
しかも、それがシロアリやゴキブリなどの場合には致命傷にもなりかねません。
シロアリは建物を食い荒らしますし、ゴキブリは住環境を著しく悪化させてしまうからです。そして、害虫の駆除にも費用が発生してしまいます。いずれにしろ経営上のダメージを受けるのです。
空室が続くと不動産投資の運転資金が厳しくなる
空室が発生すると、物件の運転資金にも悪影響が出てしまいます。
では、どの様な状況が考えられるのでしょうか。代表的な例を挙げてみましょう。
修繕費・リフォーム費用
まず挙げられるのが修繕費やリフォーム費用です。
先にも挙げた様に、物件は空室の状態でも劣化が進みます。劣化の状態は環境的な条件にもよりますが、修繕が必要な場合もあり得ます。
例えば、壁紙は日射によって色褪せて剥がれることもあります。その状態で貸すのも良いのかも知れませんが、入居者の獲得は難しいです。やはり物件には修繕が必要。費用が掛かってしまい、運転資金を割かなければならなくなるのです。
不動産管理会社への支払い
不動産管理会社への支払いは必要経費。決して安くはありません。
管理を不動産管理会社に委託している場合、空室となったとしても管理会社に支払う費用はゼロにはならず、その費用の分が赤字要因になってしまいます。
当然、その出費は運転資金から出されるため、経営を圧迫してしまうのです。
ローンを利用している金融機関の信用を失うことも
空室リスクが続くと、ダメージを受けるのは物件や資金だけではありません。信用を失うこともあり得るのです。
では、どの様な信用を失うのでしょうか。
銀行の信用
空室の発生は不動産投資において致命的とも言えるダメージです。収入が減ってしまうと経営も赤字に転落し、場合によってはビジネスそのものが座礁してしまいます。
さて、不動産投資家の多くは銀行の融資を受けています。これは確かに担保があっての話ではありますが、信用があっての話なのです。
そして、空室を発生させると言うことは、状況によっては経営者としての手腕を疑われることも。投資家としての信用の失墜にも繋がり得るのです。
不動産会社の信用
不動産会社の信用を失うこともあり得ます。
不動産会社も経営手腕のある投資家と付き合いたがります。経営手腕のある投資家は事業を拡張し、より上等の顧客にもなり得るからなのです。
その一方で、経営手腕の乏しい顧客に対しては疑心暗鬼にもなるかも知れません。確かにその様な顧客にも物件は売れるかも知れませんが、事業が続かない可能性も高まりますし、銀行からもクレームが付くかも知れないのです。
いずれにしろ、不動産会社としても物件を上手く活用する顧客の方に好意的。その経営手腕の1つの指標が空室の状況と言えるのです。
空室発生を避けるために知らなくてはならない事
では、空室の発生を避けるためにはどの様にしたら良いのでしょうか。
ここでは代表的な手段を取り上げたいと思います。
物件購入には細心の注意を
まず挙げられるのが、物件購入には細心の注意を払う点です。
不動産投資において良質の物件は何よりも重要。ですから、最初の物件選びから勝負は始まっているとも言えます。投資費用を抑えるのも重要なのですが、物件の魅力の確保のために、敢えて資金を投下することも大切です。長期的に見ても十分に良いと見える物件を、細心の注意を払いながら選びましょう。
物件の魅力をキープする
せっかく最良の不動産を購入しても、管理の状態が悪いと、価値を大きく下げてしまいます。そのためには不動産管理が非常に大切です。
また、物件の魅力をキープするためには入居者の管理も必要。入居者の審査は人任せにするのでは無く、自分からも積極的に参加しましょう。
ちなみに、物件の魅力をキープするにはリフォームも必要です。老朽化が進み過ぎる前のリフォームがおすすめです。
不動産会社との関係は良好に
空室対策のためには不動産会社の尽力が欠かせません。不動産会社は入居者を紹介してくれる立場にあるので、ビジネスパートナーとして非常に大切なのです。
また、不動産会社は情報ソースとしても非常に役立ちます。不動産の情報のみならず、地域の情報や銀行の情報を握っている場合もあります。更には物件を売却する場合にも有力なパートナーにもなるので、コネクションを大切にしましょう。
情報収集は積極的に
不動産投資においても情報収集は非常に大切です。そして、時にはビジネスの明暗を分ける時さえあります。
特に、不動産を取り巻く環境の変化や法改正があった時など、情報が少ないと混乱してしまいます。必要な情報を積極的に探し、活用する様にしましょう。
尚、フィナンシャルプランナーは金融関連のプロ。費用についての情報を豊富に持つので、起用するのもオススメです。
まとめ
不動産投資の空室発生について取り上げました。空室の発生によってどれだけのダメージを被るかがイメージ出来たことと思います。
しかし、その一方で物件の魅力のキープに務めるなど、空室発生を抑える手段はあります。空室が発生してしまう前に、先手を打って対策を立てておきましょう。
また、ビジネスパートナーの存在や情報ソースも必要。ぜひとも確保する様にしましょう。
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【リスク】を少なく不動産投資を始めてみましょう。