投資用物件は新築よりも中古の方が利回りが高くなるために投資家から好まれます。しかし、投資家によっては、投資費用のメリットばかりに目が行って、物件の魅力についての検討を忘れている傾向も見て取れます。
つまりは老朽化を考えるのを忘れる傾向です。
物件の魅力よりも投資金額を優先させ、更には老朽化を放置する投資手法…これは本当に良いのでしょうか。
そこで、ここでは投資用物件の老朽化に焦点を当て、それが果たして容認すべきかについて考えます。
もくじ
物件が老朽化すると
最初に物件が老朽化すると、どの様な現象が発生するかについて再確認してみましょう。
美観の劣化
建物が老朽化すると美観が悪くなります。外側は汚れてしまって古ぼけてしまい、内装も日に焼けて古びてしまうのです。
さて、この老朽化は築年数に大体比例していると言えます。古くなれば古くなるほど進行してしまうのです。外観の場合などは単に汚れてしまうだけでなく、塗装は剥がれるかも知れませんし、コケが生えるかもしれません。部分によってはヒビが入ることもあるでしょう。
そして、建物の印象が悪くなって行きます。新築の時は立派だった物件がだんだん古くなって行き、やがて気分が悪くなる印象しか持てない物件となってしまうのです。
故障確立のアップ
その一方、設備の面を考える場合、それは美観の問題だけに留まらなくなってしまいます。故障確率がアップしてしまうのです。
一般に住宅設備の耐用年数は10年程度が設定されています。これは確かに壊れて使えなくなるまでの期間ではありませんが、故障確率は増えてしまう期間なのです。
また、住宅設備は基本的に製造物責任をメーカーが負いますが、この期間が10年で終えてしまいます。この点を考えても耐用年数は10年と認識すべきでしょう。
客付け力の低下
物件が古びてしまい、故障確立も多くなってしまうと客付け力も低下してしまいます。
と言うのも、外観にしろ内装にしろ印象が悪くなり、入居者を契約に持っていく魅力が薄れてしまうからです。確かに、それに見合う程に家賃を下げれば、物件の客付け力も上がるかも知れません。しかし、あまり下げ過ぎるとビジネスそのものが成立しなくなってしまいます。家賃を下げるにしても限界はあるのです。
そして、その限界の家賃を設定しても入居者から敬遠されてしまいます。客付け力はそこまで低下してしまうのです。
空室の発生と慢性化
客付け力が低下すると空室が発生します。美観も設備の状態も良くないので内観の時に契約は破談になってしまいます。また、設備の故障が続くと入居者に退去されてしまいます。そして、次の入居者が入ることが無く、空室の状態が続くケースも。空室の慢性化です。
いずれにしても不動産投資の根幹とも言える家賃収入そのものが期待出来なくなってしまい、事業そのものが座礁してしまいます。当然ながらキャッシュフローは壊滅的になり、銀行からも相手にされなくなってしまいます。
「負動産」になることも
その様な物件になると収益性は見込めません。しかし、物件を持っていれば固定資産税は発生してしまいます。しかも、不動産は破棄出来る物では無く、売却などが出来ない限り手元に残ってしまいます。つまり、「負動産」の状態で手元に残ってしまうのです。 しかし、不動産はボロボロになったとしても管理は必要。放置してしまうと猫などが棲み付いてしまい、近隣に迷惑を掛け得るのです。収益も上がらない、それでいて固定資産税と管理費が掛かる物件。それはもう目も当てられなくなってしまいます。
老朽化は容認するべきか
この様に、不動産の老朽化の放置はロクなことがありません。
しかし、中古物件は利回りの面で旨味が多いのも事実。これはどの様に考えるべきでしょうか。
ある程度の老朽化は容認してもOK
老朽化を考える上でまず考えるべきことは、不動産の価格の動きと家賃の低下についてです。
まず、不動産の値段ですが、最初の段階でガクッと下がります。と言うのも一旦誰かが住んだら新築は中古になってしまうから。築浅であっても中古は中古なのです。そして、中古になってガクッと下がった後には緩やかに価格を落として行きます。
そして家賃の低下。これは新築から中古になったとしても、物件の価格までには落ちません。売買価格が仮に30%落ちたとしても、家賃は30%も下がらないことでしょう。この差は利回りになって現れます。
それでは、老朽化についてはどうでしょうか。
これは「ある程度は容認してもOK」と考えるべきでしょう。と言うのも、築浅の場合は劣化も進んでいませんし、設備も耐用年数まで行ってないからです。
容認するレベルの判断はバランス感覚が重要
ここで問題になるのが「どこまで容認するのか」となるでしょう。あまりにも放置し過ぎるとボロボロになってしまうし、早過ぎるリフォームはキャッシュフローを圧迫するからです。バランス感覚が必要なのです。
それでは、どのくらいまでが容認されるべきでしょうか。
この回答はいくつか考えられるのですが、「10年」を1つの目安と捉えるべきでしょう。
と言うのも、住宅設備の耐用年数が10年と捉えるべきですし、外装の塗装も10年が目安だからです。
ただし、壁紙や畳に関しては10年も経たずに劣化が進んでしまうこともあります。これらはケースバイケース。最終的には部分に分けて、都度判断すべきでしょう。
老朽化を防ぐ手段
老朽化はある程度は容認されますが、それ以降になると何等かの対処が必要です。
では、どの様な対処が必要なのでしょうか。
塗装などによる美観の回復
まず建物の外装。これは第1の手段が再塗装です。再塗装によって美観も回復し、印象もキープ出来ます。
さて、建物の再塗装は美観の問題だけではありません。建物そのものの耐用年数にも影響し得るので非常に大切なのです。と言うのも、塗装は建物内への水の侵入を防ぐからです。
仮に外装の塗装をせずに放置するならば、外壁材の継ぎ目が切れてしまい、更には反りが発生してしまいます。そして水が侵入。内部の部材を腐食させてしまうのです。
しかし、塗装をするならば、これらの不具合を回避出来ます。美観を回復させると共に耐用年数を延ばします。
設備の交換
次に挙げられるのが設備の交換です。先にも挙げた通り、設備には耐用年数があり、故障確率が上がってしまうからです。
さて、住宅設備の交換は単に故障発生の回避だけではありません。その他にも効果があるのです。それは「機能の追加」です。
住宅設備の進歩は日進月歩。毎年の様に高機能化して行きます。また、コストパフォーマンスも良くなります。…高性能な設備が低価格で買える様になるのです。そして、これは内覧に来る人の好印象を獲得します。つまり、客付け力アップに繋がるのです。内装リフォーム
第3は内装リフォーム。これも重要な意味を持ちます。内装の美しさは印象を良くするからです。
この好印象になる要因の1つが「明るさ」です。そして、部屋の明るさは壁紙の状態によって変わります。と言うのも、窓から入った光が壁紙で反射して室内を照らすから。そして、この反射の状態が良くない。汚れている場合には、どうしても暗くなってしまうのです。
共用部分の改装
共用部分の改装も必要です。いくら外装と室内を変えたとしても、廊下やエントランスがボロボロだと説得力に欠けてしまうからです。
特にエントランスは「建物の顔」とも言える部分。改装して美観をキープするのは重要なのです。
ただし、共用部分の改装は多額の資金が必要です。最初から計画に入れておくことが大切となるでしょう。
老朽化した物件の改装のポイント
前述の通り、物件の老朽化は放置し過ぎる物では無く、ある程度経ったら対処が必要です。
しかし、対処と言っても考え無しにすることは得策ではありません。やはり計画性が大切です。
では、どの様な点に気を付けて計画を立てるべきでしょうか。
入居者の生活を考える
第1に挙げられるのが「入居者の生活を考える」ことです。と言うのも、家賃は入居者の生活の満足があってこそ入るからです。
仮に物件での生活に不満があるならば退去リスクが出て来ます。仮に退去されてしまうと家賃収入が減ってしまい、利回りも落ち込んでしまうのです。
入居者の生活の質を考えるならば、物件をきれいに整えて、しかも家賃を上げないことが重要です。そうするならば入居者の納得を勝ち取ることが出来る様になり、物件も埋まります。
費用対効果を考える
設備投資をする場合には費用対効果を考えることが鉄則です。費用対効果を考えないならば、不要なコストが発生してしまいますし、良い設備を設置することも出来ないからです。
さて、改装を考える際に覚えておきたいことがあります。設備にはグレードがある点です。
多くの住宅設備は高級・中級・普及の3つのグレードを持っています。高級になるほど性能も良くなりますし値段も高くなります。反対に普及になるならばコスト重視になって機能が削られます。
そして、これを上手に選ぶならば効果の高い改装が可能です。グレードの検討は費用対効果を考える上での足掛かりとなるからです。コストと仕様のバランスが取れたリフォームとなることでしょう。
老朽化し過ぎた物件購入のリスク
さて、老朽化のシナリオは前述の通りですが、巷の不動産投資情報を見るならば「ボロ物件を購入して改装して利回りを生み出す」手法が見られます。この手法は確かに成立するでしょう…が、万人が可能であるとは限りません。老朽化し過ぎた物件を購入するには、やはり大きなリスクを背負うことになるのです。
そこで、ここでは老朽化し過ぎた物件の持つ潜在的なリスクを挙げてみたいと思います。
建物の基本的性能が落ち過ぎていることもある
建築物には様々な性能があります。耐震性、耐風圧、防火、断熱、防音、省エネなどです。
これらの性能は築年数と共に落ちてしまっているケース、或いは古い規格で建てられたために現状では既存不適格になっている場合があります。いずれにしても現代の建物としてはマッチしません。
確かにこれらの性能アップはリフォームで対処が可能でしょう。耐震リフォームや断熱リフォームは一般的に行われています。
しかし、その費用対効果を考えるならば採算割れする可能性も。ビジネスとしての成立が危うくなることも考えられるのです。
基本構造が怪しいことも
建物は古くなると様々なリスクが新たに出て来る物です。腐食やシロアリの害などは典型的な不具合と言えるでしょう。
そして、これらの被害は建物の基本構造を低下させることにも繋がります。土台や柱の部分をシロアリに荒らされるならば部材の強度は著しく落ちてしまいます。また、シロアリに食われない鉄骨系の建物も腐食してしまえば構造強度が落ちてしまうことでしょう。
確かに数十年前の建物であったとしても、建築物は非常に高い基準で建てられていて、実力値も高いと言えます。しかし、劣化のスピードは未知数。構造が怪しくなることもあり得るのです。
リフォームの制限が多い
老朽化し過ぎた物件は確かに改装すればよみがえるのですが、物件の構造としてリフォームに制限が発生することもあります。
例えば、今のキッチンは食洗機やIH化など、先端技術が非常に幅広く応用されているのですが、これらを動かすのには電力が必要。しかし、電力のアップは簡単ではありません。マンションなどの場合には電源設備の交換などもありますし、それを実行するためには総会の承認などが必要にもなります。簡単ではないのです。
まとめ
投資用物件の老朽化について取り上げてみました。老朽化のある程度の容認はあっても適切なタイミングで対応が必要なことが把握出来たことと思います。また、対処の手段もイメージ出来たことでしょう。
投資費用を抑える意味では老朽化した物件の魅力は無視したくはありません。しかし、それバランスが重要。費用対効果を検討しながら堅実に検討しましょう。
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