「相続税対策のための不動産投資ってどうなのだろうか?」「相続の節税といってもどれくらいできるのだろうか?」
このような疑問で、不動産投資をすべきかどうか悩んでいませんか?
この記事では、相続税の計算方法から解説し、不動産投資した場合の相続の節税効果について具体例を用いて試算します。また、不動産投資の注意点についても解説します。
もくじ
相続税の計算方法
一般的な相続税の計算方法や不動産における相続における評価額の計算方法について解説します。
相続税の計算
相続税の計算手順は以下になります。
- 1.遺産総額から、非課税財産とマイナスの財産を引き、正味の遺産総額を求める
(正味の遺産総額)=(遺産総額)―(非課税財産)―(マイナスの財産) - 2.正味の遺産総額から基礎控除額を引き、課税遺産総額を求める
(課税遺産総額)=(正味の遺産総額)―(基礎控除)
(基礎控除額)=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) - 3. 法定相続分に課税遺産総額を分ける
- 4.各人の法定相続分に応ずる相続税額を計算する
- 5.各人の相続税額を合計し、相続税総額を求める
- 6.実際に取得した資産の割合に応じて相続税を負担する
各人の相続税額を計算する際には、以下の表を利用します。法定相続分に応ずる取得金額が多ければ多いほど、相続税の負担割合は大きくなる累進課税制度となっています。
相続税の速算表
法定相続分の取得金額・税率・控除額
1,000万円以下/10%/-
3,000万円以下/15%/50万円
5,000万円以下/20%/200万円
1億円以下/30%/700万円
2億円以下/40%/1,700万円
3億円以下/45%/2,700万円
6億円以下/50%/4,200万円
6億円超/55%/7,200万円
一般的な、相続の節税対策としては主に、遺産総額を小さくする、もしくは、非課税財産を増やすといった対策になります。
相続における不動産の場合の節税効果
相続財産が不動産の場合、遺産総額を小さくする効果があります。不動産を相続財産の価値として計算する際、時価の70%~80%程度の評価額になることが一般的です。
不動産の相続財産を計算する際、土地の場合、「相続税路線価」もしくは「固定資産税評価額」が基準になります。「相続税路線価」は時価の約8割、「固定資産税評価額」は時価の約7割の目安で決められております。
また、建物の場合、「固定資産税評価額」が基準になります。したがって、相続財産が不動産の場合、時価の70%~80%程度まで遺産総額を小さくすることがでるのです。
なお、時価と相続財産としての評価額のギャップは、地域や条件によっても異なります。このギャップが小さいと相続の節税効果も小さくなってしまいます。
一般的に、以下の条件の不動産はこのギャップが小さくなりやすい傾向があります。
- 人口減少が進む地方
- 駅から遠いなど、利便の悪い立地
- 地形や接道条件が悪い
理由は、需要がなく、買い手が見つからなければ、相続の評価額以下の価格でしか売れないからです。したがって、必然的に需要が伸び続けると考えられる都心部の不動産の方が相続の節税効果が大きくなります。
相続における賃貸不動産の場合の節税効果
相続財産が賃貸不動産の場合、さらに遺産総額を小さくすることができます。
持っている不動産が賃貸の場合、その不動産を借りている人がいる限り、自由に使うことができない状態になります。このことにより不動産の評価額が低くなり、相続においては節税効果が大きくなります。
貸家建付地の場合の評価額の計算
賃貸用のマンションやアパートが建っている土地のことを「貸家建付地」といいます。貸家建付地の計算式は以下になります。
(貸家建付地)=(土地の相続税評価額)×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借地権割合とは、国税庁が発表する相続税路線価図で土地ごとに決められています。30%~90%まであり、路線価図においてアルファベットで表記されています。一般的な住宅地の借地権割合は60%~70%がほとんどです。
借家権割合とは、土地上に賃貸物件が建っていることで、不動産の自由度が低くなる分の価値の補正係数であり、全国で一律30%となっています。
賃貸割合とは、建物の部屋の何割を賃貸用にしているかという割合です。例えば、4部屋のアパートがあり、そのうち1部屋を自分で住み、3部屋を貸し出しているとすると、賃貸割合は75%です。
賃貸用建物の場合の評価額の計算
賃貸用建物の相続税評価額の計算式は以下になります。
(賃貸用建物)=(建物の相続税評価額)×(1-借家権割合×賃貸割合)
建物の場合であっても、借家権割合と賃貸割合は上記の貸家建付地と同じです。
現金を不動産に変えたら相続税の節税効果はどれほどか
上記までで相続税の計算のやり方について、解説しました。以下では、仮に5億円の資産があった場合に、現金、不動産、賃貸用不動産のそれぞれで相続税がどれほど変わるのかについて計算します。
なお、相続人は配偶者と子1人の合計2人とします。また、法定相続分通りに遺産を配分することとします。
細かい条件や計算はアバウトであり、厳密ではありませんので、大まかな金額の把握という目的でお読みください。
現金5億円にかかる相続税
仮に、遺産総額が現金5億円のみであったとします。
この場合の正味の遺産総額は5億円です。課税遺産総額と法定相続分の取得金額、法定相続分に応ずる相続税額をそれぞれ求めます。
(課税遺産総額)=(正味の遺産総額)―(基礎控除)
=5億円-(3,000万円+600万円×2人)
=4億5,800万円
「法定相続分の取得金額」
配偶者:4億5,800万円×1/2=2億2,900万円
子:4億5,800万円×1/2=2億2,900万円
「法定相続分に応ずる相続税額」
配偶者:2億2,900万円×45%-2,700万円=7,605万円
子:2億2,900万円×45%-2,700万円=7,605万円
配偶者は税額の軽減制度があり、1億6,000万円もしくは配偶者の法定相続分相当額の多い金額までは相続税がかかりません。この場合、法定相続分が取得金額になるので配偶者の相続税は0円になります。
したがって、全体で支払う相続税額は、子の分の相続税額の7,605万円です。
不動産5億円にかかる相続税
今度は仮に、遺産総額が不動産5億円のみであったとします。(現実的にはあり得ないシチュエーションです。)
不動産の時価が5億円であり、相続税評価額は70%になるとすると、3億5,000円になります。この場合の課税遺産総額と法定相続分の取得金額、法定相続分に応ずる相続税額をそれぞれ求めます。
(課税遺産総額)=(正味の遺産総額)―(基礎控除)
=3億5,000円-(3,000万円+600万円×2人)
=3億0,800万円
「法定相続分の取得金額」
配偶者:3億0,800万円×1/2=1億5,400万円
子:3億0,800万円×1/2=1億5,400万円
「法定相続分に応ずる相続税額」
配偶者:1億5,400万円×40%-1,700万円=4,460万円
子:1億5,400万円×40%-1,700万円=4,460万円
配偶者の相続税は0円になるので、支払う相続税額は、子の分の相続税額の4,460万円です。
賃貸用不動産5億円にかかる相続税
最後は仮に、遺産総額が不動産5億円のみであったとします。(これも現実的にはあり得ないシチュエーションです。)
賃貸用不動産の土地が2億5,000万円、建物が2億5,000万円で、合計時価5億円であるとします。相続税評価額は70%の評価額になるとすると、土地が1億7,500万円、建物が1億7,500万円で、合計3億5,000円になります。さらに、借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合100%として、貸家建付地と賃貸用建物の評価額を求めます。
(貸家建付地)=(土地の相続税評価額)×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
=1億7,500万円×(1-0.6×0.3×1.0)
=1億4,350万円
(賃貸用建物)=(建物の相続税評価額)×(1-借家権割合×賃貸割合)
=1億7,500万円×(1-0.3×1.0)
=1億2,250万円
賃貸用不動産の相続における評価額は合計で2億6,600万円です。この場合の課税遺産総額と法定相続分の取得金額、法定相続分に応ずる相続税額をそれぞれ求めます。
(課税遺産総額)=(正味の遺産総額)―(基礎控除)
=2億6,600万円-(3,000万円+600万円×2人)
=2億2,400万円
「法定相続分の取得金額」
配偶者:2億2,400万円×1/2=1億1,200万円
子:2億2,400万円×1/2=1億1,200万円
「法定相続分に応ずる相続税額」
配偶者:1億1,200万円×40%-1,700万円=2,780万円
子:1億1,200万円×40%-1,700万円=2,780万円
配偶者の相続税は0円になるので、支払う相続税額は、子の分の相続税額の2,780万円です。
不動産による相続税の節税効果の比較
上記では、5億円の資産があった場合に、現金、不動産、賃貸用不動産のそれぞれで相続税がどれほど変わるのかについて計算しました。結果を以下の表にまとめます。
不動産による相続の節税効果の比較
保有資産/相続における評価額/相続税額
現金:5億円/5億円/7,605万円
不動産:5億円/3億5,000円/4,460万円
賃貸用不動産:5億円/2億6,600万円/2,780万円
現金5億円と不動産5億円のときで比較すると、現金を不動産に変えることによって、相続における評価額は70%になり、相続税額は7,605万円から4,460万円で59%になっています。これは相続税の累進課税制度の影響もあり、評価額以上の割合で節税効果が見られます。
同様のことが現金5億円と賃貸用不動産5億円の比較でもいえます。相続における評価額は現金を賃貸用不動産にすることによって、53%になっています。
そして、相続税額は7,605万円から2,780万円で37%になっています。現金を賃貸用不動産に変えることで、ここまでの節税効果が見込める可能性があります。
不動産投資による相続の注意点
不動産投資により相続の節税対策ができることはわかりましたが、反対に、どんな懸念事項や注意点があるのか解説します。
遺産分割の際のトラブルの原因
相続遺産に不動産があると、相続時に不動産が原因でトラブルになることがあります。その理由は、不動産は現金のように均等に分割することができないためです。
また、不動産を誰が引き継ぎ、どうするかということでいつまでも遺産分割協議がまとまらないことにも繋がります。
不動産投資は、節税できるという面で、多くのお金を相続人に渡せることは嬉しいことですが、残された相続人にとって不動産の処遇に困ってしまうことがあります。資産価値が高く、需要のある賃貸不動産を、結果的に割安な価格で売却してしまうこともあります。
事前に、相続人と不動産相続について話し合っておくことが、トラブル防止のためにも重要になります。
購入不動産の将来性の懸念
長い間、不動産としての価値も保てて、家賃収入も入ることを想定して物件を購入しますが、想定外にも物件の需要や価値が落ち込んでしまう場合があります。
また、中古の物件では修繕費が想定以上にかかり、収益がほとんど得られないこともあります。物件を失敗してしまうと、相続後の収益が赤字になり、むしろ相続人に負担をかけることになることがあるので注意が必要です。
手続きが手間
不動産を相続する際には、法務局での手続きが必要であったり、不動産価格を調査するために不動産会社に依頼したりするなどの作業が発生します。
働いている人にとっては、手続きのための時間を捻出するのが大変です。事前に相続人と相談し、相続人にとって負担が少なくなるような準備ができることが理想です。
まとめ
相続税の計算方法から解説し、不動産投資した場合の相続の節税効果について具体例を用いて試算しました。結果を以下にまとめます。
- 現金を不動産にすることで、評価額が約7割、相続税額が約6割へ
- 現金を賃貸用不動産にすることで、評価額が5割へ、相続税額が4割へ
※一定条件下での概算値なので、場合によって大きく異なります。
また、不動産投資の注意点についても解説しました。
- 遺産分割の際のトラブルの原因
- 購入不動産の将来性の懸念
- 手続きが手間
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