不動産投資を上手に進めるためには入居者の満足度が高くなくてはなりません。仮に入居者の満足度が上がらないと、退去リスクや空室リスクなども発生するからです。
さて、入居者の生活をより良い物にするためには、物件の設備の状態を保つことが必須です。しかし、投資家にもよるでしょうが、設備の状態、とりわけ「故障」について無頓着な人が多いのでは無いかと思われます。
そこで、ここでは住宅設備の故障に焦点を当て、故障の影響や概要、そして注意点などを述べたいと思います。
もくじ
故障しない為に住宅設備の耐用年数を知ろう
建物の耐用年数は非常に長いです。建っている地域の環境などにもよりますが、築50年を超えても十分に使える物件は少なくありません。実際、首都圏の団地などは築古であっても現役です。
しかし、住宅設備はその様には行きません。
では、住宅設備の耐用年数はどの様に考えるべきでしょうか。
設備の耐用年数とは
住宅設備には耐用年数があります。
さて、耐用年数は「故障までの期間」と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。むしろ「機能が十分に発揮出来る期間」と考えるべきでしょう。
例えば給湯器を上げるならば、コントローラーで設定した水温で出るのが正常です。しかし、状態が悪くなると設定温度よりも低い温度で出ることもあり得ます。40℃で設定したのに35℃で出て来る。
これは「機能が十分に発揮できる」とは言い難いです。これによってエネルギー効率が悪くなり、省エネ性などの性能が落ちる可能性があるからです。そして、その時点が「十分な機能が発揮出来ない」…つまり、耐用年数と言えるのです。
ただし、性能が落ちても使用することは可能な場合も多いです。給湯器のお湯が34℃でも32℃でも使い続けることは可能だからです。
では、オーナーとして設備の交換はどの時点で行うべきでしょうか。…これは完全に故障するよりも、耐用年数が切れた段階で検討するのが望ましいと思われます。耐用年数が来ると故障確率も上がります。あらかじめ設備の耐用年数を確認しておくことが大切です。
設備の耐用年数は10年が目安
では、どの時点を耐用年数と考えるべきでしょうか。
これは「10年」を目安と考えるべきでしょう。
と言うのも、多くの設備は10年の耐用年数を目途にして作ってあるからです。実際、設備の取扱説明書を見ると「10年」がキーワードとして出て来ます。
また、後述しますが、設備メーカーの製造物責任は10年で満了します。これにより、設備が原因となる事故はメーカーの責任が免責になり、ユーザーの責任となるのです。
いずれにせよ、説明書、製造物責任、様々な場面で「10年」が謳われています。耐用年数と考えるべきでしょう。
住宅設備に故障が頻発したらどうなるか
では、耐用年数が終わり、設備のパフォーマンスが落ちてしまい、故障が頻発してしまったらどの様な影響が出るでしょうか。
借主の生活に悪影響
第一に考えられるのが「生活への悪影響」です。
快適な生活は設備のパフォーマンスの上に出来上がっているからです。
先の給湯器の例、設定温度の通りの給湯が難しくなると、入浴の快適さも失われるかも知れません。熱い風呂が好きな人にとって、ぬるいお湯しか出ない浴室は快適とは言えないでしょう。また、仮にお湯が突然冷水に変わった場合、不快感しか得られないかも知れません。そして、光熱費も上がってしまいます。
この様に、設備の不具合は生活の質を悪化させます。そして不快感が募って来ると物件への不満にもなり得ます。この状態が続くと退去リスクに結びつくのです。
設備以外の二次被害もあり得る
設備の故障は二次被害もあり得ます。
例えば浴室の排水が上手く行かず、漏水が発生した場合。漏れた水は下の階に落ちてしまい、ひどい場合には家財を汚してしまいます。
また、家財を汚さないまでも、床下や天井裏の部材を腐らせたりする可能性も。そして、部材の腐食が進み、天井の重量を支えきれなくなると天井の落下もあり得ます。
この様に、少しの不具合と見えるアクシデントが大きな事故にも繋がります。耐用年数を考えておくことは非常に大切なのです。
投資物件の火災なども発生し得る
特に電気を使う物は、故障の頻発を放置したならば漏電なども有り得ます。漏電は非常に危険で、火災や感電なども起こり得る状態でもあります。
そのため、可能な限り早急な対応が必要です。
今の不動産では漏電しない様な対策は取られているのですが、雨水の侵入などによって不具合を起こしてしまうことも。やはり注意が必要なのです。
不動産の設備故障の例
では、設備の故障にはどの様な物があるのでしょうか。
ここでは主な住宅設備の故障を挙げてみましょう。
キッチン
キッチンの故障には水まわりの部分の故障とコンロ部分の故障が挙げられます。
水まわり部分としては、水が出にくくなる、あるいは排水が詰まるなどが挙げられるでしょう。また、コンロ部分となると、点火がしにくいなどの故障も挙げられます。
尚、キッチンはガスを扱う部分でもありますので、劣化が進み過ぎてしまうと非常に危険な状態にもなり得ます。不具合が進む前のメンテナンスや交換が必須となるでしょう。
トイレ
トイレの故障は排水や蛇口のトラブルが挙げられます。これは部品劣化による物。また、流してはならない物を流した場合に発生する物が多いです。また、温水洗浄便座の故障なども見られます。
ちなみに、トイレの不具合はちょっとした調整で改善することもあるのですが、放置しすぎると劣化が進んでしまい、更なる不具合も発生し得ます。不具合が発生した段階でチェックするのがベターでしょう。
浴室
浴室の故障は排水や給湯に起因する物が多いです。と言うのも、浴室は石鹸などを多く使い、髪の毛なども流れやすいので、排水部分のトラブル発生が多いのです。また、給湯は耐用年数が決まっていて、使い続けると寿命を迎えてしまいます。
尚、給湯器はガスを扱います。事故は非常に危険であることを覚えておかなければいけません。
洗面台
洗面台も排水や給湯のトラブルが多いです。洗面台も浴室と同様に石鹸を使いますし、髪の毛なども流れやすく、不具合が起こるのです。
換気扇
換気扇は目詰まりや結露、場合によっては漏電のトラブルも発生します。
目詰まりは油汚れやホコリなどによる物、結露は寒暖差によって起こります。そして、厄介なのが漏電です。漏電は水濡れによる物が多く、ケースによってはトラブルが大きくなることもあり得ます。
ちなみに、電気関連のチェックは簡単な物であればプロで無くても出来そうに思えるかも知れませんが、素人の判断だと別なトラブルも発生し得ます。やはりプロに依頼すべきです。
インターホン
インターホンの故障には「室内の親機と玄関の子機の通信が上手く行かない」のが代表的です。原因は断線や機器そのものの故障が考えられ、基本的には交換することになるでしょう。
インターホンの故障で押さえておかなければならないこと、それはインターホンは「通信」だけのツールでは無く「防犯」のツールでもあることです。と言うのも、インターホンは不審者との接触を避ける目的でもあるからです。特に、最近のカメラ付きのインターホンは不審者を威嚇する効果があります。ですから、故障対応は急がなければならないのです。
窓シャッター
窓シャッターは耐久回数が決まっていて、それを超えて使い続け過ぎると、操作が重くなるなどの不具合が発生します。
その場合、世帯にもよりますが「サッシが閉まっているから大丈夫」と判断することも。ただ、仮に窓シャッターを開けたままでいると、窓の防犯性が落ちてしまうので、放置するべきではありません。
窓シャッターは雨戸代わりと考えるより、防犯のためと考えるべきです。早急に故障対応するべきでしょう。
住宅設備故障起因の事故を防ぐために
先にも挙げた通り、設備の故障は大きな二次被害にも繋がります。そのため、設備の故障が進む前に対策を打たなければなりません。
ここでは、設備の故障を防ぐポイントを取り上げてみましょう。
定期的な点検・交換が望ましい
住宅設備はある程度の期間がたった段階でパフォーマンスが落ちる物。その時期を狙って点検や交換をするのが、やはり望ましいと言えます。
耐用年数を過ぎて放置してしまうと、劣化しやすい部分、あるいは負荷の掛かりやすい部分から不具合が進んでしまい、全体の故障に繋がるのです。
設備の点検や交換には費用を伴い、キャッシュフローにも少なからず悪影響を与えますが、退去リスクを避けることも大切です。設備投資と割り切りましょう。
入居者への注意喚起
不動産管理は確かにオーナーの責任です。しかし、設備の管理となると外部からの管理では限界があります。ですから、どうしても入居者に頼らざるを得ません。
例えば、派手な漏水などは外部の管理で気が付くかも知れませんが、配管のパッキン部分からの微妙な漏水はエンドユーザーで無いと分からないからです。
そのため、入居者への注意喚起が重要となります。設備を良い状態で使うためにも入居者の協力を募ることが大切です。
設備故障回避のために押さえておきたいポイント
ここで、設備の故障に関しての押さえておきたいポイントを紹介します。
基本的にはリスク回避の手段となりますが、不動産投資の経営から考えても有用。おすすめ出来る対策です。
火災保険
火災保険は火災発生に対応する保険ですが、火災だけに対応する保険ではありません。他の様々なアクシデントにも対応する便利な手段なのです。
火災保険の適用範囲は非常に広いです。建物だけでなく、キッチンや浴室などの建物に設置させる設備も補償の対象となるのです。
ただし、火災保険の補償は契約によっても異なります。契約はケースバイケースなので、自分に合った範囲で契約を検討しましょう。
製造物責任法
製造物責任法の確認も重要です。
製造物責任は設備の不具合を起因とする損害に対する責任をメーカーが持つと言う物です。例えば浴室の場合、誤って設定温度よりも高い温度のお湯が出てヤケドを負ったとします。
この責任ですが、設備の不具合となり、製造したメーカーが責任を持つことになるのです。仮に損害賠償の話が出た時などは、メーカーに賠償を請求することが可能となります。
ただし、製造物責任法の期限は10年です。その後に事故が起こった場合にはオーナーの責任となります。
ですから、このタイミングで設備を交換するのであれば、オーナーとしてはリスクを回避出来ることとなり、経営上は非常に有利になります。
原状回復ガイドライン
入居者が退去する時には原状回復して返してもらわなければなりません。ただし、原状回復にもガイドラインがあるため、これに準じる必要があります。
原状回復ガイドラインの考え方は「通常使用の摩耗であればオーナーの費用負担、過失や故意による破損であれば入居者の負担」といったイメージで決められています。
退去の段階で設備に破損があった場合には修理の費用負担は誰がするかが決まります。原状回復ガイドラインを確認しておくのがベターでしょう。
設備点検業者をチェックする
設備点検は不動産管理会社の仕事に含まれますが、オーナーとしても、どこの業者に点検をさせるかを知っておくべきでしょう。
と言うのも、点検業者においても仕事の質にバラつきがあり、良くない会社もあるからです。
点検業者の仕事が悪いと、設備の寿命を短くしてしまうかも知れません。物件を良い状態で保つためにも、点検業者についてもチェックし、良い会社を起用することが大切です。
まとめ
設備の故障について取り上げました。「ちょっとした故障だから」と考えがちですが、その考え方が危険であることが分かったことと思います。
また、対応のタイミングなどもイメージ出来たことでしょう。
不動産投資は入居者の生活に質を向上させなければ高い家賃は望めません。設備の状態に気を付けて、入居者の住み心地を守りましょう。
不動産投資型クラウドファンディング
不動産投資に興味があるけども、ローンを組んでまで投資をするのには【リスク】を感じる。
そんな方は、不動産投資型クラウドファンディングを試してみてください。
どちらの事業者も不動産投資を少額から始めてみる、試してみるにはピッタリな事業者だと言えます。
【リスク】を少なく不動産投資を始めてみましょう。