投資信託は一般の投資とは違ってファンドマネージャーに運用を委託する物。そのため、投資家は運用そのものに直接タッチすることはありません。それは投資信託の大きなメリットと言えるでしょう。
しかし、ファンドの中身は外部からは見えません。
そのため、投資家にとってはファンドの具体的の手掛かりが欲しいところです。
ここで取り上げる投資信託のチャートは、ファンドを把握する上で有用な手掛かりになるものです。しっかりと読み方を理解して活用したい物です。
もくじ
投資信託のチャートに記載されている項目
まずはチャートにプロットされている項目について挙げてみましょう。
基準価額
最初に挙げられるのが投資信託の基準価額です。
基準価額は投資信託そのものの価値とも言えます。基準価額は投資信託の純資産総額を総口数で割った値です。そのため、基準価額は総口数が増えると値が下がりますし、純資産総額が上がっても上がります。
また、総口数は投資家がファンドにどれくらいの資金を注ぎ込んでいるかを表す数値とも言えますので、そのファンドの「人気」とも言えるでしょう。
さて、投資信託の基準価額は株価などとは異なり、1日に1回出されます。チャートの1単位は1日を示します。ですから、チャートの軌跡を見る時には全体の形状を意識するだけでなく、1日1日の動きが細かく分析することが可能です。
純資産総額
次に挙げられるのが純資産総額です。
純資産総額はファンドの保有する全部の資産を指します。
純資産総額は総口数と基準価額を掛けた値になります。そのため、人気が上がり、総口数が上がれば純資産総額も上がります。
また、運用が上手く行った場合も、利益が資産の中に組み込まれるので、純資産総額も増えます。逆に運用が上手く行かない場合には資産が目減りしてしまうので、純資産総額も落ち込んでしまいます。
そして、分配金のある投資信託の場合には、分配金は純資産総額から拠出されます。分配金は運用会社が決算の時に決めるのですが、原資となるのは純資産です。そのため、分配金が出ると純資産総額も少なくなります。
チャートにおいては基準価額同様にプロットされているので、基準価額と比較して見ることが重要となるでしょう。
分配金
分配金をプロットしているチャートもあります。
分配金はファンドの利益の投資家への還元です。決算の時に運用会社によって決められるのですが、投資家に分配される物と再投資される物があります。
直接的な収益にもなりますので、投資家にとって重要な数値です。
チャートにおいては、分配金そのものを示す物、基準価額と分配金の合計をプロットした物があります。
チャートの利便性
ここではチャートの利便性について再確認をしたいと思います。
変位量を手軽にチェック出来る
まず挙げられるのが「変位量を手軽にチェックが出来る」点です。
投資信託の基準価額などの値は1日に1回出される物なのですが、それを表として現わしても全体の傾向は分かりません。表で見るならば単なる数値の羅列となってしまい、イメージするのが難しいからです。
実際、基準価額が1万円から9900円、9800円、11000円と記載されていても、どの様な値であったかは分かるにしても、半年や1年の様な長期間になると、見たとしても変化の状況は把握が出来ないことでしょう。
しかし、チャートにするならば長期間であったとしても全体の傾向の確認が容易です。365日分の数値の羅列よりも、折れ線グラフの方が、その傾向が「ファンドの軌跡」として追えるので、手軽にチェックが出来るのです。
期間を決めてのチェックが可能
チャートは紙ベースで見ることも出来ますが、ネット経由だと期間を決めて見ることが出来るので便利です。
証券会社の投資信託のサイトを見てみると、投資信託のチャートに半年、1年などの期間を示すボタンがある物があります。それを押すならば、その期間のチャートに変わり、その期間の傾向を確認することが出来るのです。
例えば、世界に何らかの経済的アクシデントが発生して、投資環境が非常に短期間で大きく落ちる場合があります。この時のチャートが仮に3年くらいの長い物で表記されていたならば、どの様な変位をしたかが分からなくなってしまうでしょう。しかし、これを半年くらいの期間のプロットを変えるならば、そのアクシデントと基準価額の変位が分かりやすくなります。
この様に期間を決めて見ることが出来れば便利なことも多く、その後の投資の方針決定の参考にもなるのです。
チャートから分かること
では、チャートから分かることは何でしょうか。
読み取れる要因を挙げてみましょう。
基準価額変動の傾向
先にも挙げた様に投資信託のチャートには基準価額の変位がプロットしてあります。そして、チャートは期間を変えながら見ることも可能です。そのため、チャートからは基準価額変動の傾向が読み取れると言えます。
基準価額の変動は時として激しく動きますが、ある程度の傾向は読み取れます。そのタイミングであれば上昇が続くのか、それとも下落に転ずるのかなどです。
そして、それを手掛かりにその後の方針を決められます。引き続き買い足すか、それとも損切りのために売却するか、利益確保のためのアクションを決められるのです。
ファンドの安定性の変動
投資信託の安定性を計る目安の1つが純総資産額です。純総資産額はファンドの持っている資産全部の数値。ファンドの安定性をも示します。
また、純総資産額は運用のための軍資金とも言えます。純総資産額が減ってしまうと、ファンドマネージャーが可能となる投資の幅が狭くなってしまいます。
更には、純総資産額が減ってしまいますと分配金にも影響が出て来てしまいます。分配金は純総資産額から出されるので、原資である純総資産額が減ると減らざるを得ないからです。
確かに、分配金はファンドの運用会社が決める物ですが、純資産総額と分配金からファンドの安定性は読むことは可能です。
そのため、純総資産額の状況によってはファンドへの投資を続けるか、それとも撤退するかの方針が立てられます。
ファンドの口数の変化
チャートからはファンドの口数は直接的には読み取れません。口数の変化はチャートにプロットされてはいないからです。
しかし、口数は基準価額と純総資産額から算出することは可能。計算は必要ではありますが、ある程度は読めるのです。
さて、投資信託を考える上でファンドに投じられている全口数を読むことは意外に重要です。と言うのも、総口数はファンドの人気を示すからです。総口数が多ければ、投資家がそれだけ多いですし、少なければ投資家はあまりいないことを意味します。とするならば、総口数が増えるならば、それだけ人気が出ている証拠。少ないならば人気の無い証拠。人気があれば今後に期待出来ますし、人気が無ければ危険性が強まるのです。
繰上償還の可能性
投資信託には償還があり、その日が来ると資金が戻って来ます。運用が上手く行っていると利益は大きくなり、償還金も多くなります。しかし、運用が上手く行かない場合には元本を割った金額が返って来ることもあります。
さて、償還日の決まっているファンドの場合はその償還日に運用が終わります。しかし、仮に運用が上手く行かなかった場合には、運用会社が運用をストップさせて資金を投資家に返します。つまり、繰上償還となるのです。
繰上償還をするかどうかは運用会社が決めることなのですが、純資産総額の水準を繰上償還の条件に組み入れているファンドもあります。純資産が〇〇億円を下回れば繰上償還をすることがある…と言った具合です。
これを逆から言うならば、純資産総額の水準を読めば繰上償還のリスクを読むこともある程度は可能。損失を減らすことが可能なのです。
ちなみに、償還には目的額まで達した結果として繰り上げる物もあります。この場合には純資産総額が非常に大きくなっている場合。大きな利益を伴う償還を予測することも可能となります。
経済的アクシデントの影響を見ることも可能
チャートを使えば過去の経済的アクシデントと投資信託の基準価額の変位を照合することが可能。経済的アクシデントの影響を計るのに役立ちます。
例えば、昨今のロシアの戦争により、ロシアの債券相場が暴落してしまいました。これはロシア国債を扱う投資信託のチャートにも、その影響が現れています。そして、このことによって戦争や経済封鎖が債券市場にどの様な影響を与えるかが分かります。
ところで、今後、世界のどこかでロシアの様に戦争を起こす政権があれば、市場はどの様に反応するでしょうか。一致はしないかも知れませんが、ロシアの債券の投資信託のチャートが参考になるはずです。
戦争などのカントリーリスクを抱える国は多くあります。その様な地域への投資は、リスクが多いだけに、リスクマネジメントが非常に重要となります。そして、そのマネジメントの手掛かりの1つとなるのが経済的アクシデントの影響。チャートはその意味でも重要なのです
チャートを見る時の注意点
チャートはグラフで表記しているので、イメージとして捉えやすいメリットがあります。
しかし、単なるグラフとして見るのでは片手落ちです。見る場合には注意点が必要なのです。
そこで、ここではチャートを見る上での注意点を紹介します。
隠れている数値も読み解きたい
チャートはグラフで表記しているためイメージがしやすいメリットがあります。
しかし、イメージしやすいのが災いして、隠れている数値まで見えなくなることがあります。
特にチャートの数値から計算して導き出す数値。後述しますが、総口数や税金などです。
もしかしたら、これらの様にチャートに現れない数値は重要で無い様に思えるかも知れません。しかし、チャートから傾向を読み取ろうとするならば、隠れている数値も読み解いて、判断に活かしたい物です。
基準価額の計算式を覚えておきたい
投資信託を読み解くためにも、数値の計算方法をマスターしておいた方がベターです。特に、基準価額関連の計算式は覚えておきましょう。
と言うのも、チャートには全部の数値が出ているとは限らないからです。
良い例が総口数です。先にも挙げた様に、総口数はそのファンドの人気の度合いの指標にもなるので、実は重要な数値です。総口数によって分配金も違って来る可能性もあり、そのファンドの複利効果がどれくらいかまで変わって来るのです。
更には、総口数が極端に減った場合には、人気がガタ落ちしている可能性もあるので、繰上償還などのリスクも出て来るのです。
しかし、総口数は基準価額と純資産総額から算出されます。
チャートを見るにしても、計算式を知っておいた方が有利です。ぜひとも覚えておきましょう。
税金を忘れない様にする
チャートには基準価額と分配金をプロットしている物もありますが、税金についてまでは言及はしていません。
しかし、投資信託の分配金には税金が発生するので、実質的な収入は削られてしまいます。場合にもよるでしょうが、税金の計算を忘れていて「イメージよりも利益が大きく落ちていた」と言う事態もあり得るのです。
ちなみに、再投資の場合であっても分配金には税金が発生します。
チャートを見る時には税金について意識することが、計算の精度を上げる上で重要となるでしょう。
まとめ
投資信託のチャートについて取り上げました。
投資信託のチャートを深く読むならば、記載していること以上の内容を読み取ることが可能であることが分かったことと思います。また、記載されていない内容についても注意が必要であることがイメージ出来たことでしょう。
いずれにせよ、資料に記載されているグラフなどは深く読み取ることが理解のカギとなります。チャートにおいても注意深く読む様にしましょう。
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