FPに聞いてみた

損失は起こるのか?投資信託の償還とは?

損失は起こるのか?投資信託の償還とは?

実際に株式や債券などの投資と比較すると、投資信託は運用会社に任せる部分が多いので、ずいぶんリスクが少ない様に見えることでしょう。株式の場合は企業の状況だけでなく経済全体を見据えなければなりませんし、債権の場合であれば金利から目が離せないからです。それを考えるならば投資信託は確かに楽に見えます。

しかし、投資信託にもリスクはあります。資料を見れば分かるのですが「元本割れもあり得る」と書いているのです。

これは銀行預金では考えられないことですが、どの様な事態なのでしょうか。

そこで、ここでは投資信託の損失について、特に償還について解説したいと思います。

基本的に投資は、損失があるものだと考えるべきでしょう。少しでも損失になる可能性を低くするために色々と考えたりしなくてはなりません。今回はFPの方に投資信託の償還について、損失があるのかどうかについて伺ってみました。

投資信託の損失について

株式投資の損失を挙げるならば、企業の業績不振や倒産などが挙げられるでしょう。また、外国経済の影響や景気の低迷、あるいは要人のスキャンダルなども株価の低迷となり、損失にも繋がり得ます。

投資信託の損失について

さて、投資信託の場合の損失は2つが主な物となるでしょう。それは「基準価額の下落」による物、そして償還による物です。それぞれについて解説します。

基準価額の下落

最初に挙げられるのが基準価額の下落による損失です。

投資信託の基準価額は投資信託の「値段」を指します。基準価額は一般的には1万口の価格。ですから評価額30000円の場合は1口あたり3円となります。

そして、評価額は基準価額と保有する口数によって決まります。口数が多くなればそれだけ評価額も増えるのです。基準価額が30000円で20000口持っている場合には評価額が60000円ですが、30000口に増えると評価額90000円にります。

さて、基準価額はその時の状況によって変動します。経済状況が良ければ上昇し、悪くなれば下落します。そして、評価額も基準価額の変動に追随して変わります。

ですから、購入した時点よりも評価額が下がり、その時点で売却してしまうならば損失が発生します。

ただし、仮に下がったとしたも基準価額が持ち直せば損失とはなりません。

償還による損失

投資信託の損失には償還による物もあります。

償還とは投資信託の運用期間が終わったことを指します。償還日には資産を清算して投資家に口数に応じて還元するのです。

さて、償還の時には基準価額が購入した時点よりも上がっているとは限りません。著しく下がってしまい、そのまま償還日を迎えてしまうこともあるのです。その場合には返還された資産が購入した費用よりも下回ることもあり得ます。償還による損失です。

また、償還による損失は、もう1つ別のパターンがあります。繰上償還による物です。

繰上償還は償還日を待たずして運用会社の判断で行われるのですが、運用業績が悪くなってしまうと償還となってしまうケースがあります。この時に購入した金額よりも変換された金額が下回るならば、その分が損失となるのです。

償還の種類

ここで、投資信託の償還について解説しましょう。

償還の種類

投資信託の償還は「満期償還」と「繰上償還」の2つがあります。それぞれについて取り上げます。

満期償還

投資信託には運用期間が最初から設定されている物があります。例えば運用期間を5年、あるいは10年とする物です。

さて、満期償還は運用期間を終わった時点での償還。5年の物であれば5年後、10年の物であれば10年後が償還日となります。

尚、満期を迎えたとしても利益を出しているとは限りません。運用が上手く行かずに償還日を迎えてしまう物もあるのです。その場合には購入した金額よりも価格を落としていることもあり、損失で終わることもあり得ます。

繰上償還

前述の様に、償還には償還日を待たずして運用を終了する繰上償還があります。償還が10年の物であったとしても、6年で運用が終わってしまうケースがあり得るのです。

尚、投資信託には償還期限の無い無期限の物もありますが、状況によっては繰上償還をしてしまうこともあり得ます。例えば市況が著しく低迷してしまって持ち直すことが期待出来ない時、運用会社が繰上償還を決めてしまうこともあるのです。

また、投資信託の運用が元々決めてあったレベルまで利益を決めた場合には、利益を確定するために繰上償還をする時もあります。

償還日の設定されているファンドとは

投資信託の投資対象は様々ですが、テーマを決めて投資をしている物があります。例えば、これからの成長が期待出来る産業や技術など、AI(人工知能)やカーボンニュートラルなどが挙げられます。

償還による損失を抑えるためには

これらは基本的には長い期間に渡って行われると言うよりは、短期的なビジネスになる傾向が高いです。AIは確かに発展するでしょうが、投資の予知が遠い未来まで続くとは限らないからです。

そして、この様なテーマ型のファンドに償還日が設定されていることが多いです。AIであれば「この先10年は発展するであろうが、その先は未知数」と判断されて10年と決められるのです。

償還による損失を抑えるためには

それでは、償還による損失を抑えるにはどの様な策があるのでしょうか。

償還による損失を抑えるためには

代表的な対策を挙げてみましょう。

純資産総額が小さい物は避ける

投資信託の純資産総額は安定性のバロメーターと言うことが出来ます。純資産総額が多ければそれだけ安定性が高いです。

投資信託には純資産総額が数億円のレベルの物から1000億を超える物まで、様々な規模の物があります。そして、純資産総額の少ない規模の小さい物は安定性の面で劣ってしまいます。つまり、運用が上手く行かなくなると、そのまま終わらせてりまうこともあり得るのです。

ですから、繰上償還からの損失は純資産総額の少ない物で起こりやすいです。避けた方が無難でしょう。

受益権口数を確認する

後述しますが、繰上償還は受益権口数が減り過ぎた場合にも行われます。

これは運用の続行が厳しくなってしまったためです。人気が無くて多くの人が解約すると、口数が減ってしまいます。口数が減るならば基準価額は上がるのですが、運用そのものが上手く行っていない場合もあるので、繰上償還のリスクは残ります。避けるのが賢明です。

運用報告書を確認する

運用報告書には投資信託の運用経過などが細かく記載されています。その中には基準価額や純資産総額の推移もあるので、ファンドの経過が非常に良く分かります。

そして、運用報告書から分かる基準価額や総資産額の推移によって、投資信託の今後も読むことも可能です。投資信託を選ぶ時には、目論見書と一緒に運用報告書についても確認しましょう。

償還までの年数の長い物を選ぶ

償還までの期間が短い場合、基準価額が下がった段階で終ってしまうリスクがあります。

例えば、5年の物で、最初の段階で基準価額が10000円であったのに、2年で8000円、5年で5000円となって行くパターンです。この場合には基準価額が下がり続けた段階で償還されてしまうので、損失は避けられません。

しかし、償還期間が5年よりも長ければ、この損失を抑えることが出来るかも知れません。

5年を超えた段階で市況を好転させる大きな現象があった場合、その基準価額は跳ね上がるかも知れません。その場合は大きな利益にも繋がり得るのです。

ですから、償還期間の長い物は、短い物と比較してリスクは低いです。選ぶ時は償還期間の長い物がベターでしょう。

無期限の物を選ぶ

無期限の投資信託は、そもそも償還が無いことが前提なので、償還によるリスクが極めて低いと考えられます。

ですから、償還のリスクを考えるならば無期限の物がベターと言えます。

ただし、無期限の物であったとしても必ず償還されないとは限りません。運用の状態が非常に良くない場合、あるいは投資先の破綻が見込まれる場合などは繰上償還される場合も考えられます。

ですから、いずれにせよ純資産総額を確認して、投資信託の安定性を計るべきでしょう。

リスクをチェックする

投資信託はファンドマネージャーに運用を委託するビジネスです。そのため、投資家は基本的にはノータッチで済みます。しかし、完全にノータッチだと良くありません。例えば、基準価額が落ち込んで行く場合には損切りが上手く行かず、損失を膨らませてしまうこともあるからです。

それを防ぐためには自分でもリスクのチェックをするべきです。債権がメインになるならば金利がどの様な推移をするか、或いは投資先の運用リスクや格付けはどの様な状況であるのかなど。リスクのチェックとファンドの管理は大切なのです。

繰上償還の起こる条件の例

ところで、満期償還であれば最初からスケジュールが組まれているので、ある程度は見通しが立てられます。しかし、繰上償還の場合は運用会社が判断するため、投資家にとっては「いつ起こるか分からないイベント」にもなります。

繰上償還の起こる条件の例

しかし、繰上償還が起こる条件はあるので、見通しが完全に立てられない訳ではありません。

ここでは繰上償還となる条件を挙げてみましょう。

受益権の口数が少なくなった場合

まず挙げられるのが「受益権の総口数が少なくなった場合」です。ケースとしては、何等かのアクシデントや状況の悪化などで解約が続いてしまい、純資産総額が減って行っている状態と言えます。

基本的には投資家からの支持を得られなくなってしまったファンドが陥る状態と言えるでしょう。

尚、口数が減って純資産額が減ると運用に充てる資金が減ってしまいます。そうなると運用そのものが停滞してしまうので、更に状況が悪化し得ます。悪循環にも陥り得るのです。

対象インデックスが変わった場合など

投資信託にはインデックスファンドと呼ばれる物があります。

インデックスファンドは特定の市場の指数に連動して変動する様に決められた物ですが、元となるインデックスそのものが変わった時などは償還となります。

尚、インデックスの対象となる指数としては、日経平均株価(日経225)、東証株価指数(TOPIX)などが代表例です。

基準価額が一定水準を超えた場合

投資信託の償還は運用が困難な時以外にも、運用が好調な場合にも償還してストップする場合があります。

これは基準価額が一定の水準を超えて、ファンドの当初の目標に到達したケースなどです。運用を終わらせて利益を確定するために償還されます。

イメージとしては、100万円の資金を10年で150万円にしようとしてファンドを購入したら、そのファンドが予想以上にパフォーマンスを発揮し、6年で150万円に達してしまった感じの物です。これは損失に終わる償還では無く、利益で終わる償還。良い終わり方です。

小規模ファンドが乱立する場合

前述の様に、投資信託の純総資産は安定性のバロメーターです。資産が多ければファンドは安定しますし、資産が少なければ安定性に欠いてしまいます。ですから、純総資産の少ないファンドは購入を慎重に考えるべきです。

小規模ファンドが乱立する場合

ところで、投資信託は最初から資産が多いのではありません。多くの場合が「育っている」のです。

そして、そのファンドの拡大にはファンドマネージャーの尽力と投資家の出資があってこそなのです。

しかし、運用会社によっては、ファンドの育成よりも設立の方に重点を置いてしまうこともある模様です。そして、運用が上手く行かなかった場合には時間を置かずに償還をしてしまうとか。投資家の立場としては良くない話です。

しかも、その様な小規模ファンドは意外に乱立しています。業者側が「育てる」よりも「作る」方に重点を置くケースが見られるのです。

投資家としては、その様な状況も見なければなりません。投資信託の購入には一層の注意が必要です。

まとめ

投資信託の償還からの損失について取り上げました。投資信託のリスクは金利や為替などは挙げられますが、償還によるリスクは忘れられている場合が少なくないと思います。

しかし、償還は突然やって来るのが怖い点。よく気を付けなければなりません。

償還による損失を防ぐためには購入時から出来ることがあります。純資産のチェックや償還日のスケジュール確認など、確実に行ってリスクを回避しましょう。

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