不動産投資も事業が順調になり、しかも物件の規模が大きくなってステージが進んで来ると、不動産会社の営業マンから法人化を勧めて来るケースもあるかと思います。
しかし、サラリーマンの副業などから始めた投資家の場合には「法人化はリスクが高いのでは」などと思ってしまい、及び腰になってしまうことも多いでしょう。不動産投資にはリスクも伴いますので、そのリスクがより鮮明に目に映るのかも知れません。
そこで必要となるのが法人化の知識。ここでは不動産投資事業の法人化について取り上げます。
もくじ
不動産投資事業の法人化について再確認
まずは不動産投資の法人化について取り上げてみます。
法人化と聞いてもイメージが出来ない人も多いと思います。ここで再確認をしましょう。
不動産投資の法人化とは
不動産投資の法人化とは、投資家が資産管理の会社を作って、法人の立場で不動産投資を行うこと。ですから、サラリーマンの副業投資とも個人投資とも立場が違います。
設立した法人の事業の内容としては、物件の購入から保有・管理などの業務がメインです。
尚、税金なども法人では適用が変わって来ます。法人化するにしても、そのための勉強が必要になることでしょう。
個人投資との違い
さて、設立した法人は個人投資家とは性格が大きく異なります。
まず挙げられるのが、法人の場合だと投資家は企業の代表者であること。その一方で個人投資家の場合はあくまでも個人であって、企業の役員ではありません。
また、収入の位置づけも税金の適用も完全に異なります。更には社会保険の扱いも異なります。社会保険はサラリーマン投資家の場合には会社が負担するので無頓着になりがちですが、法人化すると、その法人が行わなければなりません。この様に、法人と個人では大きく異なるのです。
法人化のタイミング
この様に法人化をすると様々な点が変わるのですが、法人化はタイミングが大きなポイントとなります。
法人化のタイミングは個人よりも法人の方がメリットが上回った時がベストです。メリットの中でも大きいのが税金での違い。これは所得税と法人税の違いから導き出せます。
この税金の違い、所得が小さいならば個人で所得税として納付する方が抑えられるのですが、ある一定の値を上回ると法人税とする方がメリットが大きくなります。具体的には課税所得が900万円を超える時点でメリットが変わり、法人化する方が良くなります。
法人化に向く投資家とは?
事業には適正があり、向く人とそうでない人がいます。
ここでは法人化に向く人がどの様な人かを挙げてみます。
事業の拡大を狙う人
第1に挙げられるのが事業の拡大を狙う人です。
先にも挙げた通り、法人化するとメリットが出て来るのが課税所得が900万円を超えたレベル。この時点でのキャッシュフローは税金のシステムが変わるので逆転現象が起きます。そのため、事業を拡張して「更なる1歩」を狙うためには法人化をすべき。逆から言うならば事業の拡大を狙う人が法人化に向くのです。
尚、法人化をするならば、投資家は組織のトップとなります。仮に名刺を作るならば、その立場に圧倒される人も居るかも知れません。その場合には損得で動くべきなのか、責任の重みで決めるべきなのか、時間が掛かっても自問自答するべきでしょう。
次世代への相続を考えている人
不動産は次世代に資産を遺す上では相続税対策になるので有利です。しかし、遺し方としては、それがベストとは言えません。法人化した方が節税の点でメリットは更に大きくなるのです。ですから、次世代に資産を遺すことを検討している人は法人化に向くと言えます。
後述しますが、資産を受け継ぐ際には相続税が発生するのですが、これはあくまでも個人の話の範囲。法人であれば物件は個人の所有では無く法人の所有となります。そうすると物件を引き継いだとしても相続税は発生しません。税金対策としてメリットは大きいのです。
不動産投資で法人化するメリット
法人の概要は前述の通りなのですが、不動産投資を法人とするメリットはどの様な点にあるのでしょうか。
ここではメリットの代表的な物を挙げてみましょう。
税金対策に有利
まず挙げられるのが節税を狙える点です。
先にも述べた様に、900万円の課税所得を超えた辺りからが法人化のメリットが出て来るところ。これは税金による物です。
税金の税額は所得によって決まりますが、所得税は累進課税、法人税は固定税率。所得の増加での税額の増加が異なります。ちなみに、所得税の税率は45%をも超えるレベルにまで膨らみます。しかし、法人税は23%程度と低く、その差は歴然です。
経費として処理出来る物が増える
ビジネスには経費が必要です。運送業であれば車両や燃料の費用が経費として必要でしょうし、飲食業であれば店舗の家賃などが不可欠になるでしょう。
これは不動産投資としても同じこと。例えば物件の管理費や修繕費などが該当します。
ところで、不動産投資の経費は個人で行う場合と、法人が事業としてする場合では、認められる経費が異なります。例えば、小さい部分では自家用車で移動した際の費用。これなどは個人の場合にはプライベートでの移動も含むため、全部が経費になるとは言えません。しかし、法人化すれば車両は個人の所有では無くて法人の物となります。そのため、車両に発生する費用は法人の運営目的となるので経費として扱われるのです。
損失の繰越期間が長い
事業を続けるならば、どうしても損失は発生する物です。これは不動産投資でも同じです。
さて、不動産投資を個人でする場合と法人でする場合には、損失の繰越期間が異なります。個人では最長で3年、法人では9年です。
損失は黒字の額と相殺されるので、繰越期間が長いならば非課税に出来る期間も長く出来るので、経営上は有利になるのです。
資金調達に有利
物件の減価償却の点では個人と法人で扱いが異なります。個人は減価償却は強制的です。しかし、法人の場合は決められた期間にはなりますが、任意の額に調整することが出来ます。
さて、これは銀行の評価に繋がります。減価償却を調整出来れば決算書の上で利益が多くなるため、銀行の評価も高くなるのです。その結果として、資金調達にも好条件となり、その後の投資ビジネスでの好循環に繋がるのです。
次世代への相続に有利
先にも挙げた様に、法人化とするならば、投資用物件が個人の所有でなく法人の所有となります。そして、物件のオーナーは法人の代表者となり、所有する上での立場も異なります。
さて、個人の所有する不動産には次世代に遺すのに相続税が発生します。不動産で発生する相続税は現金や債券などと比べて低いのですが、それでも税金は高額です。
しかし、物件の所有を法人の物とするならば相続税は掛かりません。個人の所有であれば物件の登記も変えなければなりませんが、法人化するならば事業の一環となり、相続税も発生せずに相続に有利なのです。
不動産投資で法人化をするデメリット
では、法人化のデメリットにはどの様な物があるのでしょうか。
法人化に伴う代表的なデメリットを挙げてみます。
法人化のための労力や費用が必要
不動産投資の労力は物件の購入や管理などがメインと言えます。物件の情報収集や銀行対策、そして入居者の募集を始めとする管理業務などが良い例です。
これらの仕事は、ある程度までにはなりますが、外部の業者の起用によっての対応が可能です。そのため、必要となる部分に労力を集中させることが可能。個人で仕事を進めるならば時間的な余裕を作れるかも知れません。
しかし、法人を設立させるならば、法人化するための労力と費用が必要。そのため、本来ならば集中させるべき時間と費用が割かれることになり、デメリットになるのです。
長い期間物件を保有すると税金が高くなる
物件を個人で売却するならば、所有する期間によって得られる所得が異なります。所有期間が5年以内の物件の場合には所得が短期譲渡所得をして扱われ、所得税も住民税も高額に設定されます。しかし、5年を超える場合の所得は長期所得となり、税制の優遇措置を受けることが可能です。
具体的には、短期の場合は所得税で30%、住民税で9%の税率。その一方で長期所得になると所得税が15%、住民税が5%です。
その一方で法人の場合にはこの様な優遇措置はありません。また、法人においては法人事業税や法人住民税も発生するため、個人の場合よりも税負担が重くなります。
法人化を行う際の流れを知っておこう
さて、物事には順番があり、それに沿って進めなければなりません。不動産投資の法人化も同様です。法人化にも手順があるのです。
ここでは法人化の主な流れを挙げてみましょう。
法人化の準備
法人化のためには様々な準備が必要です。
例えば、会社組織にするならば社名や所在地などを明確にしなければなりませんし、取締役の選任なども必要です。また、印鑑なども必要です。印鑑には会社の実印の様な重要な物もあります。
他にも、資本金額や事業年度などの検討、設立費用の準備なども必要。場合によっては銀行との相談も必要となるでしょう。
定款作成など
法人には定款が必要です。定款とは会社の基本的なルールなのですが、必ず明確にしなければならない項目もありますので、作成は慎重に行わなくてはなりません。
尚、法人の定款を作成するとなると多くの労力が割かれます。そうなると不動産投資で必要な仕事が手薄になってしまいます。
しかし、定款作成は専門家へ依頼も可能。状況にもよりますが、外部に投げるのも十分にアリです。
登記
法人は登記をして認められることとなります。ですから、登記の手続きは不可欠です。
登記は法務局で行われますが、登記した内容は国が管理する登記簿に登録されることになります。
尚、登記の後には税金の手続きや年金事務所などへの届け出が引き続き必要です。
法人化をするなら社会保険について知っておく事
サラリーマンの立場だと社会保険の手続きは会社がしてくれるので、ついつい無頓着になってしまうかも知れません。
しかし、法人を起こすとなると社会保険の検討も必要です。ここでは社会保険について解説します。
社会保険とは
社会保険は法人になると加入しなければなりません。代表者の役員報酬にも保険は掛かって来るのです。保険は健康保険と厚生年金保険など。これらの保険は被保険者と法人が折半します。
ですから、保険を考えるならば、給与所得上は折半の従業員の部分に掛かって来ますが、法人としても支払わなければなりません。キャッシュフローを検討するのに、意外に重要になるでしょう。
加入義務について
法人である以上、社会保険には加入しなければなりません。
しかし、過去には法人の一員であっても法人の社会保険に加入せず、一般の国民年金と国民年金保険に入っていた状況がありました。これは違法なこと。しかし、行政は半ばこの事実に目をつむっていました。
ところが最近になって規制が厳しくなりました。行政省庁が加入逃れ防止に乗り出したのです。これによってダメージを受けた法人は未知数なのですが、やはり大きな影響を受けたことでしょう。また。今後の情勢を考えても、社会保険への加入が一層叫ばれることも考えられます。ルールはルールだと認識すべきでしょう。
まとめ
不動産投資の法人化について取り上げました。法人化をすると、ビジネスの進め方がガラリと変わって来ることがイメージ出来たことと思います。また、メリットも大きいのですが、その一方で意外なデメリットがあることも把握出来たことでしょう。
また、ある人たちにおいては、法人化に夢を描く人もいるかも知れません。と言うのも、法人化によって社会的なステータスを得られるからです。
しかし、法人化にはデメリットもあります。目先のメリットや不動産会社の提案よりも、自分で実際に計算し、利点を明確にした上での法人化とするべきです。法人とする時には細部まで検討してからにしましょう。
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