不動産関連のニュースを見ていると、稀に手抜き工事が原因の事故が取り上げられるのを目にします。
特に最近ではアパートの界壁の問題などを思い出しますが、見てて実に嫌な感じがする物です。
ところで、その様な手抜き工事は不動産投資家として「他所事」と思って良いのでしょうか。
これは不動産投資家であるならば、決して対岸の火事とは思うべきではありません。自分の物件に降りかかるリスクとして認識すべきなのです。
しかし、単に手抜き工事を言ってもなかなか分かりにくいことでしょう。
そこで、ここでは手抜き工事の原因や影響、そして例を挙げてみたいと思います。
もくじ
手抜き工事はなぜ起こるか
手抜き工事と聞くと「信用を落とすだけなのに…」と思う方もいるかも知れません。しかし、発生する背景を知っていたならリスク回避に役立つと思われます。
ここでは手抜き工事がなぜ起こるかについて、改めて挙げてみましょう。
工事費用を削るため
建築の工事費用を簡単に説明するならば、材料費と手間賃が積み上がっていると言えます。例えば、外壁の塗装をする場合には、足場などの費用も発生しますが、塗料と職人の手間賃が工事費用のメインです。
さて、工事する立場…それも費用を削りたい会社にとってみれば、工事費用のどこかを削らなければなりません。
こで出て来るのが「材料を削る」か「工賃を削るか」。そして、その結果として手抜き工事が行われ得るのです。
例えば、外壁塗装であれば、3回塗るところを2回で済ませば塗料の費用も浮きますし、手間賃を削ることも可能。工事費用を抑えられるので、手抜き工事に走ってしまうのです。
工期を短縮させるため
手抜き工事は「工期を短縮させるため」に行われることもあります。これは工期が十分に無い場合に行われることが多いです。また、工事が混み過ぎている場合にも起こり得ます。
先に挙げた塗装の例では、建物の外壁を塗るためには結構な時間が必要です。
さて、それでは3回塗るところを2回で済ませば、どれだけの時間が節約出来るのでしょうか。単純に考えて4割くらいの時間を削ることが可能となるでしょう。
そして、時間の無い会社にとっては、この削減は非常に魅力的。その結果として、手抜き工事は起こり得るのです。
作業者の怠慢
工事の作業は簡単ではありませんし楽でもありません。高度な技術を要する物もありますし、手間の掛かる物もあります。そして、作業環境は良くない場合も多く、肉体的にも大きな負荷が掛かります。
その様な背景があるために作業者は手を抜くことがあります。つまりは怠慢から来るのです。
先に挙げた塗装工事の例であれば、屋根を含む家の外周を塗らなければなりません。その作業は足場を上ったり下ったりと移動だけでも大変です。しかも暑い季節の場合は非常に更に大変なことでしょう。
その様な時に手抜き工事が行われるとも考えられます。
また、作業者の人間性から来る場合もあります。怠惰な職人が当たってしまう場合もあり、工事に手を抜かれるのです。
作業者の腕が悪い
作業者の腕が悪い場合にも手抜き工事は起こり得ます。特に、経験の浅い作業者の場合はマズい工事にもなりやすいです。経験の浅い作業者は工事の重要性を軽く見て、「まあ、いいや」で済ませることがあるのです。
例えば、外壁工事の場合には壁材の止水のためにシーリングを打ちます。これは簡単に言えば隙間をシリコンなどで埋める作業なのですが、意外に経験が必要な工事。下手な人が工事に当たると止水が甘くなってしまいます。
また、出来上がりが良くない場合には、何等かの外力が加わった場合、切れてしまったりするのです。
作業者の熟練度は工事において重要です。しかも、工事の重要性を認識していない作業者の仕事はマズいです。「まあ、いいや」で済ませられ、手を抜かれるのは危険なのです。
手抜き工事の影響
手抜き工事が良くないのは確実なのですが、どの様な悪影響を及ぼすかイメージ出来ない人も多いことと思います。
そこで、ここでは手抜き工事の不動産投資への影響を取り上げてみましょう。
性能低下
手抜き工事は建物の性能低下を引き起こします。
建築物には様々な性能があります。代表的なのが耐震性です。
さて、古い投資用物件の場合には、今の耐震基準を満たしていない既存不適格物件が結構あります。そのために耐震リフォームが行われるのですが、この時に手抜き工事が行われ得るのです。
耐震リフォームは主要部分に補強材や板を追加で取り付けるのですが、この時のネジなどの本数を減らして付けられることもあり、その結果として本来あるべき耐震基準を満たすことが出来ない事態にもなります。
また、外壁のシーリング部分から水が入ることを考えれば、壁の中の部材を腐らせることもあるでしょう。そうすると部材の強度が落ち、建物としても強度も落ちてしまいます。
この様に、手抜き工事は建物の性能を落とします。実に危険なのです。
老朽化が進む
手抜き工事は物件の老朽化を早めることもあります。
良い例が外壁塗装の工事。外壁塗装の工事は建物内部への水の侵入を防ぐ意味も多いのですが、施工が悪い場合には壁から水が入り込んでしまいます。…そして、その水は建物の状態を悪化させることが少なく無いのです。
と言うのも、外壁から入った水は部材の腐食に繋がるからです。前述の様に、それは建物の強度を落としてしまいます。侵食はそのまま進行してしまい、老朽化が早く進んでしまうのです。
また、水はカビの原因になります。そしてカビが室内を汚してしまうと内装材にもダメージを与えてしまいます。しかもカビは広範囲に広がるので、様々な部分を老朽化させてしまうのです。
他にも日射の影響を受けやすくなったり、場合によってはシロアリの害を受けやすくなることも。手抜き工事は非常に危険なのです。
空室発生にも繋がる
手抜き工事は建物の物理的な不具合に留まりません。不動産投資の観点でも多くの爪痕を残すのです。
建物の老朽化が進んでしまうと物件の魅力も落ちてしまいます。そうすると空室が発生した場合、次の入居者が現れにくくもなります。つまり空室が発生しやすくなるのです。
不動産投資において空室の発生は赤字を引き起こし、ビジネスの破綻にも繋がり得ます。そして、空室は物件が良い状態ならば起こりにくいです。しかし、老朽化した様な物件では借り手が付かないこともあります。
手抜き工事は空室の発生率から考えても危険。避けなければならないのです。
売却額への悪影響
建物がボロボロになってしまうと売却額にも悪影響が出ます。ボロボロの物件は誰も買いたがらないし、高額な費用を出したがらないからです。
物件の価格は築年数が判断材料になりますが、物件の状態も参照されます。そして、築年数が経ってない場合にあったとしても、築年数よりも物件がボロボロだと、やはり高値は付きません。手抜き工事はこの様な状況を作り得るのです。
余計な出費が必要になる
手抜き工事によって建物の状態が悪くなると、その部分の修繕が別途に必要にもなります。その費用は本来であれば発生することはありません。つまり余計な出費をしてしまうのです。
これは工事の内容にもよりますが大きく膨らんでしまうこともあり得ます。例えばボロボロになった壁を修繕するならば、工事は高額になることでしょう。修繕する壁の広さにもよりますが、やはり費用は高額です。
手抜き工事の例
ここで手抜き工事の例を挙げてみましょう。
これらの工事は完成してしまうとプロでも見抜くことが難しい物もあります。
塗装工事
塗装工事の手抜きの例は3回塗るところを2回で済ませる工事が多いです。また、シーリング部分を交換すべきところを上から増し打ちにする工事などが挙げられます。
それは建物への水の侵入を許してしまいます。
これらの不具合は外観から見ても判別が付かないため、手抜きを見破ることがプロであっても簡単ではありません。
屋根防水工事
屋根防水工事も工事が悪い場合があります。そして、状況によっては雨漏りの原因にも繋がり、大きな悪影響をもたらします。
これも工事完了後は判別しにくいケースがあり、後で手抜き工事が分かることもあります。
壁・床のリフォーム
壁や床のリフォームにも手抜きはあります。
例えば、規定の部材よりも細い部材で間に合わせたり、規定よりも薄い板を取り付けたり。また、規定のクギを使わなかったり、本数を減らしていたりします。
その結果として建物が発揮すべき性能が無かったりするのです。
水まわりなどのリフォーム
トイレや浴室などの水まわり部分は、水の他にも洗剤などが流れるため、特に傷みやすい部分とも言えます。配管部分のパッキンなどは劣化が進みやすく、水漏れの危険性も出て来るのです。
さて、この様な工事も質が悪いと配管の漏水に繋がります。そして、漏れた水は部材を濡らしてしまい、濡れた状態で放置されてしまいます。すると部材が腐食し、建物に悪影響を及ぼすのです。
手抜き工事を防ぐ手段
この様に、手抜き工事は非常に危険で、しかも状況によってはバレにくい物もあります。
しかし、投資用物件をダメにするのは避けなければなりません。手抜き工事を放置するならば、せっかくの投資用物件が使えなくなることもあるからです。
では、手抜き工事を防ぐためには具体的にどの様な手段があるのでしょうか。
業者選定に注意
工事業者の選定は手抜き工事を避ける上で非常に重要です。しかも、工事業者には手抜き工事を常習的に行っている悪徳業者も存在します。そのために業者選定に注意をしなければなりません。
対策としては、実績のある業者なのかのチェック、そして見積書の確認などがあります。
例えば、実績を見るならば、今では口コミ情報を見ることが可能。それによって工事の熟練度まで分かります。
また、見積もりを見るならば、部材や工事費が適正であるかの確認も可能。それによって業者の質なども計ることが可能なのです。
値切り過ぎない
オーナーの立場としては工事費用の削減は大切。ですから価格交渉はするべきです。
しかし、値切り過ぎるのも良くありません。それによって手抜き工事が発生し得るからです。
先にも挙げた様に、工事は材料代と手間賃が多くを占めますが、値段を下げるためには材料代か手間賃を削らなければなりません。その結果、材料を必要以上にケチることにもなり、作業も雑になります。
ですから、工事には適正価格が存在し、底値を追いかけるのは必ずしも得策では無いことを覚えましょう。
急がせ過ぎない
工事は早く終わるには越したことがありません。しかし、早い方が良いからと言って、急がせ過ぎるのも問題があります。工事の内容によっては養生期間を設けなければならないケースあるからです。
仮に、その様な養生期間を無視してしまえば、工事の質が悪くなってしまいます。
ですから、工事は急がせ過ぎず、ある程度の時間を確保して作業をしてもらうのがベターでしょう。
現場に行くのも効果的
オーナーとして現場に行くのも効果的です。作業の監視の意味があるからです。
しかし、現場に行くだけで十分かと言うと、そうでも無い場合もあります。飲み物などの「ちょっとした差し入れ」が効果的な場合もあるのです。作業者も人間です。良い待遇を受ければモチベーションも上がります。
ちなみに業者によっては差し入れを受け取らないと決めているところもありますが、その場合には労をねぎらう言葉を掛けると良いと思います。
まとめ
手抜き工事について取り上げました。物件の工事は不動産投資をするならば避けて通れないイベント。それだけに手抜きは避けなければなりません。しかも、手抜きの内容によっては分かりにくい内容の工事もあります。
そして、それだけに工事には注意をしなければなりません。しっかりと工事について勉強をして、確実で高品質な工事をさせましょう。
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