経済学は文系の学問とカテゴライズされていますが、これほど数字を扱う文系の学問はそうそう無いと思われます。銀行の資料を見ると住宅ローンの金利はアッサリとは紹介されますが、実際に掛かる利子の額を考えるなら、緻密な計算の痕跡が見えて来るからです。
それでは投資信託はと言うと、これも実に緻密な計算をベースにして成立しています。実際、投資信託の資料を見るならば、多くの聞き慣れない数値の記載に気が付くことでしょう。要は、それほど多くの計算が裏に隠れているのです。
さて、投資ビジネスの重要な計算の1つに「複利」があります。複利は将来の資産にも関わるので非常に重要です。
そして、ここでは投資信託の計算方法、特に複利の考え方を取り上げてみたいと思います。
もくじ
投資信託の複利について
複利は銀行の預金をはじめ、様々な場面で出て来る用語です。ですから、預金の利子のシステムを知る上では大切とも言えます。しかし、複利について明確な回答が出来る人は少数派では無いのでしょうか。
そこで、ここでは複利の計算を確認して行きましょう。
単利と複利
一般に預金や他の金融商品には利子が付きます。証券会社の他にも銀行や保険会社などで金融商品を扱いますが、利子はどれにも発生する物です。
ただし、利子の付き方には2つの種類があります。それが「単利」と「複利」です。
使われている例としては、単利が税金などの銀行の預金の一部の利子の付き方です。例えば定期預金などは一定の期間が単利で利子が付き、その期間が終わった後に複利で利子が付くイメージとなります。
その一方で複利は住宅ローンなどで使われます。住宅ローンはフラット35の様に返済額が一定の物がありますが、元金と利子の配分を見るならば、最初の返済は利子が多く、元金の返済は後半になります。ですから、最初の段階で利益を確定してます。更には「見えにくい複利」とでも言えそうな銀行優先の計算にしているのです。
利子が利子を呼ぶ
ここで単利と複利を比較してみましょう。
この2つは似ている様でいて完全に計算が違います。
まず単利ですが、これは元本に対してのパーセンテージで利子が決まります。そして、時間が経っても利子の発生は変わりません。つまり、きれいな比例関係となるのです。
しかし、複利は異なります。利子が付くと、その利子にも更に利子が付くのです。まさに「利子が利子を呼ぶ」とも言える計算なのです。
ですから、利子はまさに雪だるま式に増えます。先に挙げた住宅ローンにも、これは当てはまり、見えにくいながらも雪だるまが隠れているのです。
ちなみに、その雪だるまの大きくなるスピードが利率に掛かって来ると言えます。利率が1%と1.5%では若干の差にしか見えないかも知れませんが、雪だるまの出来るスピードが違って来るのです。
投資信託の利子の付き方
銀行の預金は複利が一般的です。しかし金融商品によっては違う物もあります。
さて、投資信託の利子の付き方は複利の様でありながら、実は少し異なります。と言うのも、住宅ローンの様に利子が最初から決まっている訳では無いからです。
投資信託の収益は基本的には基準価額と分配金から決まります。
まずは基準価額ですが、決まるのは1日に1回です。そして、基準価額の決まり方はその日の市況などによって異なります。1万円に対して100円上がる日もありますし、150円の場合もあるのです。また、下がる場合もあります。ある日は50円値下がりするかも知れませんし、40円であるかも知れません。
また、分配金も決算の度に変わります。毎月決算が行われる投資信託では、ある月が100円で決まるかも知れませんし、別な月は200円で決まるかも知れないのです。
そして、これらの組み合わせは毎回の様に変わります。銀行などの利子の付き方よりも複雑なのです。
知っておきたい複利計算の方法
それでは、実際の複利計算はどの様になるのでしょうか。例を挙げてみましょう。
単利と複利の計算
まずは単利を挙げましょう。
前述の様に、単利は元金に対するパーセンテージで決まります。
例えば、先に挙げた様な1%の利子で考えて見ると10000円に毎年1%の場合は
- 最初の年:10000円+100円=10100円(元金10000円の1%が利子)
- 2年目:10100円+100円=10200円(元金10000円の1%の利子)
- 3年目:10200円+100円=10300円(元金10000円の1%の利子)
- 4年目:10300円+100円=10400円(元金10000円の1%の利子)
- 5年目:10400円+100円=10500円(元金10000円の1%の利子)
と言う具合に利子が付いて行きます。ここで気を付けなければならないのが、利子はあくまでも元金に対するパーセンテージと言う点です。
その一方で、複利は利子に利子が付きますから、下記の様に利子が付きます。
- 最初の年:10000円+100円=10100円(元金10000円の1%が利子)
- 2年目:10100円+101円=10201円(前年トータルの1%の利子)
- 3年目:10201円+102円=10303円(前年トータルの1%の利子)
- 4年目:10303円+103円=10405円(元金トータルの1%の利子)
- 5年目:10405円+104円=10505円(元金トータルの1%の利子)
この様に、複利の方が利子の額が多くなります。そして、住宅ローンなどは元金が数千万円、期間が35年レベルになるため、利子は相当な額に上ります。この部分は知っているかどうかで、かなり違います。
投資信託の場合
投資信託の場合は前述の通り、銀行の複利計算とは異なります。と言うのも基準価額の変動と分配金の変動が組み合わされるからです。
例えば、分配金が右肩上がりの動きをする場合には
- 最初の年:10000円+300円(基準価額が300円の上昇)
- 2年目:10300円+100円=10400円(基準価額が100円の上昇)
- 3年目:10400円+50円=10450円(基準価額が50円の上昇)
- 4年目:10450円+150円=10600円 (基準価額が150円の上昇)
- 5年目:10600円+200円=10800円 (基準価額が200円の上昇)
となります。
さて、投資信託には分配金が付きます。仮に200円が付いたとすると
- 最初の年:10000円+300円+200円=10500円
- 2年目:10500円+100円+200円=10800円
- 3年目:10800円+50円+200円=11050円
- 4年目:11050円+150円+200円=11400円
- 5年目:11400円+200円+200=11800円
となります。この様に、前述の複利とは違って来るのです。
ただし、分配金も実際には変動しますし税金も掛かります。計算は簡単では無いのです。
複利効果の出る投資信託とはどんなものがあるのか?
この様に、投資信託の複利は実際の複利計算とは異なります。しかし、波に乗れば実際の複利計算よりも儲けは多くなる可能性もあります。
では、理想的な投資信託の複利計算はどの様な上がり方そするのでしょうか。
基準価額
基準価額は右肩上がりであることが望ましいです。と言うのも、基準価額の右肩上がりは評価額の右肩上がりでもあるからです。基準価額は毎日違うので、毎日右肩上がりになるとは限りませんが、例えば半年、あるいは1年の様な期間で右肩上がりになるのであれば、基準価額もそれだけ上向き、評価額も上がります。
これは複利効果の出現とは言えませんが、利益を求める上では望ましいことです。
ちなみに、基準価額を決めるのは市況やリスクの発現です。例えば景気全体が上向くならば基準価額も上がるでしょう。その一方で、戦争や自然災害などで経済状況が混乱すると、それだけ基準価額をも下げてしまいます。
再投資について
投資信託には分配金があり、扱いが2種類あります。つまり受け取る場合と再投資する場合です。
受け取るのは、決算の際に決められた分配金を税金を納めた上で受け取ること。コンスタントに資金が入って来るので、財布の様に使えます。
さて、再投資ですが、これは入って来た分配金を再度投資に回すことです。ですから、分配金の発生の度に保有する口数が増えるので、それだけ複利の様に評価額が増えるのです。
分配金無しの投資信託
ところで、分配金には少し困った点があります。それは税金が発生する点です。投資信託は分配金にしろ売却益にしろ、結構な税金が発生するのです。
そして、これは分配金の再投資でも掛かります。と言うのも、分配金は再投資するのであっても「一旦受け取った」とされるからです。
しかし、投資信託には分配金そのものが無い物もあります。その場合は税金も発生しません。
ですから、分配金が無い物を選べば、それだけ多くの複利効果を生み、資産を増やすことが可能なのです。
複利の計算が出来ると有利になること
この様に、投資信託の計算を見るならば様々な点が分かって来ます。
では、計算を理解するならば、どの様なメリットがあるのでしょうか。
将来が見やすくなる
投資信託の計算が分かるメリットの第1は「将来が見やすくなる点」です。
前述の様に、投資信託は基準価額の変動などや分配金の状況など、様々な条件が重なって決まりますが、その内のいくつかでも分かれば将来も少しずつ見えて来ます。
例えば、純資産額が増えて基準価額が増えない現象が起きた場合などはトータルの口数が増えたことを示唆します。そして、口数が増えたことは投資信託に人気が出たことを意味します。
また、口数が増えることは投資先の人気が出たことも意味します。そうすると事業そのものも良くなる可能性が上がり、更に大きな利益が期待出来る様になるのです。
計画を立てやすくなる
投資ビジネスは計画性が大切。そして、これは投資信託にも言えることです。投資信託にも運用期間や方針があるので、ある程度にしろ計画をしないと効率的な投資が難しくなるのです。
しかし、投資ビジネスの計画は簡単ではありません。と言うのも、市況の変動が簡単では無いからです。確かに海外の株式市場などの影響は懸念されます。しかし、国内の状況は依然としてブラックボックスに包まれています。
ところが、計算を心得るならば、状況が変わります。計算が分かれば、投資信託の重要な数字が導き出せるから。投資信託の計算を覚えておくことは、実は意義深いことなのです。
実物不動産投資と不動産投資信託の違い
ここで、実物不動産投資と不動産投資信託の違いを再考してみましょう。
一般の実物不動産投資と違い、不動産投資信託は不動産投資のプロが運用する物。様々な点が異なります。また、投資を取り巻く環境も違います。
実物不動産投資と不動産投資信託との違い
実物不動産投資はマンションやアパートなどの家賃収入で成立する投資ビジネスです。家賃収入は物件の評価だけでなく、入居率によっても異なります。また、不動産投資の場合には投資額も利回りの決定要因に。物件の価格が下がれば利回りの上昇することから中古が好まれます。
この様に、実物不動産投資の収入は物件の状態や入居率で異なるので、複利の効果はあまり期待出来ません。
その一方で、不動産投資信託は投資対象こそ不動産ですが、基準価額や分配金によって収益が異なります。利益の再投資が可能なので、複利効果を出すことが可能なのです。
尚、実物不動産投資の場合、利回りはある程度は計算可能です。ただし、空室の発生率などは計算で求めることは出来ないので、ある程度の概算の数値が入れられて計算します。
異なる変動要因
実物不動産投資と不動産投資信託では、変動要因も異なります。
例えば、実物不動産投資は市況や金利の影響を比較的受けません。仮に市況が変動したとしても、入居率にダイレクトに影響することは無いからです。確かに、市況の変動により入居者の支払い能力が落ちることはあるでしょうが、仮にそうであったとしても、大勢が退去をすることは考えにくいです。
しかし、不動産投資信託の場合は市況の影響も受けてしまいます。変動要因は大きく異なるのです。特に、海外の不動産に投資する場合は為替などの影響も大きく受けてしまいます。新興国などの不動産の場合は政情不安定な場合もあり、その国の国内情勢にも気を配らなければならないのです。
まとめ
投資信託の計算について取り上げました。計算方法の理解が進み、収益の全体像なども見えて来たことと思います。また、計算の重要性も見えたことでしょう。
いずれにしても、投資信託も数字を理解することで全体が異なります。しっかり把握した上で投資をスタートさせましょう。
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