FPに聞いてみた

不動産投資で購入した物件はいつが売り時?売却時の注意点も徹底解説

不動産投資で購入した物件はいつが売り時?売却時の注意点も徹底解説

「不動産を売るのに最適な売り時っていつ?」

「投資用不動産を少しでも高く売るコツを知りたい」

「東京オリンピックとコロナが与えた不動産の影響はどれくらいあるの?」

とお悩みではありませんか?

今回の記事では「不動産投資用に購入した物件の売り時」について徹底的に解説いたします。

投資用不動産を売却する際の注意点についても詳しくご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

不動産投資は【家賃】の収入はもちろんなのですが、最終的な売却を見越して購入、運営していく投資家も多いのです。適切な売却は意外と難しいので、FPの方に適切な売却について伺ってみました。

東京オリンピックとコロナは不動産投資にどんな影響を与えたのか?

東京オリンピックと新型コロナウイルスが不動産投資にどんな影響を与えたのか知りたい方も多いでしょう。

東京オリンピックとコロナは不動産投資にどんな影響を与えたのか?

まずは「東京オリンピック」と「新型コロナウイルス」の2つの出来事が不動産投資に与えた影響に関して考察します。

  • ● 「東京オリンピック」が不動産投資に与えた影響
  • ● 「新型コロナウイルス」が不動産投資に与えた影響

「東京オリンピック」が不動産投資に与えた影響

実は東京オリンピック開催前後(2021年7月23日〜8月8日)で不動産価格にはほとんど変化がありません。

これは「公益財団法人 東日本不動産流通機構(2021年 7~9 月期の不動産流通市場の動向)サマリレポート(※1)」の結果より確認できます。

オリンピック開催後の不動産価格下落のリスクが懸念されていましたが、都心部の賃貸需要は未だに根強いため、不動産の売却価格にはほとんど影響がありません。

むしろ後述する「新型コロナウイルスの影響」の方がインパクトが強いと言えます。

(※1)公益財団法人 東日本不動産流通機構「2021年 7~9 月期の不動産流通市場の動向」サマリレポート

「新型コロナウイルス」が不動産投資に与えた影響

新型コロナウイルスによって「商業用テナント系の不動産」は影響が出ましたが、「マンションやアパートなどの居住系不動産」は大きな影響は受けていません。

なぜなら新型コロナウイルスによって多くの企業が自粛を余儀なくされ、オフィスを縮小する会社が増えたから。

特に「飲食系、アパレル系、旅行代理店系」の企業は大企業でも撤退が続いており、商業用テナントの需要はしばらく縮小傾向が続くことが予想されます。

その一方で「マンションやアパートなどの居住系不動産」の需要はほとんど影響を受けていません。

今はテレワークを推奨する企業が増えていますが、まだまだ週に数回の出勤が必須であることも多いためだと推測されます。

ただし今後は「コロナに対してネガティブなイメージを持っている投資家が物件を売りに出す」ことが増えてくるかもしれません。

市場に売り物件が増えると不動産価格は下落していくため、「物件を購入して事業を拡大したい投資家」にとっては良質な不動産を安く購入できるチャンスが増えていくでしょう。

不動産投資用に購入した物件はいつ売り時になるのか?

ここからは収益用不動産を売る適切なタイミングについて7つの視点で解説します。

不動産投資用に購入した物件はいつ売り時になるのか?
  • ● 建物の減価償却が終わるタイミング
  • ● デッドクロスの発生
  • ● 路線価が上昇している
  • ● 大規模修繕の前
  • ● 不動産の築年数が20年になる前
  • ● 金利が低い時
  • ● 節税対策の12月

売り時①|建物の減価償却が終わるタイミング

物件を売却するなら「建物の減価償却(※2)が終わるタイミング」がおすすめです。

なぜなら、建物の減価償却が終了してしまうと、経費が減ってしまう分だけ支払う税金が上がってしまうから。

減価償却費は建物の劣化を費用として計上することができ、実際には費用を支払わずに税金を安くできるのが大きなメリット。

ちなみに建物の減価償却ができる期間は建物構造の耐用年数として決まっており、「木造は22年」、「鉄筋コンクリート造は47年」もの間減価償却することが認められています。

土地は劣化することがないため、減価償却による費用計上は認められていません。

(※2)不動産の取得にかかった費用の全額をその年の費用とせずに、建物の耐用年数に応じて配分して費用として計上すること。

売り時②|デッドクロスの発生

「デッドクロス(※3)」が発生した場合も物件を売却するタイミングとして考える必要があります。

なぜならデッドクロスが発生してしまうと、帳簿上では利益が出ているにも関わらず支払う税金が高くなってしまうため、不動産投資の資金繰りが悪化してしまうから。

物件購入時に金融機関からローンを組んだ場合、毎月の返済は「元金(借りたお金)」と「利息」を合算した金額を支払っています。

実はローンの「利息部分」は経費として計上可能ですが、「元金部分」は経費として計上することができません。

よって「経費にできない元金>経費にできる減価償却費」の状態(デッドクロス)になると、「経費として計上することができない支出」が発生してしまいます。

すると税引前の不動産収支に変化がなくても所得税が上がってしまうため、税引後に手元に残る現金が少なくなってしまうため注意が必要です。

このようにデッドクロスが発生してしまうと、不動産投資として収益性が著しく悪化してしまうため、物件の売却を検討することをおすすめします。

(※3)ローンの元金返済額が減価償却費を上回ってしまう状態のこと。

売り時③|路線価が上昇している

路線価(※4)が上昇している場合も不動産を売却するのにおすすめなタイミングです。

なぜなら路線価は不動産の土地価格を決める重要な指標であり、路線価が上昇していれば不動産を高く売却できる可能性が高いから。

路線価とは国税庁が設定している公的な土地価格の一種であり、特に市街地にある土地は路線価をベースに決定されることも多いです。

路線価は国税庁のHPで一般公開されているため、不動産の売却を検討しているなら所有している物件の路線価をチェックしておきましょう。

(※4)国税庁が設定している公的な土地の価格の1つであり、主に「相続税評価額」を決定する際に利用される。

参考:https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm

売り時④|建物の大規模修繕の前

「建物の大規模修繕の前」も物件を売却するタイミングの1つとして検討すべきです。

なぜなら屋根の雨漏り対策や外壁塗装の塗り直しなどの建物の大規模修繕をすると、数百万単位の費用が発生して不動産の収益を圧迫してしまうから。

投資用マンションの場合、家賃の一部を修繕積立金として徴収していることが多いですが、築年数が古くなるにつれて修繕積立金の割合を増やす必要があるため、利益と費用のバランスが崩れてしまいがちです。

さらに近年では修繕積立金だけでは修繕費を支払うことができないケースも多く、不足分はオーナー負担となってしまいます。

そのため、大規模修繕をきっかけに「家賃の値上げ」を検討している投資家も非常に多いです。

大規模修繕など多額の費用が発生する前に物件を売却するのも一つの出口戦略として有効となります。

売り時⑤|不動産の築年数が20年になる前

「所有する不動産の築年数が20年になる前」も物件の売り時タイミングの1つとして検討すべきです。

なぜなら「水回りの設備交換」や「外壁塗装の塗り直し」などの時期であるため、多額の費用が発生してしまうから。

また築20年以内の物件であれば金融機関の評価が高くなる傾向があるため、買主が有利な条件でローンを組める可能性が高いのも大きなポイント。

一般的に不動産は年々建物が劣化していくため資産価値が減少していきますが、「築年数20年を目処に価格が横ばいになる」ケースが非常に多いです。

そのため築年数20年を超える不動産は価格下落リスクが非常に少なく、投資家にとってお買い得な物件のため、積極的に購入する投資家が一定数います。

また最近では中古物件を安く購入してリフォームして、新築同様の内装グレードにして家賃を上げて利回りを改善するオーナーも多いです。

売り時⑥|金利が低い時

実は金利が低い時は不動産を売却するのに適しています。

なぜなら金利が低ければ買主が有利な条件でローンを組むことができ、不動産を積極的に購入するから。

日本は2013年のアベノミクスによる金融緩和以降、「住宅ローン」や「不動産投資用ローン」の長低金利が続いている状態です。

不動産の売却を検討しているのであれば、買主が積極的になっている「金利が低い時」に売却することをおすすめします。

売り時⑦|節税対策の12月

不動産を売却したいのであれば、「12月に売却する」ことを目安に売りに出すのもおすすめです。

なぜなら「節税対策として12月に投資用不動産を購入する投資家」がいるから。

不動産投資家が行っている確定申告は「各年の12月締め」で所得や費用を集計して、翌年の2/16〜3/15の期間内に税務署に申告するのがルール。

そして各年の秋頃になると、その年の大まかな所得を把握することができるため、節税対策として投資用不動産を積極的に購入する投資家がいます。

ただし不動産の売買成立には売りに出してから3ヶ月程度は必要であるため、12月に売却するには9月くらいから売買活動を開始するのが理想的です。

不動産投資用物件を売却する際の注意点

不動産投資用の物件を売却する際に注意するべきポイントとして以下の3つをご紹介します。

不動産投資用物件を売却する際の注意点
  • ● 複数の不動産会社に査定依頼する
  • ● 「所有期間5年」を目処に税金が変わる
  • ● どうしても売れない場合は「直接買取」を検討する

注意①|複数の不動産会社に査定依頼をする

売却したい物件の査定をする際は必ず複数の不動産会社に依頼するようにしましょう。

なぜなら不動産会社によって査定額に大きな差が生じる可能性があるから。

自分自身でも類似物件の相場価格を必ずリサーチしておき、不動産会社の査定額と差がある場合は必ず査定額の根拠をヒアリングして、自分が納得する価格で売りに出すようにするのがおすすめです。

また物件の情報だけで価格を決める「机上査定」よりも、実際に物件を見て価格を決める「訪問査定」の方が査定額の信憑性が高くなります。

まずは複数の不動産会社に机上査定で価格を見積もってもらい、その後に信頼できそうな会社に訪問査定を依頼するとスムーズにいくでしょう。

注意②|「所有期間5年」を目処に税金が変わる

不動産を売却するなら「所有期間が5年を経過しているか?」を必ずチェックするようにしましょう。

なぜなら物件の所有期間5年を経過しているかで「不動産譲渡税の税率が大きく変わる」から。

具体的には「所有期間が5年未満の場合で39%(譲渡所得税+住民税)」、「所有期間が5年以上の場合で20%(譲渡所得税+住民税)」であるため約2倍もの差があります。

物件の所有期間は「譲渡した年の1月1日時点」で計算されますが、「物件を所有してから5回お正月を迎えたか?」と考えるとシンプルに所有期間を算出することが可能です。

物件の所有期間の違いによって支払う税金が約2倍も変わるため、売却する際は注意しましょう。

注意③|どうしても売れない場合は直接買取を検討する

物件を売りに出しても売れない場合は「不動産会社に直接買い取ってもらう」ことも検討しましょう。

なぜなら不動産会社に直接買い取ってもらうことができれば、「早く現金化することができ、仲介手数料もかからない」から。

直接買取は買主となる不動産投資家を探す時間も短縮できますし、不動産会社が買主となるため仲介手数料も支払う必要がありません。

ただし直接買取の場合だと「相場の1〜2割程度安くなる傾向がある」ため、物件を高く売却するのは難しいと思った方がいいでしょう。

少しでも早く現金化したい場合は直接買取を出口戦略の一つとして検討するのもおすすめです。

まとめ

今回の記事では「不動産投資用に購入した物件の売り時」について徹底的に解説しました。

物件を売るおすすめのタイミングとして7つご紹介しましたが、特に「減価償却が終わるタイミング」と「デッドクロス」に関しては収支に大きく影響するため、不動産投資家として必ず理解しておきたいポイントです。

もちろん、不動産投資の収支が黒字でうまくいっている場合は、立派な資産であるため物件を所有し続けた方が良いでしょう。

ただし築年数が古くなり、減価償却による費用計上ができなくなるタイミングは必ずやってきます。

物件を売却しようか迷っている投資家の方は、まずは「類似物件の相場のリサーチや路線価をチェックする」ことから始めてみてはいかがでしょうか。

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「難しい専門知識をわかりやすく解説すること」をモットーとしており、実務に基いたノウハウの提供ができるのが強み。 不動産関連の記事だけで「累計100記事以上」の執筆経験があり、ライターと不動産営業マンの二足のわらじで活動中。 【所有資格】 ・宅地建物取引士 ・ファイナンシャルプランニング技能士2級 ・住宅ローンアドバイザー

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