FPに聞いてみた

どんなメリット・デメリットがある?投資用物件としての増築

どんなメリット・デメリットがある?投資用物件としての増築

中古の物件は利回りが良いので、不動産投資家においても人気が高いです。仮に購入時に収益性が悪かったとしても、リフォームなどにより収益性のアップは可能。持ち直すことは十分に出来るのです。

それでは、購入時の物件が過去に増築したことのある物件ならばどうでしょうか。増築した物件は便利な場合が多く、それだけを見るならば魅力的です。

しかし、不動産投資では、増築物件は意外にクセのある物で、事前に良く検討しなければなりません。

そこで、ここでは投資用物件としての増築物件の購入について取り上げ、再確認をしたいと思います。

投資用物件はそのまま運用する事が出来れば、それが一番ですが、色々な問題点があり、手を加えなければならない事もあります。今回はFPの方に投資用不動産の【増築】について伺ってみました。

建物の増築の種類について

まずは増築の種類について挙げてみましょう。増築にも様々なケースがあることが分かることと思います。

建物の増築の種類ついて

脇に建て増す

脇に建て増す物は最もポピュラーな増築と言えるでしょう。

住宅は家族構成によって必要性が変わって来る物です。子供が大きくなって自室が必要になった場合など、新たに部屋を作る必要が生じた時などに行われます。

さて、この増築はスペースが増えるので、物件の利便性もアップします。しかし、建物の構造を大きく変えてしまうこともあるので、悪影響も無い訳ではありません。例えば、増築した部分に窓を適切に設置していない場合など、日当たりが悪くなることもあるのです。

尚、この増築によって違法建築物になってしまうことが少なくありません。良く見られる例が建ぺい率や容積率のオーバー。建て増した部分の床面積がそのまま超過している例が見られます。

階数を増やす増築

住宅は敷地の広さが決まっていますし、建ぺい率なども決められています。そのため、建物を横方向に増築することが難しい場合があります。しかし、その様な場合には建物の階数を増やす方法もあります。つまり、2階建てを3階建てにする様な増築です。

この増築は敷地の容積率を確認しなければなりません。容積率で規定されている面積までが増やせる床面積だからです。

例えば、敷地の容積率が100%の土地に延床面積が70%の建物の場合、3階として作れるのは残りの30%分までの床面積となります。

屋上の増築

元々が屋根だった部分に屋上を設置する増築もあります。

洗濯物の干場を作ったり、ウッドデッキなどの設置が良い例と言えるでしょう。敷地に余裕のあまり無い建物や、プライバシーを重視したい場合などに行われることが多いです。

この増築は日当たりの良い空間が作れるので、住空間としては快適性がアップします。しかし、屋上部分は雨ざらしになってしまうので、劣化しやすいです。しかも、高所のためにメンテナンスが難しいなどのデメリットもあります。

サンルーム設置の物件

サンルームを作る場合も増築とされる場合があります。

サンルームは簡易的なレベルの物と床面積に入れなければならないレベルの物がありますが、後者は確認申請が必要です。ここで注意しなければならないのが防火の問題。敷地には延焼防止のために防火地域が設定されていますが、サンルームには防火性能をクリアしない物あり、注意が必要です。

特に構造材がアルミの物は注意が必要で、物件購入の前には法的に問題が無かったかの確認が非常に大切になります。

また、サンルームによっては屋根材がポリカーボネイトなどを使っているケースも多いです。素材の面で注意が必要になるでしょう。

地下室付き物件

地下室の魅力は何と言っても防音性です。建物の地上部分に防音スペースを作るよりも、安くて広いスペースの確保が可能。ですから、大きなボリュームでの音楽鑑賞、カラオケ、ドラムなどの様な大きな音のする楽器演奏に向いています。

ただし、地下室の設置はコストが掛かる点、結露が発生しやすい点などがあり、室内の快適性を保つための工夫が必要。購入の際には十分に気を付ける必要があります。

ロフト付き物件

ロフトは収納やユーティリティースペースとして、様々な用途に活用が可能です。しかし、ロフトは意外に多くの制限を受けます。

ロフトは基本的には物置の扱い。そのため、広さや高さなど多くの制限があり、クリアしなければロフトと認められません。

ですから、元々あったロフトでは無く、増築されたロフトであれば、どの様な仕様で造られているかの確認をしなければなりません。

バルコニーの設置・拡張

バルコニーを設置する増築、あるいは拡張する増築があります。洗濯物干場が欲しいなどと言った理由で造られます。

ただ、バルコニーは床面積や防火の問題が出て来るので、状況によっては確認申請をしなければなりません。特に、アルミ製の物は防火の問題が出やすいので、注意が必要になるでしょう。

不動産投資としての増築物件のメリット

この様に、増築物件には様々なパターンがあります。

メリット

では、増築物件にはどの様なメリットがあるのでしょうか。

代表的な物を挙げてみましょう。

客付けで有利になる

増築物件は一般的に便利な物件が多いです。床が広かったり物置のスペースが大きかったりと、メリットが多いからです。そのため、不動産投資家の立場からすれば「客付けで有利」となります。

不動産経営においては入居者に快適な住環境を提供することが至上の課題。周辺地域の他物件よりもセールスポイントを前面に出さなければなりません。

その点、増築物件であれば「他より広い」などのアピールが出来る様になり、大きな戦力になります。

利回りアップが期待出来る

増築物件は便利なので基本的には魅力的です。室内が広いことが多いので、内覧者を魅了することでしょう。

そのため、家賃を周囲の物件よりも上げることも可能です。つまり、収益性を上げて、利回りをアップさせることも期待出来るのです。

ちなみに、増築物件でも築年数が経っていれば、それだけ取得コストを抑えることが可能。利回りアップに更に有利になります。

投資用不動産の増築物件のデメリットには何があるか

この様に、投資家から見るならば増築物件には大きなメリットが見えます。

デメリット

しかし、増築物件はメリットだけではありません。やはりデメリットもあるのです。

ここでは増築物件のリスクを挙げてみましょう。

違法建築のリスクがある

建築物は建築基準法をはじめ、様々な法的な制限の元に造られています。耐震性にしろ防火性にしろ、それらの法規制の元にあるからこそ安全性が確保されているのです。

それでは増築物件はどうかと言うと、必ずしも適合しているとは限りません。と言うのも、増築は建築士の関与無しで造られる場合もあるからです。

例えばDIYの達人。彼らは日曜大工のレベルを超え、居室の建設までやってのけます。しかし、その建築は名人クラスと言っても、法的な制限を無視した物も少なくないのです。

安全性に問題があるケースがある

建築物は様々な規定の基に造られています。耐震性、防火性、耐風圧など、多くの規準をクリアしているのです。

さて、増築物件はその様な規制・規準を順守しているとは限りません。先に挙げた様にDIYでの施工もあり得るからです。そして、その様な場合は技術的な検証があるとは限りません。技術面での法規制に適合しないケースも大いにあるのです。

当然ながら、その様な物件は安全性に問題が出て来ます。壁を壊しているならば、あるいは階数を増やしているならば、地震などの災害にも弱くなることがあるのです。

未登記の危険性がある

増築物件は未登記であるケースがあります。これは違法です。知らずに買うと、様々な点で弊害を被ることになります。

建物を増築する場合には登記が必要で、法的な義務があります。増築時には建物の登記上の面積を修正しなければなりません。登記には図面の作成を含めた手続きが必要で、土地家屋調査士に頼むことになります。

尚、10㎡未満の改装は確認申請の義務は免除になる場合がありますが、登記が免除になる訳ではありません。確認申請の義務と登記の義務は混同されがちですので、注意が必要です。

ローンが組みにくい場合がある

増築の物件は構造上の問題や違法性のリスクなど、問題をいくつも抱えるので、銀行も良い顔はしません。つまり、ローンが組みにくくなるのです。

そのため、仮に増築物件を買ったにしても、その後での売却が難しくなることもあります。と言うのも、投資用物件の売却先は基本的には別の不動産投資家で、ローンを組んで購入します。ローンが組みにくいならば売買そのものが怪しくなってしまうのです。

投資用の増築物件購入の注意点

この様に、増築物件には利回りが期待出来るなどの大きなメリットがある一方で、法的な問題など、様々なハードルが存在します。

投資用の増築物件購入の注意点

しかし、利回りを追求するならば、やはり増築物件は魅力的です。では購入に当たっては、どの様な点に注意したら良いのでしょうか。

ここでは増築物件購入の際の代表的な注意点を挙げてみます。

構造的に問題が無いか

建物は基本的には改造すると構造的に何らかの影響が出る物です。

例えば、建物の脇に増築するならば壁の量が変わるので耐震性に影響が出るでしょうし、2階を3階に変えるならば建物の重量が変わるため、やはり強度に影響が現れます。

また、ロフトを作った場合には火災時の避難などにも影響が出るかも知れません。サンルームは防火の問題も出て来ます。

この様な課題があるため、増築物件を購入する時には、構造的なチェックが非常に大切になります。入居者に便利な居住空間を提供することが不動産オーナーに求められますが、安全性の確保も必須です。物件のチェックはしっかりと行いましょう。

違法建築となっていないか

建築物は様々な法的制限を受けています。仮に、違法であったりすると、安全性に問題が出るだけでなく、銀行融資や相続などにも影響を及ぼすことがあり、取引がスムーズに行きません。

ですから、増築物件を購入する場合には、法令への適合性の確認が非常に大切です。

ちなみに、容積率を無視した増築は気付きやすいのですが、防火地域の確認は案外気付かれない場合があります。トータル的に漏れの無いチェックが重要です。

建築確認を受けた物件か

建築物は自治体によって確認されなければなりません。そのために確認申請が必要なのですが、増築に当たっては確認申請が必要な物と必要では無い物があります。

増築の場合には10㎡以上であれば確認申請が必要です。

しかし、ケースにもよりますが、確認申請をせずに建て増す場合も無い訳ではありません。つまり、行政による確認が無いままで使われている物件もあるのです。

当然ながら、この様な物件は購入するべきではありません。未確認である物件はトラブルを避ける意味でも敬遠するのが得策です。

登記はされているか

前述の様に、建物を増築した場合には登記をする必要があります。

しかし、物件にもよりますが、未登記のままで使用されている物も無い訳ではありません。増築登記には図面の作成など、煩雑な手続きが必要なので、嫌がられることもあるのです。

また、確認申請が必要無いから登記の必要も無い…と思い込んで、未登記であるケースもあるのです。

ですから、購入の話があった段階で登記の状況を確認しなければなりません。登記事項の確認は確かに面倒ですが、後々に困ることの無い様に、忘れずにチェックしましょう。

ローンは組めるか

前述の通り、不動産投資家の多くはローンを利用して事業をしていますので、ローンが組めないことは大きな問題です。増築物件はローンが厳しいこともあるのですが、それでも可能性が無い訳ではありません。しっかりと確認しましょう。

尚、物件をキャッシュで買えば、購入の点では問題が無いかも知れませんが、売却の時に困ることにもなり得ます。最初の段階でチェックをしっかりしましょう。

まとめ

不動産の増築について取り上げました。

増築物件のメリットが再確認出来たことと思います。しかし、その一方で、増築によって発生し得る問題なども分かったことでしょう。

それと同時に、増築物件の難しさに気が付いた人もいることとも思います。いずれにせよ、増築物件は大きなメリットと危険なリスクを併せ持つ物件です。購入は十分に気を付けましょう。

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清水みち代

関東在住の30代女性。 生保代理店で窓口営業に従事していましたが、コロナの影響で休業中。 自宅にいる時間に資格取得に目覚め、通関士、宅地建物取引主任者、FP2級、総合旅行業務取扱管理者の各資格を取得。 将来の目標は、北海道での「田舎暮らし」。

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