法令順守は企業活動において最優先とされるべき物。しかし、なかなかそうも行かず、倫理よりもカネの方が重きを置かれているケースが意外にあるものです。
さて、不動産会社もその点で恐れられた時代があります。バブル時代は怖い地上げ屋がウロウロしていたなどを思い出すと、今では考えられない状況であったと思われます。
ところで、不動産会社が法律を侵すことは今でもあり、投資家としては関わるべきではないのですが、では、どの様な行為が違法行為なのでしょうか。
ここでは不動産会社に大きく関係する法律、宅建業法とその違反について取り上げたいと思います。
もくじ
不動産会社に必須。宅建業法とは何か?
まずは宅建業法について取り上げてみましょう。
宅建業法は不動産取引の重要な位置を占めます。不動産投資をするにおいても知っておいた方が良い知識です。
法律の目的
この法律は「宅地建物取引業の適正な運営」「宅地及び建物の取引の公正の確保」「宅地建物取引業の健全な発展」を通して、消費者保護と流通の円滑化を目的としている、と言えます。
この法律が出来たのが終戦後の住宅不足の時期で、不動産取引によるトラブルが頻発していました。
しかも、ただでさえ専門的な分野であるにも関わらず、業界には知識不足の人も多く、悪徳業者も少なくはありませんでした。
その様な背景を受け、宅地建物の取引に関する規制が必要とされ、昭和27年に法制化されたのです。
尚、この法律は特別法となっているため、他の民法と干渉した場合には、こちらの法律が優先されることとなります。
法律の内容
この法律の「免許制度」「宅地建物取引士制度」「営業保証金制度」「業務に関する禁止・順守事項」などで成り立っています。
具体的には、試験の合格による有資格者を宅地建物取引業者に置かなければならないこと、供託所に供託する営業保証金について、そして実際の営業活動における禁止・順守事項になります。
これにより、不動産取引の専門家が事業所の経営を安定的に行え、トラブルが無くスムーズな不動産取引が出来る様になるのです。
宅建業法違反のペナルティ
宅建業者は不動産取引を行うこともあり、違反行為には様々なペナルティが課せられます。
内容としては「指示処分」「業務停止・事務禁止処分」「免許取消・登録削除処分」などがあり、重大な違反を犯すならば、その後に宅建業者として営業が出来なくもなります。
また、宅建業法には罰則規定もあります。内容は懲役・罰金・過料となっているので、最悪の場合には刑務所に入らなくてはなりません。ちなみに罰金は100万円レベル。非常に重いと言えるでしょう。
宅建士に出来ることを知っておこう!
この様に、宅建士は専門性が高く、しかも重い責任のある立場と言えるのですが、どの様な業務が可能となるのでしょうか。主な物を復習してみましょう。
重要事項説明書の説明
不動産取引には重要事項の説明が必須です。
不動産取引は非常な高額な取引となるので、「聞いてなかった」では済まされません。ですから、物件についての説明が契約時に確認されることとなります。
そして、この確認は誰でも出来る訳では無く、宅建士で無いと出来ないのです。
尚、重要事項の説明の際には、その内容の背景などまで説明をしなければなりません。その時には非常にハイレベルの専門性が要求されます。不動産のプロの宅建士でなければ出来ないのです。
重要事項説明書への記名・押印
前述の様に、不動産取引には重要事項説明が必要ですが、それに伴って、説明書には記名と押印をしなければなりません。そして、これも宅建士でなければ出来ないのです。
ちなみに、記名と押印はその説明の責任を負うことを意味しているので、仮にその説明に不足があるならば、場合によっては告知していなかった…ともなり得ます。
不動産投資家からすれば、物件の不具合は客付けなどに大きな影響を及ぼすので、この記名と押印は非常に重要と言えるでしょう。
契約書面への記名・押印
重要事項説明と共に大切なのが契約書です。契約書の取り交わしにより、その取り交わす契約に効力が発生し、お互いが責任を持つことになりますので、トップクラスで重要とも言えるでしょう。
そして、契約書への記名と押印が出来るのも宅建士のみです。宅建士は不動産に関する民法もカバーするので、この業務に携われる訳です。
尚、不動産取引には特別法が絡みます。特別法は一般の法律よりも効力の強い物。それだけに間違った契約は出来ません。やはりプロとしての宅建士の仕事になるのです。
宅建業法違反の例を見てみよう!
次に宅建業法の違反の例を挙げてみましょう。前述の様に、宅建業法違反は罰則規定まである物。場合によっては刑務所も待っています。「軽い気持ち」「出来心」「うっかりミス」でもペナルティは発生します。違反の代償は厳しいのです。
無免許営業
不動産取引は宅建士でなければ行ってはなりません。ですから、無免許営業は完全に法律違反です。
さて、不動産会社に試験を通った宅建士を置くことは、宅建業法の根幹の部分とも言える物。仮に破った場合には非常に重いペナルティが課せられます。
罰則の内容としては、3年以下の懲役、100万円以下の罰金などがあります。
ちなみに、無免許の者が実際に不動産取引を行わない場合であっても、看板などで宅建業者であることを表示した場合も罰則対象となります。
名義貸し
宅建業法では名義貸しを違法としています。
名義貸しに関しては、貸す方に関しても借りる方に関しても規定されていて、罰則規定も決められています。
罰則規定は非常に厳しく、監督処分としては業務停止処分などの重いペナルティ。宅建士としては事務禁止となり、実質的には営業が出来なくなります。
また、名義貸しは時として損害賠償に発展することもあります。会社としても存続が困難になるかも知れません。名義貸しは非常に危険なのです。
誇大広告
誇大広告とは実際の物件よりも有利な条件で広告を出すこと。例えば、実際にある建物の仕様よりも良い仕様として謳っているケースなどがあります。…床面積を実際より広く記載する、などが良い例でしょう。
また、デメリットの不表示も誇大広告となります。デメリットの不表示は取引後に大きな損失をもたらします。消費者保護の観点からも重要なのです。
他にも、実際には無い物件を表示する「おとり広告」も違反です。おとり広告は別物件の勧誘などに使われる物ですが、これも消費者にとっては有害。禁止対象になるのです。
広告の開始時期に関する違反
広告の開始時期に関しても規定があり、破ると法令違反となります。法的には工事の完了前での広告は禁止されているのです。
例えば、引越しシーズンを見据えて、建設途中のアパートをネットの広告に載せて入居者を募る場合などが該当します。
ちなみに、「正直に書けば問題無いだろう」と勝手に判断して「建築確認申請中」などとアナウンスをするのも違反です。
重要事項説明に関する違反
重要事項説明には費用や契約の関係など、様々な条項が記載されています。いずれも大切なので、1つでも欠かすことは出来ません。
しかし、重要事項説明書にも不備があったり内容があいまいだったりと、説明不足の場合があります。これは違反行為です。
説明不足の場合、後から「うっかりしていた」「チェック漏れ」などと言い訳をされることもありますが、宅建業法違反とも取られ得ます。
ちなみに、重要事項説明が不適切だった場合には、監督処分を受けることもあります。ペナルティは厳しいです。
告知義務違反
物件に問題があった場合、その内容を宅建士は告知しなければなりません。例えば木造の建物でシロアリの被害に合っている物は、その不具合の状況を伝えなければならないのです。…場合によっては致命的にもなり得ます。軽視されてはいけないケースも意外に多いのです。
そして、その責任を怠った場合には告知義務違反となり、宅建業法違反となります。
ちなみに、不動産の問題にはシロアリ被害や地盤沈下など、調べればハッキリする物もあるのですが、過去に孤独死や自殺があった。と言った説明の難しい物まであります。グレーゾーンも多いため、難しいです。
手付金に関する違反
不動産取引においては手付金のやり取りがありますが、これにもルールがあり、破ると宅建業法違反となります。
例えば、宅建業者が不動産を売る場合、契約を急ぐあまり、見学に来た人に手付金を貸す場合があります。また、手付金を見学者に貸すことも。これは契約締結誘引行為に当たるため、全て違反です。
多くの人にとって、不動産は一生に1度の買い物。購入の意思がはっきりとしていない人に対し、契約を誘導することは極めて悪質。あってはならないことなのです。
報酬に関する違反
不動産取引の報酬は法的に決まっている物であり、業者間で勝手に決めることは基本的には出来ません。また、職務上に発生する経費にもルールがあり、それも破ると宅建業法違反となってしまいます。…この点、案外知られておらず、しかも実際に支払う金額も左右するので、非常に大切な項目です。
また、広告宣伝費にもルールが決まっており、超過してしまうと宅建業法違反となります。
ちなみに、広告宣伝費に関する部分は誤って捉えている宅建業者も居ます。この場合には「受け取るのが常識」と開き直る業者もいる模様。注意が必要です。
不当な履行遅延
不動産取引において作業を著しく遅らせられることは非常に困ります。引越などを考えた場合、スケジュールを考え直さなければならないので大変です。
さて、宅建業法では「不当な履行遅延」も禁止しています。ちなみに、この違反も監督処分や罰則が課されます。
ただし、地震や台風などをはじめとする宅建業者以外の原因で発生する遅延については適用外になっており、罰則も発生しません。
標識の掲示
不動産会社に行くと、免許証の番号や代表者氏名などが記載されている標識を見つけます。この標識にもルールがあり、破ると宅建業法違反になるのです。
この標識、記載する内容だけでなく、掲示する場所についても規定があります。基本的には事務所や専任の宅建士を置く場所です。
宅建業法違反による事件例
では、宅建業法違反による事件には、どの様な物があったのでしょうか。
過去の事件の例から紹介します。以下に挙げる物は案外「珍しく無い物」「慣習的に行われている物」とも思えるかも知れませんが、立派な違法行為です。
重要事項説明などを怠った例
20年に渡って借りていた物件を購入したのですが、購入後になって建築基準法に引っかかる物件であることが分かりました。買った側は「違法建築であることの説明を受けていなかった」としての告訴です。話は大きくなり、損害賠償まで進みました。
これは宅建業者の重要事項説明違反、あるいは告知義務違反などが該当します。
無免許営業・名義貸し
学生アパートの所有者が賃貸物件の募集を斡旋したことがありました。また、このグループと提携した宅建士が仲介の業務にあたりました。
このケース、前者の「学生アパートの所有者が不動産の募集」という点が無免許営業にあたり。グループと提携した宅建士の仲介が名義貸し行為に当たるとされました。
まとめ
宅建業法違反について取り上げました。不動産取引は非常に高額な金銭を取り扱うため、宅建業法では様々な規定を設けており、しかも厳しい罰則規定まであることが把握出来たものと思います。
また、宅建業法違反の事件例を挙げましたが、結構ありがちな説明不足が大きな問題に発展すること、慣習的に行われている提携行為が違法に当たることにも納得いただけたこととも思います。
いずれにせよ、宅建業法違反は物件を購入する立場からすれば、非常に困った存在です。誤った契約をしないためにも、自分で勉強して防衛しなければなりません。ぜひとも積極的に情報を収集しましょう。
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